All Chapters of なぜか軟禁されていました〜雑な設定の脇役に転生したら、年の離れた騎士様に執着されました〜: Chapter 21 - Chapter 30

30 Chapters

21.キース

「んん……」 リィーンは、深い眠りから目を覚ますと、手足の感覚を確かめる。 熟睡していた。どのくらい眠っていたのだろう。 先程は全く動かせなかった手足も、動かすことができた。まだ少し痺れた感じはするけど。 ゆっくりと、起き上がり、ベッドに腰掛けることができた。 自力で洗面所まで行けそうだ。良かった。 立ち上がると、片足を進めてみる。違和感があるけれど、歩くには支障はないみたい。ぎこちない歩き方で、洗面所へと向かった。 顔も洗い、さっぱりすると、ベッドへ戻る。 サイドテーブルには、コップに入った水が置かれていた。 「キースが置いてくれたのね」 喉が渇ききっていたので、お水を一気に飲み干した。コップを置く時に、自身の手の傷が消えていることに気づく。 擦り傷があったはずなのに……。キースが手当てしてくれたのだろうか。 「はぁ……」 なんとか、ここまで脱出することができた。まだ、不安はあるけど。あの家から、出られたことが嬉しい。なにより、すごく開放感がある。やっと、自由になれる……。 早く、カイン様の元へ行きたい。 「リィーン、起きてる?」 ノックをした後、少しだけ扉を開けて、キースがこちらの様子を窺っていた。 「キース、本当にありがとう。何から何までお世話になって、どうお礼をしたらいいのか……。いつかこのお礼をさせて。でも今は急いでいるの。そろそろ行かないと」 一刻も早く、カイン様の所へと向かいたかった。 「えっ?そんな体で動くのはやめた方がいいよ。あと2、3日は安静にしないと 。解毒剤は、今日の夜にこれを飲んで。 1日2回解毒剤はきちんと飲んでね。 その都度渡すから」 「解毒剤?そっか、まだ飲まないといけないのね。でも……お世話になっていいのかな……」 「きちんと飲まないと、後から辛くなるから。お世話になるって、大したことしてないし。もちろん、回復するまで遠慮なく休んでよ。それに、あそこに侵入されたのバレたら、上から怒られるし……。あっ、いや、何でもない、今の言葉は、忘れて。さぁ、これを飲んで」 キースは誤魔化すように、解毒剤と水をリィーンに渡す。 「ありがとう。キース……あのね……」 キースに、自分の状況を、どこまで伝えたら良いのか分からなかった。 無条件に信じて良いのか分からない。 「リィーン、あ、もしかし
last updateLast Updated : 2026-08-16
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22.消息不明の先輩騎士

パチパチッと、火の爆ぜる音がする。 夜は寒いから、とキースが暖炉に火を入れてくれた。 この小屋には、二つ部屋がある。ベッドがあるのは、この部屋だけ。キースは、隣の部屋のソファーで休むと言っていた。 この小屋は、騎士団の所有物らしい。普段は、キースの先輩が使っているそうだ。 キースは、その先輩と連絡が取れなくなって、捜しているそうだ。先輩は、人を寄せ付けず、一人で行動しているとか。だから、最初は、自分が避けてられているだけだと思っていたそうだ。 でも、連絡が取れなくなって1ヶ月経つ。ここまで連絡が取れなかったことはない。連絡事項もある為、今、捜している最中だという。 キースの先輩。先輩、というからには年上の騎士。 キース一人なら、なんとかごまかせそうな気がする。でも、もしも、その先輩が帰ってきたら……。身元を詮索されて、尋問されたりしたら?絶対に、素性が怪しまれる。 キースは、カイン様のことを、知っているだろうか。騎士団も人数が多いだろうし。自問自答を繰り返していると、段々と睡魔が襲ってくる。 今日は、色々なことがあった。あんなに歩いたり走ったのは、初めてだ。本当に疲れた。また、明日考えよう。 リィーンは、考えることを放棄し瞼を閉じると、そのまま夢の中へと誘われた。 「んんー!」 ものすごく、よく寝た気がする。思い切り伸びをするも、手足の感覚には、まだ少し違和感がある。 それでも、昨日よりは格段にいい。充分に睡眠もとったし、頭もスッキリしている。 リィーンは、ゆっくりと歩いて、洗面所へ行く。ベッドまで戻ろうとした所、ちょうどノック音がする。 「リィーン。入るよ。よく眠れた?」 「おはよう。キース、うん、ぐっすり。キースは眠れた?ベッドを占領してごめんね」 キースは薬などを、サイドテーブルに置きながら、返答する。 「どーってことないよ。俺達は野宿することもあるし、ソファーで寝るなんて天国だよ。リィーンを一人残して行くのは心配で、買い出しに行けなくて。だから、このパンしかなくてごめん。はい、今朝の解毒剤も」 「キース、本当にありがとう。私、こんなに親切にしてもらったのは……」 カイン様に続いて二人目だ。カイン様のことを話すと、軟禁されていることにも触れてしまいそうで、言葉を噤む。 「ん?どうかした?」 「ううん、なんでもない。
last updateLast Updated : 2026-08-17
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23.とある男性side③

