All Chapters of 必ず死ぬ君を救うには: Chapter 11 - Chapter 20

24 Chapters

和む

いつも、何度も声を出そうとした。しかしいつも失敗に終わっていた。ほら、今だって。「――――」気の所為、か。「今、声を……!」ガシッと王太子に肩を掴まれる。――こわい!いたい!「あ、すまない」僕は震えていたようだ。手に力が入らない。物凄く怖かったので、出来るだけ距離を取り、布団で出来るだけ身体を隠す。「警戒されたな」「いきなり触るからでは?」「ハァ?俺はずっとこいつは声が出ない、と言われていたからな」「……………?――!!」ついうっかり、声のした方を向いてしまった。そこにいたのは残虐な大柄の―――……。「!?お、おい!大丈夫か!?」「ええ!?」世界が暗転した。◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆Side Matthias「ええーー」アルフレッドがあっけに取られてベッドの上の住人を見る。そこには黒と金と赤の髪の少年がいた。ついさっきまでは意識があったが、事故でアルフレッドを視界に入れてしまったのだろう。倒れた。俺は、彼の顔にかかる長い前髪を除けて、その顔を覗き込んだ。――こうしてみると、推しの寝顔を幼くした感じだな。めっちゃ可愛い。「暗殺者の様子を見に来たつもりだったけれど、まだ目覚めていないようだね」そこにいたのは叔父上だった。どうやらアインの様子を見に来たらしい。「いや目覚めてたぞアルフレッドが原因で気絶した」「裏切者!?」「へえ?そうなんだい?」――すまないな、アルフレッドよ。俺は貴様を売る!「そもそも殿下はいきなり子供に触って怯えさせてたじゃないですか!!」「…………気絶はさせてないぞ」「どっちもどっちだよ。で、どうするの……。傷付けられた、と子供に思わせちゃダメでしょ」「「おっしゃる通りです」」「とにかく、アルフはこちらへ。マティは子供の名前を考えておいて」「え?俺が?」ゲームのアインの名前はマティアスがつけたのか?いや、そもそも名前なかったんだな?!「そういえばずっと暗殺者、とか子供、とか吸血鬼、とか呼んでいたが、名前を知らないな」「向こうの要望なんだよ。なんでも、これから共に過ごすであろう王太子殿下に名付けをして欲しいんだとか」「媚び売っているのか?」「さあ?僕からは何とも」――普通に“絶対零度の司令官”の考えてることが分かんないな。「――アイン」「はい?」「こいつの
last updateLast Updated : 2026-09-16
Read more

信用できるかできないか。仲良くできるかできないか。

僕はあの後、反逆の意図なし、と判断されたため、足枷を外された。しかし、トラウマを刺激すれば、暴れる可能性が高いため、僕は僕が寝ていた部屋に軟禁されていた。――僕は何で、王太子を信用しようと思ったのだろう。別に軟禁されている現状が嫌だった訳ではない。むしろ、何もしなくていいのはいい。ただの純粋な疑問だ。あの事件の後、僕は九星以外を信用できなかった。したくもなかった。幾ら半身とはいえ、簡単に信用するのはいかがなものだと思う。――九星以外は、信用できない。僕を使い潰すに決まっている。僕に体罰を、飲みたくもない血を無理やり飲まされる。九星に僕の状態を知られたら拙い、それを分かっているからこそ、僕は常に肌が露出しない服を着ることを強要されたし、傷を見せて治して貰う、ということもしなかった。僕は、回復魔法を使えない。結果、僕の体は傷だらけとなった。おまけに、度重なる戦争で、オケディアの財政は逼迫していた。少しでも経費を削減するため、僕の食事は捕虜の血となった。しかし、どの血も美味しいとは限らない。まず、自分と同じ属性がないと、話にならない位不味い。僕の場合は、光と闇だ。別属性があると、時には体が受け付けなくなる。次に、自分に合う魔力量を持っていなければ、幾ら同じ属性を持っていたとしても、全て台無しだ。少すぎれば物足りなく、多すぎれば胃がもたれる。僕はどの捕虜の血もあまり美味しく感じられなかった。光だけ、闇だけ、という人間もチラホラいた。光と他の属性、闇と他の属性という人間もいた。しかし、光と闇はいなかった。理由は簡単だ。この世界には魔法があり、個々人が使える魔法は違う。まず、魔法には属性というものがあり、その属性の魔力を持つ者のみが、その属性の魔法を使える。例えば火属性しか持っていない者は、火属性の魔法しか使えない。その中でも、得意不得意、使える使えないが存在する。属性は全てで8つ。火、水、土、風、光、闇、聖、魔。火が一番多く、魔が一番希少だ。だが、火、水、土、風はそれぞれの数はあまり変わらない。一方で光以降はグッと数が少なくなるし、聖、魔は国に一人いるかどうか。単体でさえそれなのに、二属性だともっと厳しくなる。そもそも人間の中で、魔法適性がある人間は半分もいない。二属性はその中の十分の一以下だ。詰
last updateLast Updated : 2026-09-16
Read more

