江波結斗(えなみ ゆいと)と共に区役所に婚姻届を出しに来るのは、これで27回目となる。日曜開庁の窓口で、ようやく私たちの番号が呼ばれた――まさにその瞬間だった。後ろにいた義妹の江波愛莉(えなみ あいり)が不意に身をかがめ、胃のあたりを押さえた。「お兄ちゃん……お腹が、すごく痛いの」結斗はすぐさま彼女の肩を抱き寄せた。「今すぐ病院に連れて行くからな」愛莉は慌てて首を横に振った。「ううん、大丈夫。今日は二人の大事な日だもん。私、我慢するから」口ではそう言いながらも、結斗の袖を握る手だけは決して離そうとしない。結斗はすっと眉をひそめた。「愛莉、無理するな。すぐ連れて行く」そう言い残し、彼は番号札を私の手に押しつけた。私――矢野目芽依(やのめ めい)は、彼を静かに見つめた。「婚姻届なんて、手続きに10分もかからないでしょう。その時間すら私にくれないの?」彼はこちらへ視線を向けようともしない。「どうせ26回も待ったんだ。今さら1回増えたところで、大した違いはないだろう」あまりに悪びれないその口ぶりに、私は思わず笑みをこぼした。そうか。彼自身も、何度も私との約束をすっぽかしてきたことは分かっていた。ただ、私が待ち続けているという事実を、一度たりとも真摯に受け止めていなかっただけで。「結斗。今日、私と婚姻届を出さないなら……28回目は、もうないから」彼は愛莉を抱き寄せたまま、こちらを見ようともしなかった。「今はごねないでくれ。愛莉を落ち着かせてからだ」私は俯いてスマホを取り出し、長らく連絡を絶っていた番号とのメッセージ画面を開いた。【10分以内に、本人確認書類を持って区役所まで来て】メッセージを送信して30秒も経たぬうちに、画面が明るくなった。【待ってろ】画面に浮かんだのは、たった一言。私はしばらくそれを見つめ、静かに画面を閉じた。ロビーの電光掲示板には、依然として私たちの番号が灯っていた。027。【3番窓口へお越しください】という文字が、執拗に点滅を繰り返している。結斗は愛莉の体を支えて長椅子に座らせ、その隣にしゃがみ込み、心配そうに尋ねた。「まだ痛むか?歩けそうか?」愛莉は蒼白な顔で、そっと彼の手首を握りしめた。「大丈夫、我慢できるから。お兄
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