ハンドクリームの感想を聞く、という名目で、私は堂々とリィーンの元へ通う口実ができた。 知り合いに頼まれたというのは、嘘だ。レオナルド殿下の婚約発表と共に、一躍有名になったハンドクリームだ。殿下の婚約者愛用品だとかで、爆発的に人気が出たらしい。女性への贈り物として、外せないとか。荒れた手も元通りになる効果もある。 美容にこだわる女性達に、大人気だと。聞きたくもないのに、キースは色々な話を耳に入れてくる。 キースからその情報を初めて聞いた時は、全く興味がなかった。だが、リィーンの手を見て、そのハンドクリームを贈りたいと思った。ふとした瞬間に見えた荒れた手。 過酷な境遇の中、一人で耐えてきた現実を痛感させる。頼れる者もいない、全て一人で耐え忍んできたリィーン。せめて、少しでも、救いになれたらと……。人気すぎて、入手困難だというが、無理を言いキースに購入を頼んだ。 任務規定に違反している自覚はある。けれど、どうしても放ってはおけなかった。 パンを美味しそうに食べて涙を流すリィーン。その姿は、庇護欲を掻き立てられた。 私は、最低な人間だ。罪もないリィーンに、固いパンだけを与えていた。 痩せ細り、日焼けしたリィーンの姿が、頭から離れない。栄養失調の一歩手前ではないか。いや、既にビタミン含め、全てにおいて不足している。これは……虐待だ……。 誰もが口にしたことがあるお菓子も、見たことすらなかった。当たり前だ。届けていないのだから。お菓子一つでも、涙を流す。まるで宝物のように大切に、口にする。 それに、衣服のことだって……。暑いのに長袖を着ていることに、今頃気づいた。 何故、気づかなかったんだ……。いくら任務とは言え、扱いが酷すぎる。 人として最低だ。自分が情けない。 リィーンを少しでも喜ばせたい。ただの自己満足かもしれない。こんなことをしても、許されないことだと分かっている。 酷い境遇に育ったにも関わらず、リィーンは、心根の優しい娘だ。 ありがとうとお礼の返事をくれた。天使なのか。そのメモは、捨てられなかった。 そのメモは、私自身への戒めとして永久に保管する。肌身離さずこうして、服の下に袋に入れて首から下げている。 リィーンを、一生をかけて守ると心に誓った。決して、傍を離れないと。だが、キースが言っていた会議のことが引っかかる。会議の内容を詳し
last updateLast Updated : 2026-08-18
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24.とある男性side④

