私は最初に、すべての予定に関わる人数と変更可能な範囲を確認した。 取締役会には役員十二名と事務局が参加する。海外企業との会談には通訳や法務担当者も同席し、工場では現場の責任者だけでなく、視察に合わせて複数の工程を止める予定になっていた。 記者会見には報道各社が集まり、文化財団の式典には支援者や招待客が出席する。 予定表には帝人さんの名前しか書かれていない。 けれど、その一日を動かすために何十人もの時間が使われていた。「取締役会は議題を二つに分けます」 考えをまとめ、榊原さんへ説明を始める。「帝人さん本人の決裁が必要な議題を先に扱い、報告だけで済む案件や継続審議が可能なものは後半へ回します。帝人さんが退席した後は、副議長に進行を引き継いでいただきます」「帝人様は最後まで出席するとおっしゃるでしょう」「理由は何でしょうか」「自分が出席した方が早く結論を出せる、と」 言いそうだった。「それなら、事前に決裁が必要な争点を整理しておきます。帝人さんが必要な部分へ集中すれば、会議全体に残る必要はありません」「自分がいない場所で判断を誤られる可能性がある、と言われた場合は?」「任せられない方を副議長にしていることになります。任命したのが帝人さんなら、まずその判断を信じていただきます」 早乙女さんの口元がわずかに緩んだ。「海外企業との会談は予定どおり行います。相手は帰国時刻を動かせませんし、こちらの事情で待たせれば今後の交渉にも影響します」「工場視察はどうしますか?」「安全点検が終わる前に到着しても、現場へ負担をかけるだけです。点検結果と視察箇所の映像を先に送っていただき、帝人さんには移動中に確認してもらいます」 現地で本人が見る必要のある場所を絞れば、滞在時間は短縮できる。 ただし、短縮するために現場の説明を急がせてはいけない。工場側には予定どおりの資料を準備してもらい、帝人さん側が確認方法を変えるべきだ。「記者会見には工場からヘリで移動します。ただし悪天候の場合は使用できないため、陸路の予備案も用意します。現地の滞在時間は、道路移動へ切り替えても会見に間に合う範囲で設定します」「文化財団の式典は削りますか?」 私は資料の最後に添えられた招待客の一覧を見た。 財団の代表は帝人さんの母親である皇香澄さん。支援する若手芸術家の表彰も
Terakhir Diperbarui : 2026-07-27 Baca selengkapnya