Tous les chapitres de : Chapitre 11 - Chapitre 19

19

11.はじめての食事

また一日が始まる。 昨日は泣き疲れて、そのまま寝てしまっていた。 リィーンは、洗濯物を取り込むのを忘れたことを思い出し、取り込む為に外に出る。 洗濯物といっても、タオルや下着と替えの服くらいなので、あっという間に取り終える。 「干したままだったから、湿気てるかも」 バサバサと洗濯物を揺らし、埃を払う。何となく門の方向に視線を向ける。 「っ!」 「元気そうだな」 門の前には、カインが立っていた。 「カイン様?」 夢でも見ているのだろうか。カイン様が立っている。 リィーンはカインがいることが信じられないので、何度も瞬きを繰り返し二度見する。 「今日も暑くなりそうだな。リィーン、食事はすんだか?」 「カイン様……?」 突然の訪問者に驚き、現実を受け入れられないでいた。立ち尽くすリィーンに、気さくに声をかけながらカインは近づいてくる。 「もしまだなら、良ければ一緒に食べないか?」 「え?」 「ん?朝食を一緒に」 む…無理です。人様にお出しできるものなんてありませんっ。なんて言える訳ない。 そもそも、自分でさえ食いつなぐので精一杯なのに。どうしよう……。倒れた時に助けていただいたし、お礼はしたい。でも、何もないし……何て答えよう。 こうしてカイン様が、訪れてくれたことがたまらなく嬉しい。一人過ごしている日々が、たまらなく寂しく感じていたから━━それは、たぶん、カイン様と出会ってしまったから。 指で自分の腕をそっとつねると、痛みを感じる。これは、夢ではない。 リィーンは、動揺している気持ちを悟られないように、必死に無難な返答を考えた。 「あ、あいにく食材がなくて」 「心配ない。私もまだなので買ってきた。 リィーンが良ければ、一緒にいいだろうか?」 カインは、手に持っていたカゴを掲げる。 「中に入ってもいいか?」 カゴからは、ふんわりと美味しそうな匂いが漂ってくる。 思わずお腹が鳴りそうになる。リィーンは、鳴りませんように、と必死に心の中で唱える。 自分のことを、覚えていてくれたカイン様。その優しさが嬉しい。素直に甘えていいのかな。 リィーンは、返答に困っていた。 「今日も、日差しが強くなりそうだ。また倒れられても困る。良ければ中で話そう」 カインは、リィーンの返答を待つことなく玄関のドアを開ける。扉を支えてリィ
last updateDernière mise à jour : 2026-08-06
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12.ちょっとした変化

「……」 「……」 食事を終ると、二人はお互いにどうしたら良いか分からずに、無言で座っていた。 長い沈黙を破ったのは、カインだった。 「━━あまり、長居しても悪いな。あ、 洗い物を手伝おう」 どこかぎこちない様子で、カップを持ち、流し台へと向かうカイン。 片付けまでしてもらうのは申し訳ない。 「いえ、いえ、お客様に洗い物していただくなんて、そんな訳にはいきません、大丈夫です!後ほど洗いますので、大丈夫ですから」 慌てて自身のカップを流し台へと置きに行く。そして、カインを見送る為に、玄関へと向かっていた。 けれど、カインは「お客様か……」とボソッと呟いた後に、リィーンの背中越しに声をかける。 「今、洗いたい気分だ!」 「え?」 リィーンが振り向くと、カインがおもむろにカップを洗い始めていた。 カイン様は、意外とせっかちな方なのね。 「すみません。では、お言葉に甘えます」 リィーンは、カインが洗い終わったカップ類を拭くことにした。 「あ~リィーンは……。ゆっくりと、そ、そうだ、ゆっくりと拭くといい」 「はい?」 普段通りに拭いていたのだけれど、雑だったのかな。もう少し、ゆっくりと丁寧に拭くようにと、注意されているのだろう。 カイン様は、きれい好きなのかもしれない。私が大雑把なのかもしれないけれど。 リィーンは、いつもより丁寧に時間をかけて拭きなおす。 「そんなに急ぐ必要はない、時間は、たっぷりある」 カップ類を洗い終えたカインは、ふと家の中を見渡す。 「思ったより、何もないのだな」 一通り見渡した後、じっとリィーンを見つめる。 「カイン様?」 見つめられると、なんだか恥ずかしい。 自分の身長より、頭2つ分ほどは高い。 服の上からでも分かるくらいに、がっしりとした筋肉質な体つき、精悍な雰囲気の男性だ。 黒い髪はすっきりと短く、瞳の色は漆黒で、前世で見慣れた色なので親近感が湧く。 けれど、所々に傷跡があり、騎士として戦った傷跡なのだろうと察せられる。 平和な前世とは、違う世界なのだと改めて感じる。 それにしても、こんなに真っ直ぐに見つめられると恥ずかしいのだけどっ。 「あ、あ、あのカイン様?私の顔に何かついていますか?」 カインは、先程よりもさらに距離を詰めて近づくと、リィーンの上から下まで全身を眺めて
last updateDernière mise à jour : 2026-08-07
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13.とある男性side②