いつの間にかリィーンの家の近くまで来ていた。いい歳をして自分の行動が情けない。 リィーンと他の男が一緒にいる所など見たくもない。例えその相手がキースだとしても……。 くそっ!この感情はどうしたらいいんだ……。リィーンの幸せを、願っている。好きな相手と結ばれるのは、喜ばしいことだ。だが、まだ早すぎる。リィーンは、外の世界を知らなさすぎる。悪い奴に騙されるかもしれない。 キースは、どこまで真剣に考えているのか。悪い奴ではないが、リィーンの全てを受け止めれるのか。長年、苦しんできた彼女の心を癒せるのか?私が納得できなければ、無理にでも別れさせる!だが、リィーンの気持ちはどうなる?どうしたらいいんだ……。様々な感情が交錯する。 カインは、虚無感に苛まれながらリィーンの家の前に立ち、虚空を見つめていた。 「リィーン……」 キースが、助けたのだな……。軽い若造と思っていたが、なかなか大胆なことをする。リィーンに懸想したのか……。助けたくなるのは、当然のことだ。私だって、何度そう思ったことか……。任務放棄する勇気が出なかった。くそっ!私の行動は正しかったのだろうか。もっと早くにキースのように、助け出していれば、今頃は……。若さ故の行動力かもな。出来ることならば、私がこの手で連れ出したかった。もう、過ぎたことか……。 「ぱーい!せんぱーい!」 間の抜けた声が聞こえてくる。カインは現実に意識を戻すと、気怠げに振り向いた。颯爽と駆けて来るキースの姿を捉えると、醜い感情が芽生えてくる。 「キース……」 心なしか、いつにもまして鼻につく。無性に腹立たしい。なぜか、殴りたい衝動に駆られる。 「はぁ……、やっと、追いついた。先輩速いですよ。ちょ、ちょ、なんで睨んでるんすか?俺、先輩に何かしました?怖いですって!こっちは、ずーっと捜してたというのに。俺の苦労も知らないで。さっきも、急に駆け出して行くなんて酷くないですか?こっちは、真面目に仕事してるのに……。 はい、とにかくこれをそうぞ。ちゃんと渡しましたからね」 言葉とは裏腹に、全く怖がっていない様子のキース。案外肝の据わった奴なのかもしれない。だからと言って、リィーンとのことを、簡単に認める訳にはいかない。 キースはカインへ強引に書簡を手渡すと、急いで距離をとるように後ずさる。 「これは?」 「必要な書類です
last updateLast Updated : 2026-08-19
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25.とある男性side⑤

「ちょ、先輩」 「キース!」 「俺より先輩の方が詳しいでしょ!先輩と俺くらいっすよ」 「団長は、お前を見て何も言わなかったのか?」 「何をですか?会議の内容は聞きましたけど。団長も、先輩が来てるなら教えてくれたらいいのに。まぁ、呼ばれない限り、団長と話す機会なんて、ないんですけどね」 「お前は、今まで何をしていたんだ?」 「だから、俺は、最近入った新人の相手というか、指導まがいのことを押し付けられていたんです!やる気のない奴で、面倒だからと!団長にバレたらまずいとかで、強引に別棟に押し込められてたんでよ! 普段先輩が任務に加えてくれないから、暇人だと思われてるんです!雑用ばかり押し付けられる身にもなってくださいっすよ。こっちは、隙を見つけて、先輩を探してたのに!」 何ということだ!私達二人がリィーンの側から離れていたんて……。 1ヶ月近くだ。1ヶ月近くも放置した状態……。私は何をしているんだ! 自分が許せず、怒りが抑えきれずに拳を木に叩きつけていた。 「先輩……?どうしたんですか?」 キースが不安気に問いかけてくる。 「キース!私は、会議の報せを待つ間、ずっと宿舎にいたんだ!その間対象者は……」 「そ、それって!何も食べてないってことじゃないですか!大変だ、助けにいかないと」 一気に血の気が引き、顔面蒼白になるキース。リィーン不在の家の中に駆け出そうとしたキースの腕を、カインは咄嗟に掴む。 「おい、どこに行く?」 「どこって、何言ってるんですか。家に入るんですよ!中で倒れているかもしれない」 「落ち着けキース!倒れている訳ないだろ?お前が既に助けたのだろう?」 「は⁉︎今から助けに行くんすよ!だから、離してください先輩」 「落ち着けキース!お前、さっきリィーンと一緒にいただろう」 「え、先輩、リィーンのこと知ってるんですか?今は、そんなことよりも……」 「お前、本当に知らないのか?対象者はリィーンだ!」 「は?リィーンが……?対象者……?対象者?いやいやいや、だって普通のお嬢さんですよ?先輩……?本当なんですか?俺、知らずに……」 動揺するキースの腕から、カインはゆっくりと手を離した。 「キース、お前の言う通りだな。一人では限界がある。対象者の顔を知らせておくべきだった。どうしても……(リィーンを見せたくなくて)。
last updateLast Updated : 2026-08-20
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26.迫り来る危機①

