なぜか軟禁されていました〜雑な設定の脇役に転生したら、年の離れた騎士様に執着されました〜

なぜか軟禁されていました〜雑な設定の脇役に転生したら、年の離れた騎士様に執着されました〜

last updateHuling Na-update : 2026-08-13
By:  涙乃In-update ngayon lang
Language: Japanese
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物心ついた時には既に軟禁されていたリィーン。 なぜ、ここにいなければならないのかも分からず、ただ毎日を過ごしていた。 ある時、前世の記憶が蘇り、自分が乙女ゲーム「君のために」の脇役に転生していることに気づく。脱出を試みるものの、ゲームの強制力によって逃げ出せない。 そんなある時、偶然通りがかった中年の騎士カインとの出会いから、リィーンの閉ざされた世界が、広がっていく。 いつしか、カインの訪れを心待ちにするようになるリィーン。 だが、カインにはとある事情があった一一。

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Kabanata 1

1.プロローグ

「セシー?セシリア?顔色が悪い。大丈夫か?」

「大丈夫です……」

王城の一室で、ソファーに隣り合わせで座っている魔族と人間。その寄り添う姿から、二人は深い絆で結ばれているのが伝わってくる。

「セシー、君も薄々気づいていると思うが、君のお腹の中には私達の子が宿っている。セシー、ありがとう。私達の子供だ」

「アレク様……」

「どうした?浮かない顔をしている。もしかして……後悔しているのか?もしそうだとしても、すまない。離すことはできない」

窓から柔らかな風が入り込む。長く美しい髪がサラサラと揺れる。血のように赤い瞳、不気味だと忌み嫌われる魔族。その特徴を濃く持つ魔族のアレクセイ。

セシリアは、アレクセイに恋してしまった。人間と魔族が結ばれるなど言語道断。侯爵令嬢であるセシリアは、家族の反対を押し切り、逃げるように駆け落ちしたのだ。

妊娠?私のお腹の中に赤ちゃんがいるの?

セシリアは、そっと腹部に手を当てる。

「嬉しい……。でも、不安です。この子は、受け入れてもらえるでしょうか」

人間と魔族のハーフ。このまま、魔族が暮らすこの国で生きていけるだろうか。

「この子は、魔力が強い。まだ妊娠初期なのに、ここまで感じ取れるのは異例だ。きっと大丈夫だ」

「ふふ、アレク様がそうおっしゃるのなら、安心です。っ!」

ぐらりと視界が揺れる。

どうしたのかしら。

「セシリア!セシリア!誰か!おい、すぐに医者を!」

「どうされたのですか?王妃様‼︎ すぐに医者を呼んで参ります」

だめだ……。力が入らない。

「陛下、魔力が強すぎて王妃様の身体に影響がでております。つわりの症状とも違います。このままでは王妃様の命の危険にも繋がりかねません」

「なんだとっ‼︎ セシー、なんとしてでも助ける……」

「恐れながら申しあげます生まれ育った人間の国へ、連れて行かれた方がいいかと思われます。魔力の強い子は意図せず、母体を傷つけることがあります。周囲に魔力の強い者が多いここにいては、魔力が暴走しかねません」