「先輩」 若い隊員が、気さくに近づいて来る。私を見て、怖がらずに接してくれる者は珍しい。 「あぁ、こっちだ」 「はい。これが、頼まれた物です。最近、おつかいが多くないですか~?」 「わるい、助かる。今度何か奢る」 後輩から荷物を受け取ると、胸ポケットにしまう。 「まぁ、いいですけど。たまには、交代しますよ?」 「いや、大丈夫だ」 「俺も、任務に加わる許可をとってあるんですけどね。まぁ、いいですけど……あ、忘れるとこでした」 軽く不貞腐れながらも、言葉を続ける様子にほっとする。人付き合いが苦手だが、この隊員のことは、多少は気に入っている。 「なんだ?」 「近いうち、会議が開かれるそうですよ」 「なんの会議だ?」 「なんでも、対象者に関することだとか俺も、詳しくは知らないですけど」 「どういうことだ?」 対象者に関することと聞いて、たまらずに後輩に詰め寄っていた。 「ちょっ、ちょっと先輩、ストップ、ストーップす、近いっすよ、恐いですって」 「うるさい、生まれつきこういう顔なんだ。いい加減慣れろ、どんな内容だ?』 「だから、詳しくは知らないんですって。本当ですって。そんなに気になるのなら、自分で確認に行ったらいいじゃないですか~?」 「━━無理だ」 「ちょっと、その間は何っすか?ほんっと、融通効かないですよね、先輩は」 「キース、少しでも何か分かったら早急に知らせてくれ」 「はぁ、分かりました。じゃ、失礼します」 「あぁ」 遠ざかる若者を見送る。 隊が縮小されて、一人になってからは、着替えや食事などの為に交代の者がやってくるようになった。 毎日来るのが煩わしくて、邪険にするようになった。そのせいで、数日に一度になり、気がつけば週に一度になってしまった。去年までは、訪れる者は、毎回違っていた。 一人で任務遂行する重責もあり、気持ちに余裕がなかったのだ。近付き難い雰囲気をだしていたのだろう。気難しいのは、自分でも分かっている。 去年あたりから、キースという若者が訪れるようになった。確か、17と言っていたか。この任務についた時の私と、同じくらいか。 キースが、次の担当になるのだろうか。 私も、年齢的にそろそろ街へ戻されるのかもしれない。昔に比べると、体力の衰えを感じる。 昔は野宿をしていたが、テントを張るようになっ
last updateDernière mise à jour : 2026-08-08
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14.嬉しい再会

誰だろう? 誰も訪れる者などいるはずないのに、ノックの音がする。 リィーンは、そっとカーテンの隙間から外の様子を窺った。が、窓からの死角に立っているようで、見えない。 コンコン、コンコン、と何度もノックの音がする。誰かも分からないのに、扉を開ける勇気は出なかった。 このまま居留守を使おうか、思い悩む。その間も、ノックの音が鳴り止むことはない。 段々と、扉を叩く音が強くなっている。 急ぎの用件なのかもしれない。でも、一体誰が?まさか、泥棒?こんな古びた家に泥棒が来るとも思えない。そもそも泥棒は、ノックなどしないか。 もしかして、留守なのか、確かめているのかもしれない。押し入るつもりかも。どうしよう……。何か武器になるようなもの、あったかな。 道に迷った人という可能性もありし……。もしかして、遂にマリアちゃんが来たのかも。でも……、ノックが強いのが気になる。 マリアちゃんのイメージ的に、違う気がする。このまま悩んでいても仕方ない。確認しよう。 リィーンは、危険を感じたら、すぐに扉を閉めようと決意する。ゆっくりと、少しだけ扉を開いたつもりだった。 が、勢いよく外側から扉を開かれてしまった。 「あっ!」 必然的に、扉に引っ張られるように外へと身体が放り出される。 突然の出来事に、思わず目を閉じる。 痛く……ない? 地面に倒れると身構えていたのに、何かゴツゴツとした感触のものに受け止められている。 この感触は、いったい何だろう?と、ペタペタと触る。まるで人の身体みたいだ。 誰かが受けとめてくれたの? 「おっと!大丈夫か? リィーン? そ、そ、そんなに触られるとくすぐったい…」 聞き慣れた声が聞こえて、おそるおそる目を開けてみる。 「カイン様?え?あ、あ、あの、これはいったい……」 リィーンは、カインに抱きつくような姿勢になっていた。恥ずかしくなり、顔中が、朱色に染まる。 あろうことか、カイン様の腹筋を触っていたなんてっ。 慌ててカインから離れようと、じたばたともがく。 「慌てなくていい」 カインは、動揺するリィーンを落ち着かせるように、ゆっくりと身体を支える。リィーンが体勢を整えるのを確認すると、そっと腕を離した。 「変わりはないか?」 「あ、ありがとうございます。え?」 「いや……先程ノックしたのに、なにも返事がな
last updateDernière mise à jour : 2026-08-09
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15.恋心

