All Chapters of 必ず死ぬ君を救うには: Chapter 1 - Chapter 10

10 Chapters

プロローグ

Side soldier俺はオケディア王国の一兵卒だ。つい最近、軍に志願した。この国は昔、弱小国家で、戦争とは無縁の国だった。だからといって、平和ではない。ただ単に力を持たない弱者だっただけだ。それも今は昔。今は周囲の国家を腕っ節で従えられるほど強くなった。俺はそんな軍に憧れを抱き、最近ようやく夢が叶った、という訳だ。とある日の訓練の帰り道。豪華な城の中庭が見える回廊を、先輩と一緒に談笑しながら歩いていた。もうすっかり夜も更け、涼しい風が、頬をくすぐる。戦争が近いからと、いつもより熱が入った教官の愚痴を言いつつ、寮部屋に帰っていた時の出来事だった。「っと、危ないだろ、どこ見て歩いてんだ!」「……」俺は、ぶつかってきた腰の高さくらいしかない黒髪――所々に金と紅の髪が見えるが――の少年に文句を言った。その少年は俺を見上げ、じっと見つめる。長い前髪の所為で瞳は全く見えない。その上始終無言なので、薄気味悪かった。「な、なんだよ」「おい!お前!そこをどいて差し上げろ!その方は英雄様だぞ!」俺はその少年に気圧され、どもってしまう。しかし、それを悟られまいとしていると、先輩が、焦ったように俺の肩を引いた。俺は、肩に食い込む先輩の手に引っ張られ、通路の端に寄ってしまう。そして、先輩は俺の頭を掴み、一緒に頭を下げた。「失礼いたしました!ほら、お前も!」「し、失礼いたしました……」俺は、先輩に怒られ、渋々謝罪する。少年はそんな俺たちを一瞥すると、そのまま歩き去っていった。「あの、あの子供は一体……?軍服も見たことないものでしたが」ひどく鮮やかな深紅が、夜の涼やかな風ではためいたのが、俺の目を引き、少年の持つ雰囲気も相まってひどく不気味に思えた。俺がやや呆然としていると、先輩はあの少年について、説明してくれた。「あの方は、英雄様だ。一度戦場に出れば、その戦いは必ず勝ちになる。9人の天才のみで構成された部隊、九星を知っているか?」「いえ……」初めて聞く名だ。あすとろろじー?というか、たった一人で戦争を勝ちに導く存在など、いる訳がない。この国は、異能力者という、他国にはいない存在がいるが、それでもそこまでの能力はないのだ。「ああ、最近入ったのか。説明するとな、九星は一人一人がその辺の将軍より功績を挙げている、化物
last updateLast Updated : 2026-07-19
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物語は、今動き出す

「さて、お前はこれからチーズルに向かえ。いいな?」 僕は頷く。 「ああ、それと、このことは誰にも言うな。言えば……分かるな?」 僕は頷く。 「ではさっさと行け。ああ、国境の連中には話は通してある。九星の“鮮血の死神”が国境越えする、となあ?」 目の前の男が高笑いする。怖い。言うこと聞かなきゃ、鞭で叩かれる。 僕は男の前を去り、自分の割り当てられた部屋へ行く。殺風景な部屋だ。でも、誰かが隠れることができない空間だから、安心する。 僕は荷物を纏めた。最低限。大荷物にならないように。誰にもばれないように。ばれたら鞭で叩かれる。だって、僕はそもそも話すことができない。なのにああ言うっていうことは、僕への嫌がらせ。それと誰かにばれたら容赦なく鞭で説教するぞ、という意思表示。怖い。痛いのは嫌だ。それ以上に、あの男と鞭が怖い。 行かなきゃいけない。九星の皆と離れるのは嫌だけど、それ以上に怖い。痛い。 部屋から出ると、僕より少し背が高い、オレンジの短髪を持つ青年がいた。 「お、01!3日振りだな。元気だったか?」 僕は頷く。彼は05。14歳。僕とは5歳差。二つ名は、“終焉の狂戦士”。適性属性は火、土、闇、魔。僕と一番年が近くて、優しい兄のような存在だ。多分、今日前線から帰ってきたところだろう。 「やっぱ強いな、セオドア王国は。負けやしないンだが、兵士の損害が桁違いだ。全く、そもそも俺たちがいないと、真面に戦えない相手に、どうして喧嘩吹っ掛けるンだか」 溜息を吐きながら、05はぼやく。「そりゃ、私たちがいるからこそ、あいつ等強く出てるだけなのよ。馬鹿の一つ覚えの様に周囲に喧嘩吹っ掛けまくってたら、いつか痛い目に合うのも知らずにね」 溜息を吐きつつ後ろから来た少女が立ち止まり、左手を腰に当てる。 彼女は03。水色の髪は胸に届くか届かないかであり、毛先にかけて濃青のグラデーションがかかっている。16歳になった03は、段々と大人っぽくなっている。そんな03の二つ名は、“全色の魔術姫”。7歳差の03と05、僕と共に、九星の年少組と呼ばれていたりする。主に06に。 「というか、そもそも俺たちの存在が露見する方が拙い
last updateLast Updated : 2026-07-19
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ジリ貧生活