乙女ゲームの世界でBLはできますか?!

Side Matthias「マティ、ジーク、今日はお庭を散歩しましょう」「分かりました、母上」「お母様、僕は薔薇を見てみたいです」俺は、母上と一つ下の弟ジークハルト――ジークと共に場内を散歩していた。ジークの提案で、美しい薔薇が咲き誇る庭園に来ていた。「明日が楽しみねぇ、マティ。明日はジェシカ嬢をここに連れて来るのよ。きっと喜ぶわ」「分かりました、母上!」ジェシカ嬢?――ジェシカ嬢はグラッチェス公爵の一人娘で、攻略対象者のマティアスの婚約者だ。いや、なんでそんなことを知っている?――決まっているじゃないか。ここは――――。そんなことを考えていたのがいけなかったのだろうか、足元がぐらぐらしてきた。「きゃあ!?マティ!どうしたのかしら、マティ!?」「お兄様!」気づいたら、取り乱す母上とジークの顔を見上げていた。そしてそのまま――闇に包まれた。◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆Side Masato「あともう少しでスチルフルコンプだ!」俺――瀬尾雅人は、今日も今日とて乙女ゲーム『白桃の君に愛を捧ぐ』――通称『白愛』をやっている。物凄く胸糞悪いルートばかりを残してしまったため、最後はブチ切れてしまったが、それもあと一枚で終わる。しかし、そのスチルは、入手がかなり難しいものだ。初見はクリアできないだろう。このゲームは、ヒロインが攻略対象と恋に落ち、イチャイチャしながら強くなって、世界を滅ぼす魔王を倒す物語だ。その魔王が、それはそれは強くて、たとえ勝てたとしても、ターン制の恩恵に肖っているとしか思えない位だ。最後の一枚は、なぜかその魔王のことを詳しく知っているアインが死に、魔王の情報が一切ないまま、独力で魔王を討ち果たした後に手に入るスチルだ。アインの情報がなければ、手に入れることができない強力武器もあるため、一度攻略済みでも難しい。アインは放っておけば死ぬ。放っておかなくても死ぬ。アインがゲームのエンディングにいたことは一度もない。――それは今回もだ。今回は既にアインが乱暴されて自殺してしまった。それを描いたスチルを見る度思い出す度に、コントローラーを床に投げつけたくなる。でも、これを集めない限りアインを幸せにできない。それが俺をやるせなくさせた。キャラクターが動き、技を
last updateLast Updated : 2026-09-16
Read more