「いや、そんなに見つめられたら…ちょっ、困る!」 ふいっと顔を逸らすカイン。 カイン様の顔が少し赤くなっている? もしかして、カイン様も人見知りなのかもしれない。私も、人前で話す時にすぐに赤面していた。 人に視線を向けられるのが苦手。見られていると意識してしまって、逃げたくなる。上がり症とでもいうのか、いつも真っ赤になっていた。 今は、他人に乗り移っているような感覚がする。自分ではないみたい。だから、今なら大勢の前で、赤面せずに話せるかも。 いけない、また自分の世界に入ってしまった。 カイン様は、騎士だもの。色々な人と関わっているはず。だから、人見知りということは、ないか。顔を逸らしていたし……。 私の行動が、おかしかったのかもしれない。あの時は、意識しすぎて凝視してしまったのかも。 こちらの世界では、相手の目を見て話す習慣がないとか? 「カイン様、すみません。私、世間知らずで。先程、見つめてしまって……、気を悪くされたでしょうか?」 「あ、いや。そんなことはない。むしろ、見られて嬉しかった!あ、自分に驚いたというか…その……、いや、なんでもない!」 ん?見られて嬉しい? カイン様は、人から見られることが好きなのね、きっと。人前で話すことが得意なんだ。 もしかして、ナルシスト?では、ないか。 「そ、そうですか。それなら、良かったです。すみません、見つめながら話す癖があるようで……」 「そうなのだな…コホン。ま、まぁでも、ほどほどにした方がいい。リィーンは、若い娘なのだから。勘違いする輩が、いないとも限らない。私は、勘違いなどしないから、遠慮なく見つめてほしい」 「勘違い?そうですね。私なんかが見つめては、迷惑に思われる方もいるかもしれませんね……。すみません、気をつけます」 いけない、つい妄想ばかりしていて、相手の気持ちなど考えていなかった。 自分の行動が、相手に不快をあたえることもあるのに。 リィーンは、自然と俯く体勢となる。 すると、突然カインに肩をつかまれて、見上げる姿勢になる。 驚いて声を出すこともできなかった。 「!」 「いや、そうじゃない!好意と勘違いする輩がいるかもしれないということだ。自分を卑下してはいけない。もっと、自信を持つべきだ。 リィーンは、可愛い。 話すと大人びているギャップもまたいい。
last updateDernière mise à jour : 2026-08-10
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16.はじめての贈り物?