「まだ、身体がたるい……戻ろう」 走り去るキースを見送った後、リィーンは小屋へと戻る。 キースに言われた通りに鍵を閉め、念入りに再度確認する。 ほんの少し動いただけなのに、既に倦怠感がある。やっぱり、大人しく今日も安静にしていよう。 リィーンは、ベッドに横になることにした。目をとじると、すぐに泥のように眠ってしまった。 窓から差し込む日差しが明るくなり、目が覚める。 どれくらい眠ってしまったのだろう。熟睡したので、幾分身体が軽くなっている。 リィーンは、ゆっくりと起き上がり、隣の部屋の扉をノックをしてみる。 「キース、帰ってる?キース、いる?」 何度かノックをしたものの、返答はない。 キースは、まだ戻ってないようだ。 窓辺に近づき、外の景色を眺めると、太陽は既に真上に昇っていた。 「ちょっとだけなら、外に出ても大丈夫だよね」 戸締りをした後、キースに言われた場所へと鍵を保管する。 小屋の周囲を見渡すと、見覚えがある箇所がある。 毒草が生えてるいるのは、あの辺りなのかな。倒れた場所。何となく見覚えがある。 キースに、今度、毒草を教えてもらおう。 リィーンは、毒草が生えているのとは、反対の方向へと、進んでみることにした。 しばらく進んで行くと、開けた場所にでた。 「わぁ」 思わず感嘆の声が漏れる。小高い丘だったので、遠くまでの景色が一望出来た。絶景ではないけれど、初めてみる景色に胸が踊る。家が建ち並んでいる場所も見える。 かなり距離はあるけど、あそこまで行けば人に会える。行ってみたい。 リィーンは、好奇心に負けそうになるのを必死に堪えた。 このまま黙って出ていくような、失礼なことはできない。 しばらく風に当たった後、来た道を引き返すことにした。 「キース、そろそろ戻って来てるかな」 黙って出て来た事に、今頃になって罪悪感を感じる。急ぎ足で進むリィーンは、何かが爆ぜる音に気づく。 「何の音?」 何かを燃やしているのだろうかと、キョロキョロと周囲を見るも、煙は見えない。 「あっちだ!追え!」 「本当に殺るのか」 「当たり前だろ、こんなチャンス逃す手はないだろ」 複数の足音と不穏な会話が耳に届く。 誰?追っ手……?まさか、私を連れ戻しに……?なんで……。命の危険に晒される描写なんてなかったはず。私が脱出したこ
last updateLast Updated : 2026-08-21
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27.迫り来る危機②

「ぐぁ!」 「痛い」 むぎゅっと柔らかい感触がする。何かの上に倒れ込んだようだ。何かを確認するのも怖くて、リィーンは動けないでいた。 「さっさと、どかんかーーー⁉︎」 耳をつんざくような怒声が自身の下から聞こえて、慌てて飛び退く。 「あ、あ、ごめんなさい!って……うさぎさん?うさぎさんじゃない。どうしたの?あ、捕獲されたの?」 リィーンは、網を被った状態でジタバタするウサギから、網を取り外した。 「だから、何度も言っているが、私はうさぎではない!この程度の網、どうってことはない」 「じゃあ、取らなくてもいいの?」 助けようとして文句を言われたリィーンは、網をウサギに戻そうとする。 「なっ⁉︎止めんか!」 ウサギはリィーンから網を奪い取り、瞬時に燃やして消し去る。 「うさぎさん、魔法が使えるの?」 ウサギの足から炎が出てきて驚くリィーン。 「さっきの音はウサギさんだったのね。狩猟者から追われてたんだ」 「あんな奴らどうってことはない。」 「え?でも……」 「うるさい、この網は後で外そうと思って、敢えてこのまま動いていたのだ。この姿では、思うように魔法が使えない。というか、リィーン、お前は解放されたのか?そうか、マリアが伝えてくれたか」 「え⁉︎マリアちゃん?ねぇ、今マリアちゃんって言った?ねぇ、マリアちゃんを知っているの?会ったの?ねぇ!」 リィーンはウサギを持ち上げ、ブンブンと身体を揺さぶり詰問する。 「こら、リィーン、やめろ。頭が揺れる!落ち着け」 ウサギはリィーンの手から逃れると、地面に着地する。 「ごめんなさい、うさぎさん。つい、興奮しちゃって。マリアちゃんと会ったの?いつ?」 「小屋を出てすぐだ。マリアとかいう娘がウロウロしていた。不審に思い問い詰めたら、王子の婚約者と言うではないか。この姿で、ルナリア王にどうやって会いに行くか悩んでいたから、利用させてもらった。リィーンのことも解放を約束させたが、あの娘……。私のことを、まるで、ぬいぐるみかペットのように扱い始めた。天然なのかあの娘は。まぁ、悪い娘ではなかったが、あれは、おそらく魅了もちだろう。周りの者が誰も止めない。一歩間違えば……と考えると恐ろしいな。シリルとかいう魔法使いがいたので、転移させてもらった。ところが、今度は、あいつらに追われてこのざまだ。まぁ
last updateLast Updated : 2026-08-22
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28.待ち望んだ再会

