料理を待つ間、帝人さんは仕事の話をしなかった。 何度か口を開きかけては、何も言わずに閉じている。「話したいことがあるんですか?」「ある」「どうぞ」「何を話せば、仕事ではない俺を知ったことになる」 どうやら、私に言われた言葉を思った以上に真剣に考えていたらしい。「決まった答えはありませんよ」「それでは判断できない」「では私が質問します」「何でも聞け」「お休みの日は何をしているんですか?」「仕事だ」「休日ではありません」「予定がなければ仕事をする」「趣味は?」「ない」「好きな場所は?」「小春がいる場所だ」「私に関係しない答えをお願いします」「なぜだ」「帝人さん自身のことを知りたいからです」「俺自身が小春を優先している。それも俺を知るための情報だろう」 反論できない。 ただ何を尋ねても私へ戻ってきてしまうと、帝人さん自身が見えない気もする。「では、苦手なものは?」「無能、責任逃れ、時間の浪費」「人ではなく、食べ物や動物でお願いします」「ない」「怖いものは?」「ない」「本当に?」「小春に嫌われること以外はない」 あまりにも即答だった。 店内の穏やかなざわめきが、急に遠くなったように感じる。「そういうことを、簡単に言わないでください」「簡単ではない。事実だ」「言われた方は困ります」「なぜ困る」「まだ返せる気持ちがないからです」 帝人さんの表情から、わずかに熱が引いた。 傷つけてしまったかもしれない。 そう思った瞬間、昔の癖で言葉を取り繕いそうになる。 けれどそれを止めた。 今の
Last Updated : 2026-07-31 Read more