あれから2年が経った。僕はどうやらチーズル帝国に売られたようだ。大国、セオドア王国への対抗策として、チーズル―オケディア間の同盟の印に。 僕はチーズル帝国に使い潰されていた。寝る暇もなく。ただただ無感情に敵を殺す。 僕は吸血鬼なので、血を吸わないと吸血衝動で狂ってしまう。 それでもなお、僕が飲むための血は与えられなかった。 僕は喉の渇きを常に感じていた。どうしようもない衝動に身を任せる前に、戦場で血を飲み、衝動をしずめる。 こんな生活がいつまでも続くとは到底思えなかった。いつかは吸血衝動で狂い死ぬ。それか任務失敗時の自害、または処刑だ。 まだ任務を失敗させたことはない。でもそれは、薄氷の上を歩くような綱渡り。取れない疲労を抱えた体では、いつか近い内に失敗する。僕の未来は死以外ありえない。どんなに06や04が手を尽くしたとしても。体はとうに限界を迎えている筈だ。 王族の親族でしかない司令官が、僕に横柄に命令した。「死神、セオドア国王と王太子を暗殺しろ。これは絶対だ。そして、王子王女も殺せ。王族は一人残らず、だ」 僕は頷いた。「チッ、陰気臭ェなァ!!」 そう言いながら拳を大きく振りかぶり、僕を殴る。普通に避けれるほど遅いパンチではあったものの、僕はそれを敢えて受けた。こうしなければただじゃ済まないからだ。僕は殴られた衝撃で倒れこむ。男は、それで満足したのか、さっさとこの場を後にしていた。僕はセオドア王国へ不法入国し、王城に潜り込む準備をした。 セオドア王国の警備はかなり厳しい。どう考えても長期戦になりそうだが、1年以内という期限が設けられた。 それから早数か月。僕は無事にセオドア王国に入国し、王城に使用人として潜り込むことに成功していた。 僕の赤と金が所々に混ざった黒髪と、黒に限りなく近い深緑は、遠目から見ると双黒に見える。黒――特に双黒――は珍しく、中々に人目を引く。 しかも髪色が二色以上の者はまずいない。目立ってしょうがない。 なので、髪や瞳の色を、どこにでもいそうなくすんだ赤髪と茶色の瞳にした。 気弱な印象を持つ、どことなく地味な少年がそこにいた。彼は話せないながらも、懸命に仕事に取り組み、職場での信頼を勝ち取っていた。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「ああ、いたいた。ア
last updateLast Updated : 2026-07-19
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王太子と暗殺者

Side Cyrilアルが蔵書室を出ていく。――一体彼は何者なんだ? アルはこの国の王太子、であり、僕の甥である、マティアス・ドゥ・セオドアに見初められて王城で働くことになった、見習いだ。 そこに居合わせた友人の話によると、マティを狙った暴漢を、彼が守ったらしい。どことなく物腰も丁寧で、マティに媚びようともしない。 見目麗しいマティは、女どころか男にまでアプローチを仕掛けられる。それにうんざりしていた彼は、自分に媚びない少年を面白く思ったのだろう。彼を王城で働かせることに決めた。その時は、王城は上へ下への大騒ぎだった。今強国2国と戦争状態のセオドアは、常に王族暗殺に警戒している。当然、少年暗殺者も視野に入れて。オケディアには、天才暗殺者がいるのだ。次々と対象を暗殺し、一度も失敗したことはない。それが商人の一家とか、残虐な弱小貴族だけならまだいい。戦争中、一度も警戒を怠らない軍の本拠地に潜り込み、大将の首だけを狩る。その間、不審な人物は誰も見なかったらしい。 ――もしアルが噂に聞く、“鮮血の死神”なら、この国は終わるね。 “鮮血の死神”はそこら辺の暗殺者とは訳が違う。歳は11だが、腕前は世界最高。暗殺者が最も苦手とする向かい合っての1対多ですら圧勝できる程。そもそも実力差がありすぎるのか、殺し方は至ってシンプル。毒などの搦め手はほとんど使わない。 そんな人物なら、どんな人間にでも成りすますことができるし、声が出せないというのも噓臭い。別人に成りすまされたら、声を聴いても同一人物と判断出来ないからだ。 ――それにしても、やはり兄上の言葉も気にかかる。 いくら王太子といえども、身元不明の少年を使用人に引き立てることはできない。そんなことができるのは、国王くらいだ。実際、揉めに揉めなかったのは、兄上の鶴の一声があってこそ。もし彼が暗殺者だったとしたら、今は絶対に尻尾は出せない。僕が同じ立場だったとしたら、不審すぎて罠を疑う。 「でも、アルが暗殺者という証拠もない」 もしかしたら運よく王城で働くことができた少年なのかもしれない。まあ、食わせ者の兄上が絡んだ時点でその可能性はなきに等しいが。成長期に差し掛かる年頃で、4歳も違うし。 ――もう少し観察してみるかな。 僕は彼を常日頃から警戒しているが、とても人を殺しているようには見えない。
last updateLast Updated : 2026-07-19
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遂に来た未来