体中が痛い。 「う……」 動こうとして更に激痛が走った。 「目が覚めたのか、人間」 「っ!」 先程、自分を襲った魔族に呼びかけられて、飛び起きる。痛みはあるものの、手足が動かせることに安堵する。 縛られたりしていなくて良かった。 「ここは……?」 周囲を確認したリィーンは、見慣れた小屋にいることに違和感を覚える。 キースと一緒にいたあの小屋の中だったからだ。 「……うさぎさん!」 部屋の隅に放置されるようにして、ウサギが倒れているのが目に入る。 「どうしてこんな酷いことを……」 うさぎの側へ駆け寄ろうとした所、ミハイルによって行く手を阻まれる。 「おーっと、大人しくしてもらおうか人間」 「どいてください!それに、私は人間という名前ではありません!」 咎めるようにきつく睨むリィーン。 「随分、威勢がいいなぁ人間。ちっぽけな人間に興味などないが、そこまで言うなら、名前くらいは聞いてやろう。それで?名前は?」 「……リィーンです……」 素直に答えるのが癪だったが、拒む理由もないので名前を口にする。 「リィーン。へぇ、アレクセイ様がこんなのが好みなのか」 上から下まで舐め回すような視線を向けられて、思わず後ずさる。 「さっきまでの威勢はどうした?」 「っ!やめてっ!」 ミハイルは、片手でリィーンの首を掴み徐々に力を入れていく。 必死にもがくけれど、リィーンの力では敵わない。息をするのもできなくなってくる。 苦しい……。 「おい!ミハイル、まだ殺すな!アレクセイ様が目を覚ますまで待て。アレクセイ様の目の前で殺せ」 「そうは言うが……おい、シド、お前が蹴ってでも起こしてくれないか。俺は、もう、殺したい……」 ミハイルの瞳が飢えた獣のように爛々と輝きを増す。恐怖に震えながらも、リィーンは、必死に抵抗を続けた。 ぐるしい……。息が……できない……。やっぱり、脇役は……幸せにはなれない……。 このまま、私、死ぬの……?うさぎさん……。カイン様……せめて、もう一度会いたかった……。もう……だめ………。 「っと、何だ⁉︎クソッ!誰だ!」 突如ミハイルは、リィーンの首を絞めていた手を外し飛び退く。いつの間にかミハイルの手は鋭い刃物で切られた跡があり、生温かい血が流れている。 鉄のような匂いと、一気に肺に空気が入ってくる感
last updateLast Updated : 2026-08-22
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29.エピローグ①

