第七週二日目早朝――。「んん――」 玲奈は苦しそうにゴロンと寝返りを打った。 眠りの中で、古い記憶が浮かび上がる。 それは、日本でも異世界でも変わらなかった。 ――悪夢は、玲奈が過去にトクガワ=ルリから講習を受けていた時の記憶だ。 金髪をポニーテールにして、スクラブスーツの上に白衣を着こんだルリは髪の毛を撫でた。 うっすらとメイクをしていて、唇に艶がある。「快楽市場に要求されるPエネルギーは一日当たり1,000万orgよ。備蓄分もあるから隷嬢が多少減っても、それは賄えるけど、多いに越したことはないわ」 玲奈は五州国からすると、外国人であった。――もう、人じゃないからビザも不要だけど。 だからこその基礎知識を、ルリから教わっていた。 玲奈は髪の毛に手櫛を通し、一房くるくると指で弄る。 化粧品を買う金すらない玲奈は、ノーメイクだ。「快楽市場はもともと快楽証券取引所と呼ぶけど、ほとんど呼ばないわ。市場規模とか個別の市場についてはテキストを読みなさい。説明するほどのものでもないし」「……はい」――後で、玖段にわかりやすく教えてもらえればいいわ。 玲奈は快楽市場――五州国、亡都に興味がない。 今考えるのは――。「隷嬢が知っておくことはただ一つ。アニムスとセックスして気持ちよくなる、それだけよ」 ルリの言葉に玲奈は――、ワンテンポ遅れて頷いた。 玲奈に拒否権は存在しない。 拒否すれば、勝手にアニムスのところへ連れていかれるからだ。 玲奈の返事に満足した様子で、ルリはふと呟いた。「ああ、でもこれは頭の片隅に覚えていなさい。今の貴女は関係ないから」――裏市場に気を付けなさい……。 「……んッ」 玲奈ははッと目が覚めた。 心臓がドクンドクンと跳ね、額に汗が
Last Updated : 2026-09-13 Read more