LOGIN同盟国のチーズル帝国に暗殺者として出向した主人公01(オーワン)。奴隷のようにこき使われた先に訪れたのは、王族殺しの任務の失敗。 戦いの後意識を失い、目を覚ますとなぜか王太子マティアスの専属護衛になっていた!? 01をわざわざ近くに置いたマティアスの目的は!?
View MoreSide soldier
俺はオケディア王国の一兵卒だ。つい最近、軍に志願した。
この国は昔、弱小国家で、戦争とは無縁の国だった。 だからといって、平和ではない。ただ単に力を持たない弱者だっただけだ。それも今は昔。今は周囲の国家を腕っ節で従えられるほど強くなった。俺はそんな軍に憧れを抱き、最近ようやく夢が叶った、という訳だ。
とある日の訓練の帰り道。豪華な城の中庭が見える回廊を、先輩と一緒に談笑しながら歩いていた。 もうすっかり夜も更け、涼しい風が、頬をくすぐる。戦争が近いからと、いつもより熱が入った教官の愚痴を言いつつ、寮部屋に帰っていた時の出来事だった。
「っと、危ないだろ、どこ見て歩いてんだ!」
「……」 俺は、ぶつかってきた腰の高さくらいしかない黒髪――所々に金と紅の髪が見えるが――の少年に文句を言った。その少年は俺を見上げ、じっと見つめる。長い前髪の所為で瞳は全く見えない。その上始終無言なので、薄気味悪かった。
「な、なんだよ」 「おい!お前!そこをどいて差し上げろ!その方は英雄様だぞ!」 俺はその少年に気圧され、どもってしまう。 しかし、それを悟られまいとしていると、先輩が、焦ったように俺の肩を引いた。 俺は、肩に食い込む先輩の手に引っ張られ、通路の端に寄ってしまう。そして、先輩は俺の頭を掴み、一緒に頭を下げた。
「失礼いたしました!ほら、お前も!」
「し、失礼いたしました……」 俺は、先輩に怒られ、渋々謝罪する。 少年はそんな俺たちを一瞥すると、そのまま歩き去っていった。 「あの、あの子供は一体……?軍服も見たことないものでしたが」 ひどく鮮やかな深紅が、夜の涼やかな風ではためいたのが、俺の目を引き、少年の持つ雰囲気も相まってひどく不気味に思えた。 俺がやや呆然としていると、先輩はあの少年について、説明してくれた。 「あの方は、英雄様だ。一度戦場に出れば、その戦いは必ず勝ちになる。9人の天才のみで構成された部隊、「ああ、最近入ったのか。説明するとな、九星は一人一人がその辺の将軍より功績を挙げている、化物部隊だ。
正直、あの少年が、そこまでの存在だという事を、信じきれなかった、というのもある。
だがそれ以上に、先輩の説明には実感、というものがあるような気がした。 「あの方は、暗殺者だ。九星の英雄様にはそれぞれ二つ名があって、あの方の二つ名は、“鮮血の死神”だ。敵地に潜り込み、次々に敵上層部を屠っていく。あの方が枕元に現れなさることは、死を意味することからつけられた二つ名だ」 「かなり凄いですね」 こんな、ありふれた感想しか述べることができない。あの小さな少年には全く似つかわしくない、物騒な二つ名。それが、なんだかこの国の歪さを象徴しているように感じた。
「ここだけの話なんだがな、あの方は、俺よりも古株だ。まだ10にもいっていらっしゃらない。噂によると、後御二方、10歳より前に入軍なさった方がおられるとか」
「そんな早く……」 「それから少しして、我等が国、オケディア王国は勝ち始めた。この国の勝利は、あの方々の功績そのものだ。九星の方々は、俺よりも年少の方ばかりだ……。本当に尊敬するよ」 先輩の声色には、尊敬、崇拝の色がにじみ出ていた。大の大人が寄って集って、あの10にも満たない少年を持ち上げているその図は、狂気を感じさせられた。 「名前、は何ですか?」 ふと気になったので、聞いてみることにした。それだけ凄いのだから、きっと名前もよく知られているだろう。 そんな、思い付きのような考えからくる質問だった。「名前……?」
まさか、まさかな。先輩が少し黙り込む。それに俺は嫌な予感を抱きつつ、もう一度問うた。「ええ、名前です。あの少年の名前」
