―――神殿 礼拝堂――― セレスは、いつものように礼拝堂で祈りを捧げていた。 朝の光が、ステンドグラスを通して差し込み、床に色とりどりの模様を描いている。 その光を纏い、慈恵神の像が、優しく微笑んでいた。 セレスは跪き、目を閉じる。 両手を胸の前で組み、静かに祈りを唱え始めた。「慈恵神よ……我が国と、民を、お守りください」 その声は、いつもと同じだった。 穏やかで優しく、祈りに満ちていた。 いつものように、最後の結び句を続ける。「——そして、創造神アーク・ディア=カヤよ……どうか、我らの世界をお見放しにならないでください」 瞬間——空気が、変わった。 セレスは目を開けた。『何かが違う』 いつもなら、この祈りを唱えた後は、心が穏やかになる。 静かな安らぎが、胸に満ちる。 けれど今日は明らかに違った。 冷たい。 まるで何かが、この場所を見ているような。 セレスは息を呑んだ。 礼拝堂の空気が、わずかに重くなっている。 いや、重いというより、張り詰めている。 まるで、弦が限界まで引かれているような感覚。「……何……?」 セレスは小さく呟いた。 慈恵神の像を見上げる。 その優しい表情は、いつもと変わらない。 それなのに、何かが違う。 セレスは立ち上がり、礼拝堂を見回した。 物音すらも無く、誰もいない。 静かだ。 けれど、その静けさが、妙に不自然だった。 まるで、誰かが息を潜めているような―― セレスは、組んだ指先に無意識に力をこめた。(今日の儀式……) セ
Last Updated : 2026-10-12 Read more