――やられた。僕は気配を探り、誰もいないことを確認すると、大きな暗い廊下の隅で蹲った。聖なる魔力が僕の中で暴れる。荒い息を吐き、体が蝕まれる感覚に、思わず呻き声を漏らしてしまう。敵地のど真ん中、ずっと監視されていたため、情報収集がし辛かったり等で、睡眠時間を摂っていなかった。その所為でもあるのだろう。吸血鬼を含む魔族全体にとって弱点でもある聖水をジュースや料理の中に入れられても気づかなかったのは。そして気付いても、監視されている手前、変な行動はとれない。“鮮血の死神”は魔族だ。もし僕が魔族であることがバレたなら、今よりもずっと強い疑念に渦巻かれることになる。それこそ、暗殺が失敗してしまう位には。――一か八か、やってしまおう。僕は異能力を使い、存在を消す。異能力とは、オケディア王国にしか生まれない稀有な存在で、オケディア王国で生まれたならば、必ずある力だ。使えるかどうかは置いておいて。異能力は魔法とは違い、魔法を使うための力――魔力を使わない。他にも異能力特有の特徴があるが、今は割愛しておく。僕の異能力は、ものや事象を抹消する能力だ。僕は、僕の存在感を“消す”ことによって、誰にも認識されないようになる。「――!!」ただし、異能力の維持は、ここまで体調が荒れれば、難しくなる。「お初にお目にかかる、“鮮血の死神”いや、アルだったか?今は」「……」国王の執務室に侵入した途端、大剣が飛んできたので避けたら、細身の男と大男が僕と対峙していた。恐らく細身の方がセオドア王国の王、テオドールなのだろう。「おい、声ぐらい出せよ」「……」「おい!」「無駄だ。そもそも声が出ないという設定は設定じゃない」「どういう意味ですか、陛下」「今は目の前のことに集中した方がいい。弱っているとはいえ――強いぞ」キィィィィィン――……・・・国王が言い終わるかどうかのところで僕は大男に切りかかる。金属同士がぶつかり合い、高い音を出す。僕は器用に短剣を弄び、構える。「こいつ本当に11か?」「“鮮血の死神”だぞ?子供だが、あの小国、オケディアを支える戦力としては主力だ。弱い訳がない。聖水で弱らせ、後は何故か妙に弱っているが、それでも単騎で最強の君ですら互角以下だ。常識外れの強さだよ。そもそも、まともに打ち合えている時点で奇跡だと言うべきか」「……」僕はその間ず
last updateLast Updated : 2026-07-30
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推し様に愛を

