高瀬晃人(たかせ あきと)は、記念日を祝うのが嫌いだった。付き合って4年。バレンタインも、誕生日も、交際記念日も、彼が花を贈ってくれたことは一度もない。彼は、愛情を形で確かめたがるのは、余裕のない人間だけだと言った。「栞、本当に俺のことを分かってるなら、そんなくだらないもので煩わせるなよ」けれど晃人は、人の心をつなぎ止めるのがうまかった。私、藤沢栞(ふじさわ しおり)が腹を立てると、首の後ろに手を添え、低い声でなだめるのだ。「機嫌直せよ。お前以外に、誰と結婚するんだよ」私はその言葉ひとつに縛られたまま、4年もの月日を過ごした。婚姻届を出す1週間前、私は晃人の書斎を片づけていた。いちばん下の引き出しから、一冊の手作りのカレンダーが出てきた。1年は12か月しかないはずなのに、そのカレンダーには、晃人の手で「13月」が描き足されていた。どの日にも、同じ女性の好みが書かれていた。白いバラが好き。寒がり。眠る前には、物語を読んでほしがる。最後のページには、晃人らしい端正な文字が残されていた。【もし13月があるなら、その1か月だけは彼女と過ごしたい】私は長い間、その一文を見つめていた。目の奥が痛くなるほど見つめ続けたのに、涙はもう出なかった。晃人は、ロマンチックなことが嫌いだったわけではない。ただ、1年のどこにも、私のための月はなかっただけだ。私は怒鳴らなかった。泣きもしなかった。ただ静かにカレンダーを閉じた。その瞬間、ひどく疲れていることに気づいた。もう1日たりとも、彼を愛し続けられないと思うほどに。「何を持ってる?」書斎の扉を開けた晃人がそう尋ねたとき、私はちょうどカレンダーを封筒に入れようとしていた。背中に隠した私の手を見て、晃人がわずかに眉を上げる。「栞、何を隠してるんだ?」指先が表紙の端に食い込んだ。あの一文が、まだ目の前に浮かんでいるようだった。表紙の裏には、柏木琴音(かしわぎ ことね)という名前が書かれていた。私は彼女を知っている。晃人が幼い頃から、ずっと守り続けてきた幼なじみだ。琴音は体が弱いのだから、病人を相手に張り合うな。晃人はいつもそう言っていた。私はその言葉を、4年間ずっと信じていた。けれど、あのカレンダーを開いて初めて
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