Side Unidentified食後に愛しい妻の淹れた紅茶を飲みながら、陽の下で微睡む。これが、俺の一番幸せな時間だったりする。情熱的な夜も悪くない。しかし、静かに時が過ぎるのを待つだけ、というのも、長寿な俺たちの特権のような気がしていい。 そんな俺の至福な時間は、ドアのノックする音によって、終わりを迎えた。 コンコンコン「はーい」妻が出る。見知った、懐かしい魔力に、普段来客は全て妻任せにする俺は、妻の後ろから、来客を見る。俺は、少し笑ってしまった。――いや、訂正しよう。ゲラゲラ笑っていた。だってそうだろう?背の高かった幼馴染が、子供のような身長になって、家の門を叩いているのだから。 「笑いすぎだ」 その客はムッとしながら言った。世間話をしながら家に招き入れ、ソファに座らせる。妻が紅茶を持ってきた。 そいつは、舌がかなり肥えている。まあ、やんごとなきお方なので、当然だろう。そんな彼が、妻の紅茶を飲み、満足そうに頷く。それに嬉しくなったが、そいつの用事は、妻の紅茶を飲みに来た、という訳ではないだろう。 「で、何しに来たんだ?」 「そんなに来ちゃいけない?」 目の前の少年が、無表情のまま首を傾げる。 「いや。だが、お前がここに来るのは三回目位だろう、そのどれもに用事があった」 「その通りだよ。今日は、知っておいた方がいい、あることを伝えに来たんだ」 少し意外な訪問理由に、俺は軽く目を瞬かせる。 「いつもの蝙蝠便じゃ、駄目なのか?」 吸血鬼は、蝙蝠の分身を作り出すことができる。その蝙蝠に、手紙を持たせて、飛ばす。まあ、鳩が蝙蝠になっただけだが、吸血鬼には、そんな便利なものがある。俺たちは、知らせたいことがあると、そういう方法で連絡を取っていた。 彼が、なんとなく居場所がばれると気まずい俺に配慮しているのに、ただ甘えているというのもあるが。 「偶々近くにいただけだよ。それにこの情報は、秘匿性を高くしたい、というのもある」 「そうか」 納得したと同時に、大変なことが起こったのか、と身構える。 「魔族がこの国に侵入した」 「いつもの事じゃないか」 俺は、冷める前に紅茶を飲む。目の前の少年は、それをじっと見つめた後、口を開く。 「それが僕の行方を掴んだ者だとしたら?」 「………………は?」 「僕……」 「
Last Updated : 2026-09-16 Read more