「ああ、あの方の名前はね、強いて言えば――」 当たってほしくない、そう願ってしまう。しかし、現実は残酷だった。 「特別実験体―AM―OD―僕はにっこりと笑って、未だ破壊衝動から抜け出せないラース兄さん――5に言ってやった。「単純だよ」 僕のその言葉に、5ははっとしていた。やっぱり、戦闘中においての5の勘は鋭い。 「限界を超えて使った。操作できる血の量を増やすために態と傷付けられに行ったし、5にも僕の血を染み込まさせて貰った。この量を動かせば、僕は必ず強い衝動を起こすだろう。でも!これが僕の本気だ!」 そう言いながら、僕は5を血操術で縛る。流石の5も、簡単には抜け出せないようだ。 「ぐッ、放せ!」 「そう言われて素直に放す馬鹿はいない!さあ!神の名を持つ輝きの槍よ!天より穿たれ、我が敵を滅せ!神槍グングニル!」 「ぐ、ぐおおおおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおッッッ!!!!!」 僕の放った魔法は、光属性としては最上級のものだ。これで大体どんな物でも滅することができる。光り輝く巨大な槍が空から降ってくる。5は、僕が行動を縛っているため、大した防御もできない。神の名を持つ槍は、すさまじいスピードで5に突っ込んでいった。 「な……!まさか、その魔法を放つとはな……!」 「ま、不味いわね。こんなの、地形が変わっちゃうわよ……?」 あまりの強風に、マティアス様とグラッチェス様が悲鳴をあげる。普通、そんな攻撃をもろに受ければ、消し炭になってもおかしくない。というか、此岸の魔族でさえもなる可能性がある。 ―――だが、その括りに九星は含まれてはいないが。 「ハァ、ハァ、ハァ、や、やったぞ……!1!」 豪快な土埃の中から、5がしっかりと立っているのが分かる。所々、服が擦り切れているが、意識はしっかりあるようだ。それに、破壊衝動が収まった様子はない。 別に手加減した訳ではない。九星という化け物の中で、5が特別頑丈だっただけだ。 「お前の作戦はよかったが、俺を完全に消耗させることは出来なかったようだなァ!次は俺の――」 「まだだよ。僕の本気はこんなもんじゃない!」 「まだそれを放つのか?!やめろ!周囲に甚大な被害が出るぞ!!」 マティアス様が叫ぶが、僕には関係ない。それよりも5を止める方が先だ……! 「闇より出でよ、万物を切り裂く悪魔の剣よ!我が敵を切り裂き、呪い殺せ!テルヴィング!」 「おいおいおいおい!それ、連続して出せるモンじゃねェだ
狂気的な笑みを浮かべながら、ラース兄さんは僕に殴りかかる。常人では見えない速度で連撃されている。頬にラース兄さんの拳が掠り、血が出る。「ぐッ……!」 「オラオラオラ!守ってばっかじゃ俺に勝てねェぞ!?」確かにその通りではあるが、現状手立てがない。少し距離が離れれば、魔法という手もあるが、距離を取ろうとすると、すぐさま距離を詰められ、振出しに戻る。そもそもラース兄さんは、頭を使った戦闘はあまりしない。だからこそ、こういう風に理性が欠如した状態でも、十二分に力を出せるのだが……。 「うわぁッ……!」 腕で防御しようとしたが、間に合わず、もろに顔に食らってしまった。あまりの勢いにラース兄さんから視線を外してしまった。「もう一発、喰らいやがれ」 「ぐッ……!!」 僕の腹にラース兄さんの拳が食い込む。口から悲鳴が漏れ、体は吹っ飛ばされていく。 僕は暗殺者で、本来は一騎打ちなんて苦手なのだ。防御を鍛えるよりは、素早さや攻撃力を集中的に訓練した方が効率がいい役職なのだ。本来なら。でも僕は、今のように身を隠さずに戦うこともある。ただ、正直なところ、隠密しながら攻撃した方がやりやすいし性にあっている。対してラース兄さんは狂戦士だ。九星の中で、攻撃力と防御力はピカイチ。筋肉がごてごてついているのに、かなり素早い。ラース兄さんにはもちろん接近戦では勝ち目はほぼない。 九星で最も強い攻撃力を持つ上、リミッターを外しているラース兄さんは素手でも十分強いのだ。 「チッ、手応えがねェ。さてはお前、威力殺したな?」 「当たり前でしょ?ラース兄さんの拳を受け止めてピンピンしてるの、エリック兄さんとオットー兄さん位だよ。僕が真面に受けたら、軽く意識飛ぶよ?」 「死なねェだけマシだろ」 軽口を躱しながら、僕はラース兄さんからの攻撃を受け流す。軽く意識が飛ぶなんてとんでもない。過去には一日中目を覚まさなかったことがある位だ。そんな威力のある拳が無限に襲ってくる。毎秒寿命が縮む思いだ。 だが、それは教えてやらない。 「しつこい、なあ!ハッ……!」 「ゴポッ……」 「これで暫くは大人しくして!ハァ、ハァ、ハァ……」 途切れ途切れになる息を急いで整えながら、僕はラース兄さんに目を向ける。彼の首は――胴体と泣き別れていた