「リィーン……」 小屋に戻ると、カインは脱兎の如くリィーンの側へ駆け寄る。丁重にベッドまで運び、布団を掛け、優しく頬を撫でる。 「すまないが、リィーンが目覚めるまで二人だけにしてもらえないか……頼む……」 真摯な表情で懇願され、キースは考えを巡らせる。 「先輩……、何か必要な物とかあったら、声かけてください。俺は、扉の修理をしてるっす。あいつら、無理矢理こじ開けやがって……」 「私も手伝おう。簡単な魔法なら使える」 「手伝ってもらえると、助かるっす」 「青年、お前は確かキースとか呼ばれていたな。ところでお前は、リィーンとはどういう関係なんだ?」 「あー、それはっすね……」 キースとウサギが退室すると、室内は静寂に包まれた。 カインは、洗面所から水とタオルを持ってくると、タオルに水を含ませ硬く絞る。リィーンの顔を、優しく拭き始めた。顔を拭き終えると、両手の土汚れも落としていく。 「痛かっただろう……確か、ここにも置いていたはずだ」 カインは、治癒効果のあるハンドクリームを、塗り込んでいく。 「こ、これは、治療のためだ。決してやましい気持ちはない……」 キース達がいないのを再度確認した後、リィーンの衣服に隠れている箇所に怪我がないかを確認する。手際よく塗布を終えると、元通りに衣服を整えて、布団を掛けた。 ベッド脇の椅子に腰掛けると、リィーンの手を握りしめる。 「リィーン……」 「うぅ……」 「リィーン?気がついたのか?リィーン」 「カイン様……?カイン様……?あぁ……本当にカイン様だ。良かった。カイン様が、ご無事で……。助けてくださったのですね……ありがとう……ございました……。うさぎさんは?」 「あのうさぎのことは心配いらない。彼も元気だ。キースと外にいる。リィーン、遅くなりすまない。もっと早くに来るべきだった……。一人にしてすまない……。リィーン、君に話さなければいけないことがある」 神妙な面持ちで話すカインの雰囲気に、リィーンは不安を覚える。 変に誤解されたくない。何か問い詰められるのなら、その前に自分から事実を告白したい。 カインの言葉を遮るように、リィーンは早口で言葉を紡ぐ。 「わ、私も、お話しなければいけないことがあります。私、あの家から出ては行けないのです!軟禁……されていて……。でも、何か罪を犯したりとか
last updateLast Updated : 2026-08-23
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30.エピローグ②

が、ノックの音が聞こえて、カインは急いで飛び退いた。 「先輩、そろそろいいですか?」 「あぁ」 のしかかっていた温もりが急に消えて、寂しさを感じるリィーン。 心臓が早鐘を打ち、落ち着かない。いったい、カイン様は何をしようとしていたの……? 思いだすと恥ずかしくなり、一気に体温が向上する。ふるふると首を振り、気持ちを落ち着かせ現実に意識を取り戻す。 キースの声がする。キースが言っていた先輩って、カイン様のことだったのね。じゃあ、この小屋はカイン様の小屋だったんだ。 「失礼します」 キースの手には、丸められた書類が握られていた。 「リィーン、危ない目に合わせてごめんね。それに、俺も、申し訳ありませんでした」 入室してすぐさま、キースは深々と頭を垂れる。 「キース、謝らないで。キースにも助けられてばかりだね。ありがとう」 「キースは、リィーンの監視には携わってない。本当にすまない。リィーン。そして、これを見てほしい」 カインは、書類を渡そうとするも、思いとどまる。 「あ、起き上がらなくていい。まだ、つらいだろう。私が代わりに広げてもいいだろうか?」 「お願いします」 カインは、横たわるリィーンに見えるように書類を広げる。 長い文章が書かれていた。文字を目で追うの疲れる。 ある言葉に目が釘付けになる。 「恩赦……」 「あぁ。恩赦がでたらしい。そもそもリィーンには、なんの罪もないと思うが。恩赦がでたようだ。」 「ふんっ!人間は時間の無駄遣いばかりする。そんな書類を作る前に、すぐに解放すればいいものを」 ウサギは、ベッドをよじ登り胡座をかき腕を組む。 「ウサギさん?無事だったんだ……良かった……。」 「あの程度の傷、どうってことはない。が、少し回復に時間を要した。お前が無事で良かった」 「リィーン、もう、あの家から出ても大丈夫だ。もう、自由だ。詳細は、こちらに書いてある。身元保証とこれまでの境遇を考慮していくらかの補償金もでるようだ…」 「自由……自由……ゔあぅ……」 やっと解放される。他人事のように感じていたつもりだった。ゲームの設定だからだと。でも、本当は不安だった。怖かった。終わりの見えない生活がつらかった。これで、やっと自由になれる……。抑えていた感情が、涙となり溢れてくる。人前だということも忘れて、まるで、子供の
last updateLast Updated : 2026-08-24
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