気まずい。どうしよう。 私から何か言うべきかな。 二人は、無言のまま立ち尽くしている。しばらくして、沈黙を破ったのはカインだった。 「その、私が今日ここへ寄ったのは、リィーンにお願いがあったからなんだ」 「お願いですか?私にできることですか?」 何だろう。頼られて嬉しい。力になれるといいけど。だって、ここから出られないという制限があるから……。迂闊に引き受けることもできない。けれど、即答で断るのも申し訳ない。 動揺するリィーンの様子に気づかずに、カインは言葉を続ける。 「あ、あぁ。リィーンに、頼みたい」 カインは、ポケットから何かを取り出した。 「これを」 差し出された物を、リィーンは無意識に受け取る。 「これは?」 「開けてみてくれ」 「私が開けてもいいんですか?」 「あぁ」 不思議に思いつつも、丁寧に包みを開封していく。 「これは!」 包みの中から出てきたのは、ハンドクリームだった。 これは、ゲームの中に出てきたアイテムだ。はやる気持ちを抑えて、容器を観察する。 やっぱり! 容器にはユリの花のモチーフと、“riri” という文字が刻印されている。 ユリのリリー(Lily) ではなく、ririと記されているのには理由がある。 このハンドクリームは、手が荒れているマリアちゃんの為に、シリルが特別に魔力を込めて調合したもの。 手荒れ防止効果と、荒れてしまった肌を改善する治癒効果もある。チートなハンドクリームなのだ。 愛を込めて、Maria とCiril の共通の文字の「ri」 をもじってつけたもの。 マリアちゃんが別ルートに入った時も、シリルは、このアイテムをこっそりと届けていた。 このアイテムを魔法で、ウサギの形の雲に変えて、マリアちゃんの部屋へと飛ばしたりしていた。その健気な行動のシーンが、切なくて。別ルートに入っているから、無自覚にシリルを傷つけるのだけれど。まさか実物を見られるなんて、感慨深い。 あまりにも効果がすごいので、マリアちゃんが多くの人へと普及させたいと望んだのだ。もう、マリアちゃん、一歩間違えば悪女だよ。このハンドクリームには、シリルの無類の愛情が込められているのに。無自覚って残酷。 ハンドクリームを手に持ち、物思いにふけるリィーン。 「実は、知り合い、そう、し、知り合いに、頼まれたんだ
last updateDernière mise à jour : 2026-08-11
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17.罠にかかったのはうさぎ?

翌日。 リィーンは、いつも通りに朝から洗濯物を干していた。 今日は、パンが届く日だ。カイン様も来ると言われていたから、そわそわして落ち着かない。 リィーンは、一通り家事を済ませると、カゴを回収しに行く。大事に抱えて家へと戻る。はやる気持ちを落ち着かせるように、軽く深呼吸をする。 今日は、どんな種類のパンが入っているのかなぁ。 ウキウキとした気分で、カゴに被せてある布を丁寧にめくる。布を持ち上げた拍子に、パサリと何かが床に落ちた。 何? リィーンは、落ちた紙を拾いあげる。メモが書かれていた。 「白いパンから食べるように」と、記されていた。裏も確認したけれど、他にメッセージや差出人の名前はない。 白いパンが入っているのかな。 リィーンは、カゴの中身を確認する。 こんなに沢山! いつも以上に様々な種類のパンが入っていた。その中に、白いパンがある。 「イングリッシュマフィンみたい」 白いパン生地に、レタスや目玉焼き、フィッシュフライがサンドしてあった。 傷みやすいものから、早めに食べるようにと注意なのかな。メモなんて初めてだ。 どうして最近は、以前とは比べ物にならないくらいに豪華なんだろう。 配達に来る人が、交代したのかな。 長期間パンを届けてくれているから、配達する人も年を取っているはず。 手紙をカゴに入れてみたら良かったんだ。こんな簡単なことを、どうして気づかなかったんだろう。直接交流する手段なのに。 メモを残してくれたから、親切な人……なのかな……? 単純に喜んでいいのか分からない。 最近頻繁にパンが届くようになったのも気になる。安心させて、そのうちに…? ううん、悪い方向に考えるのはやめよう。 今まで、殺そうと思えば、いつでもできたはず。毒を入れたり、パンを届けなかったら、いずれ餓死してしまうもの。 もしかして、何かの実験をされているとか……? 何かの成分を、長期間摂取した場合の観察とか?パン生地に何か入れられていても気づかない。ま、まさかね。そんなこと誰がするのよ。 そういう場合は、もっと設備の整った施設で行われるはず。こんな誰もいない小屋みたいな家に、放置したりしないはず。 あっ、そういえばあの時……。 外に出ようとした時に、誰かに口を塞がれて、小屋に連れ戻された。 その時の恐怖が蘇り、血の気が引いて
last updateDernière mise à jour : 2026-08-12
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18.魔物?精霊?妖精?ウサギ?