アインを攻略する方法

Side Matthias「マティ!大丈夫なの!?突然倒れて、何か悪い所はないかしら?」「大丈夫です、母上。ところで、俺はどれくらい寝ていました?」「3,4時間位よ。ねえ、マティアス。本当に大丈夫なの?明日の顔合わせで倒れられたら困るわ」「大丈夫です。体もいつもより快調です。お気になさらずに」この押し問答は絶対数時間は続く。はっきり言って面倒臭い。母上が心配なさっているのは嬉しいが、でも本当に大丈夫なんだ。……というか、明日なんだな、ジェシカ・フォン・グラッチェスと会うのは。彼女は所謂悪役令嬢だ。そんな彼女は、常に未来の王妃として努力を惜しまなかった。そして何より、彼女はマティアスを深く愛していたのだ。だが、婚約者であるマティアスは、ヒロインと恋に落ちた。幼き頃からずっと一緒で初恋の相手でもある婚約者を、たかが会って数ヶ月の少女に奪われたのだ。しかし未来の王妃として、婚約者を取られたからと、物理的に嫌がらせをすることはできない。よって、会うたびに嫌味を言っていた。ただそれだけだが、プレイヤーの心を確実に抉る嫌味ばかりだった。彼女は努力する天才だ。その類稀な彼女の頭脳が、嫌味へと向いたら当然、どれも効果絶大な言葉のナイフとなるのだ。正直俺は、彼女を愛することはできない。俺は同性愛者だし、好きな人はいるし。どうやって彼女との婚約を回避しようか。いや、そもそも王太子である俺が、男と恋愛するのは許されない。――気が重いな。俺は人知れず溜息を吐いた。ちなみに、アインが嫌いそうなこの性格については、今は目を瞑らせて欲しい。◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆――翌日「今日はお日柄もよく――」「誠に嬉しゅう申し――」定型文から始まるお見合い。はっきり言って、乗り気じゃない。記憶を取り戻す前はこんなんじゃなかったんだけどな……。「じゃあ、あとは本人たちだけで」その言葉と共に、俺とジェシカ嬢は二人きりにされた。俺は、母上の言葉通りに、幾つかある庭の一つである薔薇園へ彼女をエスコートする。彼女は乙女ゲームの主役格であるために、やはり美しい。ベージュの髪に、紫の瞳。今はあどけなさもあり、可愛らしいが勝っているが、十年経つ頃には、美しい令嬢に育っている事だろう。はあ、そんな彼女を愛せないのが心苦しい。「マティアス様。私からお話がございます
last updateLast Updated : 2026-09-16
Read more

僕のギルティ

どうやら06――ノア兄さんがこの国に来るらしい。05――ラース兄さんと09――リズ姉さんを伴って。――会えるだろうか。僕は、二年振りに会う仲間に、胸を躍らせていた。◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆――数日後その日がやってきた。ノア兄さんはステラ王国の国王として。ラース兄さん、リズ姉さんは護衛としてやってきていた。僕は、諸々の細かいやり取りの後らしい。僕は、侍女に連れられてノア兄さん一行がいる応接間へと足を運んだ。「久しぶりだな!01いや、アイン」【久しぶり、ラース兄さん】「久しぶり、アイン君」「大丈夫だったかい、アイン」ラース兄さんは背が伸びた。ノア兄さんは、左の薬指に指輪がある。リズ姉さんはあまり変わっていない。でも中身は、誰も変わっていないようだ。【結婚おめでとう、ノア兄さん。誰と結婚したの?】「聞けよ、アイン~ノア兄さ、ララ姉と結婚したンだぞ?いつから付き合っていたンだろうな?」「ああ、アイン君がチーズルに強制送還された後。まあ、そんなことより、オケディアとチーズルが地図から消えてびっくりしたよね。でももう大丈夫。アイン君を脅かす存在はもうない。アイン君を虐めていた奴は一掃した。もう、オケディア――いや、ステラだ。九星の国、ステラ王国に戻ってきてもいいんだよ」優しくノア兄さんに聞かれた。ノア兄さんは、僕の意見を尊重してくれている。でも――。――突然、そんなこと言われても、困るよ。僕はこの地で半身に出会った。もう片時も離したくない、我が半身。彼無しで、この先どう生きたらいいか、分からない。でもまだ、僕は心を彼に許していなくて。理性は、取り返しのつかない内に離れた方がいい、と言う。本能は、彼から離れたくない、と叫んでいる。一体、どうしてしまったのだろうか。僕が予想に反して黙り込んでしまったためか、ノア兄さんとリズ姉さんは戸惑っている。ラース兄さんは、思案している様子だ。【ねえ、ラース兄さん。今日は、ミリア姉さんは一緒じゃないんだね】「ああ、そうだが……。今それ関係あるか?」ある。物凄くある。【答えて。ラース兄さんは、他国にいるために、中々会えないうちに、ミリア姉さんが他の男と恋に落ちたら、許せると思う?】「そンなの許せる訳ねェだろう。って、なンてこと言わせンだ!」一瞬で否定した後、恥ずかしいことを言ったとい
last updateLast Updated : 2026-09-16
Read more