Side Matthias俺はセオドア王国の第一王子、マティアス・ドゥ・セオドアだ。実は俺は前世の記憶がある。それは、この世界にも関係している。この世界は、日本で大流行した乙女ゲーム『白桃の君に愛を捧ぐ』の世界だ。 ヒロインは、桃色の髪に白い髪が混ざっている可愛らしい少女だった。名前はサティ。名前の変更ができないタイプだ。ストーリーは、サティと恋に落ちたハイスペイケメンと共に、世界を滅ぼさんとする魔王を倒す。その後、攻略対象から一人を選び、結ばれる。 俺はその攻略対象の内一人。ジャンルは俺様王子だ。マティアスは、気に入っていた使用人に手酷く裏切られ、人を信じることができなくなる。それをサティに恋することで、人を信じることの喜びを思い出すのだ。 別に俺は前世が女だっていう訳じゃない。だが俺はゲイだった。なので、巷で流行っていた乙女ゲームに手を出してみたところ、ハマってしまって、全ルート、全スチルをフルコンプした。 そんな俺にも当然推しキャラが存在する。その推しキャラは、ヒロインでも俺の婚約者でもなく、マティアスを裏切った使用人だ。 え?モブもいいところだって?いやそれが違うんだな。彼は敵国が送ってきた、天涯孤独の凄腕暗殺者だ。 だが、使い潰され、ついに限界を迎え、吸血鬼としての本能が溢れ出てしまう。どうやらマティアスと彼は半身らしく、色々な相性がいいらしい。 だが、マティアスは自分を裏切った暗殺者――アインを許さない。アインは、自分を受けれられないマティアスを嫌悪していた。それにより、世界で一番仲が悪い半身が誕生した。 それに、マティアスは別にゲイでもバイでもない。それはアインにも言えることだ。何故なら、アインはマティアスと出会う前、手酷い虐待を受けていたため、人間不信で人間恐怖症だ。なので彼は、声と、表情と、恐怖以外の感情を失っていた。それにより、自己主張もない。紆余曲折あって、アインはマティアスの専属護衛騎士になったが、マティアスはそんなアインを蔑ろにしていた。だが、彼は美しすぎた。そのためアインを手に入れ
last updateLast Updated : 2026-07-31
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非道な実験の被害者たち

僕が目を覚ますと、背もたれ付きの椅子に座らされ、椅子ごと拘束されていた。近くにはセオドア国王と、王太子、司書のシリル――調べでは王弟と出ている――に騎士団長と魔術師団長がいた。錚々たるメンバーに、僕は恐怖に怯える。――僕、王族殺害未遂で処刑?!怖い怖い怖い怖い……。僕を殴らないで……。「さて、君はつい最近来た使用人のアルだな?素性、目的、指示した者、それからその他知っていることを話せ」「……」王が言う。僕は答えられない。「今更だんまりか?」「国王を暗殺しようとして、更に王太子に危害を加えた。確信犯なのにも拘らず、まだ自国に忠誠を?」「――――――」魔術師団長とシリルに責められる。そんな訳ない、と言いたかったが、声が出ないので言葉にならなかった。「いい加減にしろ!!そこまで喋りたくないんなら、自分から喋りたくなるようにしてやるよ!!」騎士団長が声を荒げる。腰に刷いていた剣に手をかけ、今にも僕を切り殺さんとする。――怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い……!!!!「待て!紙とペンをやろう。でないと、ただただ無抵抗の人間を嬲ることになるぞ?」僕にとっての救世主は、先程僕が強引に血を吸った王太子だった。彼はそのままこちらに手を差し伸べてくる。僕は怖くて身をできるだけ引っ込める。それと同時に、体を11歳と相応に縮める。「しかし、手を自由にすれば、何をするか分かりません。プロの暗殺者はどんな物でも武器になる。それはこいつにも当て嵌まりますよ!!」「だが、そのプロの暗殺者とやらはこんな拘束なんて、あっさり抜け出しているんじゃないか?背を伸び縮みできる位だし。それに……色々酷いし、素直に傷を治癒させてくれそうなタイプでもなさそうだしな」魔術師団長が王太子を諫めるが、王太子はそれに反論する。
last updateLast Updated : 2026-08-01
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都市伝説の逆襲

Side Matthias「待て。そこの吸血鬼についての情報をリークした奴がいる。そいつが今オケディアを何とかしている最中らしい。その間、吸血鬼を気絶させておいて欲しいらしい。吸血鬼には、オケディアの革命を知られたくないそうだ。だが、起きている限り知られる。それを阻止しておいて欲しいようだ」父上の言葉に、俺を含めた全員は絶句する。叔父上が、目を丸くしながら、父上の先見の明に納得していた。「だからですか。陛下が吸血鬼を察知できたのは。それも今日の何時何分何秒寸分狂わず的中させ、あの“鮮血の死神”をも出し抜くとは」父上には情報提供者がいたらしい。もしかしてその人物は俺と同じく転生者なのではないだろうか……?「しかし、本当に未来を見抜くとはな。半信半疑であったが、全て当たっている。足りない情報もあるが……。こちらがあちらを信じていないのと同様に、向こうもこちらを信じていないのだろう。それに、吸血鬼は向こうの弱点らしいしな」「弱点、ですか?」父上の言葉に少し引っかかる。「ああ。向こうはこの吸血鬼を溺愛しているらしい。だからこそ、吸血鬼の危機に形振り構っていられない。たとえ信用できない相手でも、自国よりかは遥かに頼りになるらしい。そう言った取引相手は誰だと思う?――“絶対零度の司令官”だぞ」“絶対零度の司令官”。ゲームでは存在していなかった。だが、転生した後では、小耳に挟む程度だが、聞いたことのあった名だった。 曰く、後方にいながら戦場を支配する曰く、どんな情報屋も彼には敵わない曰く、非常に冷徹である曰く、九星のブレインである曰く、未来が見える――――。 そんな都市伝説じみた噂が広まっている。九星なんてものは都市伝説だ。ゲームでも出てきていなかったし、もしそれが本当だとしても、アインのルートで出てきていないのはおかしい
last updateLast Updated : 2026-08-08
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話せないワケ