ウサギは、家の中に入ると椅子へ飛び乗る。 「ふーん、随分殺風景な家だな。ソファーもないのか。おい、娘、ここにセシリアがいるはずなんだが……」 「もう、ウサギさん、怪我しているのに歩くの速いよ。セシリア?マリアの間違いじゃない?マリアちゃんなら、まだ来てないけど、いずれ来ると思う。それよりも、怪我の手当てをするね」 リィーンは、昨日カインからもらったハンドクリームをウサギの怪我の箇所に塗っていく。すると、みるみる怪我が回復した。 「このくらいの怪我など、すぐに治る。な⁉︎ 娘、何をした?お前は魔法が使えるのか?だが、魔力が感じられないが……」 ウサギはジロジロとリィーンを観察する。 「ウサギさんの目って、本当に赤いのね。この世界のウサギさんだからかな。なんだか宝石みたいね。綺麗」 「な⁉︎」 「ふふふ、どうしたの?うさぎさん、もしかして照れてる?」 「照れてなどいない。それに私はウサギではない。名前がある。アレ……。いや、私の名前のことはいい。それよりも、セシリアはいないのか?お前はここに住んでいるのか?名前は?」 「セシリア?という人は知らない。そうだよ、私はここに住んでる。名前はリィーン」 「⁉︎」 「ちょ、ウサギさん、どうしたの、やめて、くすぐったい」 ウサギは、リィーンに慈しむような眼差しを向ける。椅子から降りると、リィーンの足元を旋回し、ベタベタと触る。 「リィーン……本当にリィーンなのか……なぜ、魔力が消えている。でも、かすかに感じる。この感じは、あの時感じたものだ。リィーン……こんなに大きくなって……それにセシリアは……」 「ウサギさん、もしかして私のことを知っているの?」 「あぁ……お前は……私の娘だ」 「………。そっかぁ、じゃあ、私はウサギから人間に進化したんだね。ふふ、面白いウサギさん」 「信じてないな⁉︎ 私はウサギではない。私は……、この姿では説得力がないな。いずれ、話そう」 ウサギは、自身の両手を確認した後、気落ちして黙り込む。 「リィーン、お前の母親はどうした?」 「母は……、分からない。気がついたら、一人で暮らしていたから。あ、でも、食べ物の心配はいらないからね。パンだったらあるから。ウサギさんは草を食べるんだっけ?だから、話し相手として、いてくれると嬉しいんだけど……」 「……分からない?ど
last updateDernière mise à jour : 2026-08-13
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19.脱出③

いつの間にか季節は移り変わり、肌寒くなってきた 「寒い……。お腹すいた……」 あれから、どれくらい経つのだろう。 ある日を境に、パッタリとパンが届かなくなったのだ。 一週間後には届くかもしれないと、期待していたけれど届かない。 最近は、三食食べることに慣れてしまっていた。平和ボケしていた自分が恨めしい。 こういう時の為に備えて、保存してるパンがある。その固いパンを食べて、なんとか食い繋いでいる。 「ウサギさん……」 ウサギは、調べたいことがあると言い残し、姿を消した。 「話し相手になってくれると言ったのに……裏切り者。まぁ、ここに閉じ込める訳にもいかないし。どこかで元気でいてくれるといいな。また会えるといいな」 このままだと、餓死するかもしれない。 羞恥を捨てて、カイン様に食料をお願いしよう、と思ったのだけど、カイン様も来られない。また一人になってしまった。ハンドクリームの件も、中途半端な状態だし。突然、来られなくなったのは、どうしてだろう。私には、カイン様以外頼れる人はいない。 ふらつく体を奮い立たせ、立ち上がった。 水だけで、どれくらいの期間生きられるのか。私は、本当にこのまま……。 このまま死ぬのは、嫌。やれるだけ試してみよう。 カイン様に、助けを求めよう。 もしかして、カイン様の身に何かあったのかもしれない。カイン様と知り合ったから、ゲームの強制力が作動したのかもしれない。 もしも、カイン様の身に危険が及んだらと思うと、耐えられない。 カイン様の顔を思い浮かべると、胸が締め付けられる。 カイン様……会いたい。 どうか、無事でありますように。 私なんかを気にかけてくれて、頻繁に訪れてくれるのが嬉しかった。 毎回、とても楽しみにしていた。 自分の心には、蓋をしたつもりだったけど……。やっぱり、私は、カイン様に惹かれている。 リィーンは、脱出を決意すると、勢いよく玄関を飛び出した。 思い立ってからは、行動に移すのもはやかった。手際よく小石を拾い集めてくると、門の所で息を整える。 前回の失敗を振り返り、考察してみる。 罠の回避は成功していた。だけど、その後に矢が飛んできた。そして、後ろから襲われた。 周囲に対する警戒が、足りなかった。 矢を避けることは、無理だと思う。 今は、ただでさえ空腹で体力もないし、
last updateDernière mise à jour : 2026-08-14
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