僕は、結局

――また、裏切られるかもしれない。もう、嫌われているかもしれない。――それでも構わないから、近くにいたい。――近くにいた所で、報われない運命なら、意味がないだろう?――そもそも、会って間もない。恋にすら落ちてない。なのに、どうしてこんなに離れがたい?――きっと、気の所為だ。極上の血で、おかしくなっているだけ。――それでも、構わない。相反する主張が頭を駆け巡り、混乱する。でも、これから僕は、この国で働く事になり、王太子と会う機会が増えていくだろう。いつしか、半身を求める吸血鬼の本能が大きくなり、恋に落ちるかもしない。若しくは、彼が婚約者と結ばれるのを、笑顔で見届けるかもしれない。僕は、彼の血の味に囚われてしまった。それは変えようのない事実で、九星の皆の元に帰りたいという願望を、ここにいたいという願望が上回った理由だ。――結局、僕は吸血鬼なのだ。◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ラース兄さん、ノア兄さん、リズ姉さんがステラ王国に帰って数日。僕の扱いは、今のところ丁重に扱わねばならない捕虜だった。何も変わってない。ここに残ったところで、この国の国王を暗殺しようとした者だ。別に、この国で満足に働けると思っている程、僕は馬鹿じゃない。拷問されていないだけマシというものだろう。「やあ、吸血鬼。お前、どうやって王太子殿下に取り入った?」「……」「何とか喋れよ、な!!」「――っ」殴られるだけでもマシだ。それだけで済むように、髪を伸ばした。周囲の目が怖いから。長すぎて、顔の半分を覆い隠す前髪は、僕が周りを見ないように、障壁になってくれる。それに何より、誰も、僕の顔を見ることができない。だから、これでいい筈だ。たとえ、声が出ないことでより暴力を振るわれても。最悪さえ来なければ、それでいい。「おい。何やっているんだ?」殴られ過ぎて幻覚が?らしくない。「そいつは同盟国になるであろう国の捕虜だぞ?貴様等はこの国を亡ぼす気か?」「いえ!そんなことは!」少し怒っているように見える王太子に、若い兵士がくすみ上がる。「そもそもこの事態が“絶対零度の司令官”にばれていないと、本気で思っているのか?」「王太子殿下。いくら九星と噂されているとはいえ、何百㎞も離れた地。感知など、出来はしないでしょう。ああ、そうそう。王太子殿下もど
last updateLast Updated : 2026-09-16
Read more

油断大敵

あの一件以降、僕が殴られる事は無くなった。驚くべき変化だ。僕は殴られたかった訳ではないので、王太子――マティアス様に感謝していた。加えて、僕はまだ、量を食べることはできない。野菜だけでも満腹になってしまう。よく分からない物も、あまり食べたくない。野菜にドロッとした液体が掛かっていたが、避けた。他の料理も、馴染みがなく、手を出しづらい。よって必然的に栄養が足りなくなってしまうので、マティアス様の血を飲んで凌いでいる。感謝してもしきれない。ここまで甘えているのは、心苦しいが、不思議と忌避感はない。僕のお気に入りは、首筋から吸う血なのだが、正面からだと、抱きつくような姿勢になってしまう。今までは、それが嫌で背後から飲むか、違う所から飲んでいたが、マティアス様には、寧ろ率先してやりたいのは、僕が彼を警戒しているからだろうか?漸く僕の中の危機感が仕事してくれたのだろうか?それに、最近はマティアス様を見ると、あの一件の事を思い出して、動悸がする。血を吸おうとすると、赤面する。一体、僕はどうしたのだろうか。医者に掛かった方がいいのでは、と最近は思う。「お前はあまり食べないな」僕は、責められているように感じ、俯く。やはり、甘えすぎたのだろうか。「幾ら血を飲んでいても、これでは痩せたままだろう?さあ、食え」マティアス様は、僕に汁物を掬ったスプーンを差し出す。僕は、それを食べてみることにした。「!!」「フッ、ほら、食え。命令だ」「~~♡」美味しい。真面な料理は久し振りだったので、より美味しく感じるのだろうか。なんだか、マティアス様がじっと見ているが、何かおかしかったのだろうか?それから僕は、マティアス様の手ずから食べさせて貰うのが習慣になっていた。他人に真面に甘えるのは、何時振りだったか。九星の皆には、ずっと甘える訳にもいかなかった。いつも忙しそうで、人に構う時間など、最近では全くと言っていい程なかったし、なさそうだった。最近では話は、偶然廊下で出会った時位しかしなかった。だから、甘えたくても甘えれない。戦友に、僕の我儘で、迷惑を掛けてはいけない。本能的な恐怖の中、僕は無意識に癒しを求めていたのかもしれない。でも、理性がそれを止め、自覚を追いやった。だからだろうか。自分を甘やかしてくれる存在に、僕は受け入れていた。警戒を解いてしまっていた。それがなけ
last updateLast Updated : 2026-09-16
Read more

