「私は……理想の物件が見つかったから、ちょっと浮かれて……」「僕も同じ気持ちですよ」「じゃあ、お礼にご飯をご馳走します。一日付き合ってもらったので」二人は近くの小さな居酒屋へ入り、食事をしながら酒を酌み交わした。その夜の七海は久しぶりに心から気分が高揚していた。飲み過ぎたせいで酔いが回り、すっかり上機嫌になってしまう。俊平が止めようとしてもまったく聞かず、最後は彼が七海を家まで送り届けることになった。だが俊平は気づいていなかった。この日はずっと、自分たちのあとをつけている者がいたことを。一人は祐希。そして、もう一人は――女性だった。祐希は一日中、七海のあとを追っていた。彼女がずっと俊平と一緒に過ごしている姿を見て、胸の奥に激しい苛立ちが込み上げる。だがそれ以上に、不安も募っていた。南川市へ来ていたはずの麻衣がどこにも見当たらないのだ。何度電話をかけても繋がらず、彼女が何を企んでいるのかも分からない。七海の身に何かあってはならない。そう思った祐希はホテルにも泊まらず、七海の実家のマンション前で一晩中見張ることにした。――その頃。七海がうとうとと眠っていると、スマホに知らないアドレスからメールが届いた。送り主は千鶴だった。連絡先がブロックされ、別のアカウントを使ってメールを送ったのだ。【七海。麻衣があなたを追って南川市へ向かった。様子がおかしかった。七海のせいで全てを失ったって言って、必ず復讐するって言ってたから、相当精神が不安定かもしれない。どうか気をつけて。今まで、祐希さんと麻衣のことをずっと黙っていて、本当にごめんなさい。私も反省をしてる。いつか仲直りしてくれたら嬉しい。ここ最近、いろいろ考えたの。親友のあなたと喧嘩別れなんてしたくなかったのに、どうしてこんなことになってしまったんだろうって。そしたら、やっと目が覚めた気がするの。何がともあれ、七海が傷つく姿がもう見たくない。だから、ちゃんと自分を守ってね】通知音は聞こえたが、七海は酔いが深く、スマホを手に取る気力すらない。そのまま再び深い眠りへ落ちていった。深夜。ふと、何かが焦げる臭いが鼻をついた。次の瞬間、廊下に火災警報器が鳴り響く。「火事だ!逃げろ!」誰かの叫び声が聞こえた。「七海!火事よ!早く出てきな
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