――どうして何もしない?僕はそればかりずっと渦巻いている。目が覚めた時にはもう5日過ぎていて、その間にオケディアとチーズルが滅亡していた。この時点でもう分らない。九星は?遠征途中の02は?前線へ出向いたばかりの03は?本部に籠って負傷兵を治していた04は?暫く寝ると言って別れた05は?未来が見え、九星のリーダーだった06は?激戦区を常に渡り歩いている07は?国に張った結界を維持するために国に残っている08は?九星のメンバーそれぞれに合った武器や防具を作ってくれる09は?僕は二年前までの情報しか知らない。たとえ、彼らが死んでも判らないんだ。◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆僕は、見知らぬ所で目が覚めた。辺りを見回し、僕は情報収集をする。――一体ここは……?何故ここに?ああ、僕は。「気が付いたか」勢いよく振り向くと、そこには王太子がいた。近くには筋肉達磨騎士団長もいる。あの人間、確か僕が気を失う前に戦った相手だ。「……」僕はいつものように腕に隠し持っている短剣を取り出そうとして、ようやく今着ている服が自前でないことに気が付いた。「気分はどうだ?」「……」最悪だ、という意味の視線で返す。僕が睨んでいるのにも拘らず、王太子は口元に笑みを浮かべている。僕は右足が今まで僕が寝ていたベッドに鎖でくくりつけられている。武器も全て取り上げられ、履物もない。おまけに、筋肉達磨までいる。「ああ、話せないんだったな?ほら、紙とペン。これで話せるだろ?」王太子が僕にリードペンと手帳を投げ渡す。気分は最悪だ。僕は魔力でリードペンをコーティングしようとしてできないことに気付く。――この足枷、魔力封じか。仕方ないので、吸
last updateLast Updated : 2026-08-09
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一握りの希望

Side Miria私はあの時の事が未だに頭から離れない。ある意味トラウマにもなっている出来事だ。会合では何でもない風に振舞ったが、実際は物凄く心配している。それどころかこの二年は気が狂いそうだった。仕事の多忙さで何とか正気だった感じだ。01もラースもまだあの出来事を乗り越えれてはいない。勿論、私も――。◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆――6年前「01!!」ラース――まだこの時は05――が叫んだ。私は頭が真っ白になって、指先一つ動かせなかった。血溜まりの中で、虚空をただ見つめる01が、左胸にナイフを生やして横たわっているなんて、嘘だ。この鉄の匂いも、何で何でと叫ぶ少女の声も、この喉の痛みも。01を抱きしめた感覚も、血の滑る感覚も。二人分の涙も絶対――「ああ、ああああああああ!!!!!!」――嘘に決まってる。呆然としながらも、タイミング悪くここにいないララ姉――まだ04――の繋ぎとなれるよう、震える手で虚空を見つめる01の治癒をする。ラースは01を横抱きにし、自分の部屋を目指している。そこが最も安心できる場所だからだ。一緒にいた3人の参謀には、01にこんなことをした犯人たちを捜させていた。「一緒に風呂に入ろう。少し体が冷えてる。それに、血が付いたまま、ってのも嫌だろ?なんせ、01は潔癖症なンだからさ」「ええ、そうね。ええ、それがいいわ……」01を風呂に入れたが、身動き一つしなかった。瞬きはしているし、心臓も動いている。体が冷えてるって言っても精々指先程度だし、息もしている。死んではいないのだ、そう、体はまだ。「俺たち彼岸の魔族は、あれだけじゃ死なない。だが、心は違う。幾ら強い力を持っていようが、幾ら人間や此岸の魔族と生態が違っていても、心まで強いと決まった訳じゃないンだ。それなのに何故、人間は分かろうとしない?魔族は人間と同じなンだろ?魔族は此岸の魔族と彼岸の魔族、その両方を指すンだ。どんなに数が少なかろうが、強い力を持っていようが、俺たち
last updateLast Updated : 2026-08-10
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