○○は障害を乗り越える

――誰か来た!蝙蝠からの情報に僕はとっさに目を閉じ、クッタリとする。しばらくして、床の軋む音が大きくなり、そして、酷く音を立てながら、扉が開いた。――声からして男の三人組、大柄、壮年。金属を身に着けている?部屋にひっそりと隠れる蝙蝠から情報を得る。そこに映っていたのは、力なくベッドに横たわる僕と、大柄な騎士の三人だった。そのうちの一人が足を大きく振りかぶって……!?「いい加減起きろ!」「――!!?」鳩尾を蹴られた。無防備な急所への攻撃に、僕は一瞬息を止めた――演技をする。結界を張るまでもない、弱い攻撃。だが、こういう人物は、痛がらないと面倒になる。僕は特に痛がる演技が上手かった。大袈裟な程咳き込みながら、僕は彼らを頑なに視界に入れない。絶対気絶する。そうと分かっているのにするのは、馬鹿か必要に駆られてだ。不必要に気絶したくない。「お前、ずっと気に入らなかったんだよ」「俺たちの出世邪魔しやがって」「捕虜の分際で、王族と仲良くすんじゃねーよ、身を弁えろ」「……」「あ゛あ゛?」「……」「ふん、こいつ、何も言えやしない」僕が何も言えないのを知ると、彼らは好き勝手言い始めた。「王太子も物好きだよなァ!こんな陰気臭い奴を気に掛けてさ」「いや、あの俺様王子、案外変わり者じゃあないか?」「はは、言いえて妙だな!あの俺様王子も実は臆病で、こいつみたいに殴ればすぐに言うこと聞くんじゃないか?類は友を呼ぶって言うしな!」「おお、いいかもな!あの俺様の心を折るの、楽しみだ!」男たちの汚い笑いがおんぼろ小屋に響き渡る。耳を塞ぎたい。聞くに堪えない。黙らせたい。――これ以上その汚い口で、声で、我が半身を罵るな。◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆――色々と我慢してきたけれど、もう我慢できない。「な、なんだ!?」「今何が起こって――」おんぼろ小屋が吹き飛ぶ。中にいた男共は強風の中転げ回る。――僕の半身を悪く言うのは許せない……!「幾ら、頑丈ではないとはいえ、何重も巻いた縄を引き千切るなんて!!」手が自由になった。男共が怯える。――九星を知らずにこんなことしたの?でも、手加減はしない。「お、お前が九星なのは、本当か?」おずおずと、聞くのに苛立つ。――それ今重要?僕が九星の一員でも、そうじゃなくても、君達の未来は決まってる。
last updateLast Updated : 2026-09-16
Read more

