Side soldier俺はオケディア王国の一兵卒だ。つい最近、軍に志願した。この国は昔、弱小国家で、戦争とは無縁の国だった。だからといって、平和ではない。ただ単に力を持たない弱者だっただけだ。それも今は昔。今は周囲の国家を腕っ節で従えられるほど強くなった。俺はそんな軍に憧れを抱き、最近ようやく夢が叶った、という訳だ。とある日の訓練の帰り道。豪華な城の中庭が見える回廊を、先輩と一緒に談笑しながら歩いていた。もうすっかり夜も更け、涼しい風が、頬をくすぐる。戦争が近いからと、いつもより熱が入った教官の愚痴を言いつつ、寮部屋に帰っていた時の出来事だった。「っと、危ないだろ、どこ見て歩いてんだ!」「……」俺は、ぶつかってきた腰の高さくらいしかない黒髪――所々に金と紅の髪が見えるが――の少年に文句を言った。その少年は俺を見上げ、じっと見つめる。長い前髪の所為で瞳は全く見えない。その上始終無言なので、薄気味悪かった。「な、なんだよ」「おい!お前!そこをどいて差し上げろ!その方は英雄様だぞ!」俺はその少年に気圧され、どもってしまう。しかし、それを悟られまいとしていると、先輩が、焦ったように俺の肩を引いた。俺は、肩に食い込む先輩の手に引っ張られ、通路の端に寄ってしまう。そして、先輩は俺の頭を掴み、一緒に頭を下げた。「失礼いたしました!ほら、お前も!」「し、失礼いたしました……」俺は、先輩に怒られ、渋々謝罪する。少年はそんな俺たちを一瞥すると、そのまま歩き去っていった。「あの、あの子供は一体……?軍服も見たことないものでしたが」ひどく鮮やかな深紅が、夜の涼やかな風ではためいたのが、俺の目を引き、少年の持つ雰囲気も相まってひどく不気味に思えた。俺がやや呆然としていると、先輩はあの少年について、説明してくれた。「あの方は、英雄様だ。一度戦場に出れば、その戦いは必ず勝ちになる。9人の天才のみで構成された部隊、九星を知っているか?」「いえ……」初めて聞く名だ。あすとろろじー?というか、たった一人で戦争を勝ちに導く存在など、いる訳がない。この国は、異能力者という、他国にはいない存在がいるが、それでもそこまでの能力はないのだ。「ああ、最近入ったのか。説明するとな、九星は一人一人がその辺の将軍より功績を挙げている、化物
Last Updated : 2026-07-19 Read more