Side Matthias「どうするって、行くに決まっているだろう。生憎と俺は、お膳立てされた舞台に怯む奴ではないからな」 俺は自信満々に言い切る。幼い時からもうずっとこれなので、今更恥ずかしさもない。 「アイツ、これが好きなのか?見る目無いな」 「何か言ったか?」 ラースが、何かを呟いていたが、よく聞き取れなかった。 「いや、何もない。それより、アンタも行くのか?若しかしたらいいモンが見れるかもしれないぜ?」 「ではお言葉に甘えて。楽しみですわ」おほほ、と上品に笑うジェシカを見て、ラースが一言。 「女って皆こういう笑い方すンのか?いや、アインもしてたか」 「皆ではありませんが、少なくとも、貴族や貴族に係る者は皆、こういう風に笑いますわ。口を隠して笑うのはマナーですもの」 「そういうモンか。――じゃ、準備はいいか?今から行くぞ」 「は?今からか?」ラース曰く、アインがいる場所はここより遠いらしい。だから早く行きたいらしいが。 ……ならもう少し準備してから行け。思い付きのように行こうとするな。それに俺たちを巻き込むな。 「ノア兄がさ、時間ない、って言うから……。それに、あそこなら数時間で着くだろ」 「貴様は一日でステラからセオドアに来れたのか?」 セオドアは面積が広い国の一つだ。最も広いのは、魔族の国である久遠で、前世でいう、ロシアより少し小さくした感じだ。あそこは、周りを海で隔てられており、独特な発展をしたらしい。 対してセオドアは、アメリカの三分の二程。ちなみにチーズルは、アメリカの半分、オケディアは日本の二倍程度しかないらしい。よくその国力差で戦争仕掛けられたな。九星がいたからか? ステラはセオドアの西に位置しているが、王都はセオドアの南に位置している。理由は、王都からそう遠くないところに港町があるからなのだが、ステラからセオドアの王都まではかなりの距離がある。 西から入ったとすれば、どんなに急いでも三日はかかる。更に、ステラとセオドアの間には広大な平地が広がっている。平地といっても痩せた土地なため、砂漠化し始めているが、そこを突っ切るのにも時間がかかる。隣国とはいえ、近い訳ではない。 「いや、もう半日かかった。寝坊したんだよ……」 まさかの寝坊。半日遅れたのがまさかの寝坊。 ……と言うか、半日遅
Side Unidentified食後に愛しい妻の淹れた紅茶を飲みながら、陽の下で微睡む。これが、俺の一番幸せな時間だったりする。情熱的な夜も悪くない。しかし、静かに時が過ぎるのを待つだけ、というのも、長寿な俺たちの特権のような気がしていい。 そんな俺の至福な時間は、ドアのノックする音によって、終わりを迎えた。 コンコンコン「はーい」妻が出る。見知った、懐かしい魔力に、普段来客は全て妻任せにする俺は、妻の後ろから、来客を見る。俺は、少し笑ってしまった。――いや、訂正しよう。ゲラゲラ笑っていた。だってそうだろう?背の高かった幼馴染が、子供のような身長になって、家の門を叩いているのだから。 「笑いすぎだ」 その客はムッとしながら言った。世間話をしながら家に招き入れ、ソファに座らせる。妻が紅茶を持ってきた。 そいつは、舌がかなり肥えている。まあ、やんごとなきお方なので、当然だろう。そんな彼が、妻の紅茶を飲み、満足そうに頷く。それに嬉しくなったが、そいつの用事は、妻の紅茶を飲みに来た、という訳ではないだろう。 「で、何しに来たんだ?」 「そんなに来ちゃいけない?」 目の前の少年が、無表情のまま首を傾げる。 「いや。だが、お前がここに来るのは三回目位だろう、そのどれもに用事があった」 「その通りだよ。今日は、知っておいた方がいい、あることを伝えに来たんだ」 少し意外な訪問理由に、俺は軽く目を瞬かせる。 「いつもの蝙蝠便じゃ、駄目なのか?」 吸血鬼は、蝙蝠の分身を作り出すことができる。その蝙蝠に、手紙を持たせて、飛ばす。まあ、鳩が蝙蝠になっただけだが、吸血鬼には、そんな便利なものがある。俺たちは、知らせたいことがあると、そういう方法で連絡を取っていた。 彼が、なんとなく居場所がばれると気まずい俺に配慮しているのに、ただ甘えているというのもあるが。 「偶々近くにいただけだよ。それにこの情報は、秘匿性を高くしたい、というのもある」 「そうか」 納得したと同時に、大変なことが起こったのか、と身構える。 「魔族がこの国に侵入した」 「いつもの事じゃないか」 俺は、冷める前に紅茶を飲む。目の前の少年は、それをじっと見つめた後、口を開く。 「それが僕の行方を掴んだ者だとしたら?」 「………………は?」 「僕……」 「