九星の脅威

Side Matthias「さて、緊急会議だ」 俺はジェシカを呼びつけ、今起こった緊急事態を説明する。ゲームの知識が必要かもしれないと思ったからだ。 「それって放置でいいんじゃない?アイン、強いよ」 「俺が嫌だ。それに、“丁重に扱う筈の捕虜”が行方不明。下手したら、国が消えるぞ?」 「え、そこまで!?」 九星は都市伝説じゃない。中には称号的な物と捉えている者もいるが、違う。一人一人が化物な、九人の軍人だ。“終焉の狂戦士”、“絶対零度の司令官”、“世界最高の鍛冶師”に会って分かった。全員化物じみた強さだ。“鮮血の死神”と呼ばれるアインがかなり手加減してくれていたのが分かる程には。 「九星って、そんなに強いの?私、ゲームに出てないことは分からないのよね……」 「九星は、一人で国を簡単に沈めることができる、九人の化物集団だ。それぞれに二つ名がある。 ただ、存在が機密扱いなのか、その情報は殆どが出回らない。分かるのは、一人一人の年齢、性別それと二つ名だ。名前は、アインのように最初からない者もいるだろうな」 「アインって、そんな立ち位置だったんだ……」 「フッ」 俺よりアインを知っているジェシカを驚かすことができ、正直気分がいい。 「九星はやると言ったらやる。それ程の力を持つ上に、元オケディア王国だ。こんな国、幾らでも如何こうする事ができる」 「オケディアは何か特別な意味が?」 「超古代国家なんだ。そんじょそこらの国とは一線を画す。――まあ、今はアインだ。一体どこにい……」 ふと、魔力を感じ、俺は言葉を止める。 「どうしたの?」 「覚えがある魔力が流れた」 「私には感じなかったけれど……」 当惑しながらジェシカはこちらを見る。微かではあったが、確かに流れた。 「で、これからどうすンだ、王太子サマ?」 「「は?」」 ここにいる筈のない声が上から降ってくる。スタ、と軽い音とともに現れたのは、オレンジの髪を持つ青年だった。頭には、鬼の証である黒い角が生えていた。 ――影は何しているんだ!! 心の中で、目の前の人物――“終焉の狂戦士”ラースを止められなかった隠密部隊に悪態をつく。 「アイツらか?もうちょっと訓練した方がいいンじゃねぇか?アインのヤツだと、アイツら制圧すンのに十秒あれば十分だぞ?」 「じゅ、十秒
last updateLast Updated : 2026-09-16
Read more

憐れな赤ずきんを救うのは

となれば話は少しややこしくなってくる。西側には、セオドアの敵国であった、オケディアが位置していたのだ。当然、そこからの間諜の侵入を避けるため、そこの関所はとても厳重になっている。 流石の僕でも、異能力や、吸血鬼の能力なしでは入れない。 だが不法入国すると、当然ではあるが目をつけられてしまうのだ。西側の関所も警備が厳しいが、そこに近い村も警備が厳しい。 それに、戦地になりそうな立地というのも関係して、そこに住む住人の顔を全員覚えることができるくらい、田舎なので一人増えただけでも簡単に判ってしまう。 まさに八方塞がりになってしまうし、では人のいないところを通っていけばいいのかと言うと、そうでもない。 ここは、村落から一歩外に出ると、凶暴な魔物が多く生息する危険地帯だ。野宿で移動なんて、とてもできやしない。……九星は別だが。 なので、僕は警備が一番手薄な南東の関所から入った。当然(?)関所を正規の方法で入ってない。普通に密入国だ。そんな僕がここにいると、ここの現地の人間にばれるのは不味い。 と言うことで、かれこれ2日は野宿している。未だにセオドア西部を抜けられないのは、運悪くこの辺りの警備が急に厳しくなったからだ。 蝙蝠を飛ばそうにも、そもそも野生の蝙蝠自体、この辺りに生息していないので、かなり目立ちすぎてしまう。 異能力は、出来れば最後の手段にしたい。あれは、燃費が悪すぎる。 「というか、よくここまで移動できたよな。僕でも一日で抜ける自信ないけど」そもそも、もう既に2日野宿している人物が言うべき言葉ではないかもしれない。 あの男たちがどういう訳で僕を、この遠く離れた遠方の地に連れ出せたのかは不明だ。 使い捨ての魔道具があったからかもしれない。 だが、その魔道具も、今回のケースのような悪用をされないために、細心の注意を払って商人たちは売っている。信用のない人物には決して売らないのだ。だから、余計に謎が残る。 僕は謎を抱きながら、森を探索していた。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ Side Unidentified「探せ!!まだこの辺りにいる筈だ!!」 不意に聞こえてきた声に、僕は警戒する。そこにいるのは分かっていた。ただ迷い込んだ、と思いたかった。しかし、誰かを躍起になって探している以上、そんな可能性は潰える
last updateLast Updated : 2026-09-16
Read more
PREV
123
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status