「だが……」

アレクセイは、ベッドに横たわる血の気の失せたセシリアを見つめ、言葉に詰まる。

「ごめん……なさい……迷惑かけて……」

「セシリア……愛してる……」

私もよ。アレク。

だからこそ、あなたとの子どもである、この子を産みたいの。

もし、国に帰ったら、この子の力を利用しようとする者が現れるかもしれない。

守らなければ。

「産まれるまで、一緒にいる」

「陛下!なりません。王妃様と駆け落ちしたことが知られれば、戦争になりかねません。どうか軽率な行動はお控えください。王妃様は一一なのですから」

「分かっているが……」

「大丈夫よアレク……心配しないで」

「どうにかして、人間の王に話をつける。産まれたらすぐに連れ帰る。それまで待っててくれ」

待ってる。

私の決断は正しかったのかしら。

きっと過去に戻れたとしても、私はあなたに恋をする。後悔はしていないわ。でも、一つ心残りがあるとすれば、アレクとこの子と一緒に暮らしたかった……。

ねぇ、一一ン、こんな私を許してくれるかしら。どうか、幸せになって。あなたの幸せが、私達の希望なのだから。

✴︎ ✴︎ ✴︎

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18 Kabanata
1.プロローグ
「セシー?セシリア?顔色が悪い。大丈夫か?」 「大丈夫です……」 王城の一室で、ソファーに隣り合わせで座っている魔族と人間。その寄り添う姿から、二人は深い絆で結ばれているのが伝わってくる。 「セシー、君も薄々気づいていると思うが、君のお腹の中には私達の子が宿っている。セシー、ありがとう。私達の子供だ」 「アレク様……」 「どうした?浮かない顔をしている。もしかして……後悔しているのか?もしそうだとしても、すまない。離すことはできない」 窓から柔らかな風が入り込む。長く美しい髪がサラサラと揺れる。血のように赤い瞳、不気味だと忌み嫌われる魔族。その特徴を濃く持つ魔族のアレクセイ。 セシリアは、アレクセイに恋してしまった。人間と魔族が結ばれるなど言語道断。侯爵令嬢であるセシリアは、家族の反対を押し切り、逃げるように駆け落ちしたのだ。 妊娠?私のお腹の中に赤ちゃんがいるの? セシリアは、そっと腹部に手を当てる。 「嬉しい……。でも、不安です。この子は、受け入れてもらえるでしょうか」 人間と魔族のハーフ。このまま、魔族が暮らすこの国で生きていけるだろうか。 「この子は、魔力が強い。まだ妊娠初期なのに、ここまで感じ取れるのは異例だ。きっと大丈夫だ」 「ふふ、アレク様がそうおっしゃるのなら、安心です。っ!」 ぐらりと視界が揺れる。 どうしたのかしら。 「セシリア!セシリア!誰か!おい、すぐに医者を!」 「どうされたのですか?王妃様‼︎ すぐに医者を呼んで参ります」 だめだ……。力が入らない。 「陛下、魔力が強すぎて王妃様の身体に影響がでております。つわりの症状とも違います。このままでは王妃様の命の危険にも繋がりかねません」 「なんだとっ‼︎ セシー、なんとしてでも助ける……」 「恐れながら申しあげます生まれ育った人間の国へ、連れて行かれた方がいいかと思われます。魔力の強い子は意図せず、母体を傷つけることがあります。周囲に魔力の強い者が多いここにいては、魔力が暴走しかねません」 「だが……」 アレクセイは、ベッドに横たわる血の気の失せたセシリアを見つめ、言葉に詰まる。 「ごめん……なさい……迷惑かけて……」 「セシリア……愛してる……」 私もよ。アレク。 だからこそ、あなたとの子どもである、この子を産みたいの。 もし、国に帰
last updateHuling Na-update : 2026-07-30
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2.軟禁されていました
ルナリア王国の外れに、ひっそりと佇む家がある。森の奥深くにあるこの家には、一人の女性が住んでいた。 また一日が始まる。 ただ、過ごすだけの日々。 私の存在に、なんの意味があるのだろうか。 物心ついた頃には、ここで一人で暮らしていた。 リィーン 幼い頃、誰かにそう呼ばれていた気がする。 今は、誰からも呼ばれることはないけれど。 多分、それが私の名前だと思う。 幼い頃は、誰かと暮らしていた気がする。いつ頃一人になってしまったのか、どうしてその誰かがいなくなってしまったのか、その辺りの記憶は曖昧だった。思い出そうとしても、頭の中にモヤがかかった感じがして、どうしても分からなかった。 まるで、無理矢理忘れようとしたみたいに……。 悲しい記憶の予感がするので、過去を振り返ることは放棄している。 家の周囲を見渡しても、目に入るのは木ばかり。 いったいここがどこなのかも、今日がいつなのかも分からない。 この状態で育っていたら、普通なら平静ではいられないと思う。 でも、私は何となく自分の状況を把握している。 ここは、前世で流行った乙女ゲームの世界だと思うから。 先日、偶然どこからか飛ばされてきたビラを見つけた。 こんな所まで飛ばされてくるなんて、珍しい。 ふと手に取ると、書かれている内容に目が釘付けになる。 そのビラの内容は、この国の第一王子レオナルドの婚約発表だった。 「っ!」 その瞬間、頭にガツンと大きな衝撃を受けたようだった。 まるで走馬灯のように、頭の中を色々な情報が駆け巡っていく。 これは……前世の記憶? そうか、ここは、君のためにの世界だ。 乙女ゲーム「君のために全てを捧げたい」 通称「君のために」 題名の通り、ヒロインの為にとにかく周囲が尽くし溺愛するというゲームだ。 ヒロインは、少し傾きかけた貴族の娘マリア。 庇護欲をかきたてるヒロインで、とにかくいい娘。 対する悪役令嬢ポジションは攻略対象の婚約者エリザベス。 父親の権力を駆使して婚約者の座に収まっていた。 エリザベスは、甘やかされて育ったせいか、とてもわがままな令嬢だった。ヒロインを陰でいじめまくっていた。 事あるごとに、マリア嬢を罵倒し、取り巻きと思われる令嬢達と嫌がらせを繰り返していた。 ところが、偶然その現場を攻略対象
last updateHuling Na-update : 2026-07-30
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3.脱出①
部屋に置かれた鏡の前に立ち、そこに映る自分の姿を眺める。 手入れされていないブラウンの髪、頬には少しそばかすがあり、着古した水色のワンピースを着ている娘が映っていた。痩せているせいか暗い雰囲気が漂っていた。 「もったいない……笑うとかわいいのに」 口角を上げて、ニコリと微笑む。先程の能面のような表情とは違い、随分人間らしく見える。 「いたた……」 リィーンは、頬を軽く両手で撫でる。長年無表情で過ごしたつけであろう。少し口角を動かすだけで、違和感がある。 「これからは、もっと笑顔で過ごそう」 前世の私は、美人ではなかったと思う。 地味な眼鏡をかけて、いつも黒髪をひとつに束ねていた。 今は、眼鏡をかけなくても見えることは嬉しい。耳が痛くなったりしないし、眼鏡が曇って見えにくくなることもないし、ストレスフリーだ。 鏡を見ると、どうしても違和感を覚える。記憶の中の前世の自分の姿と、今の自分の姿が重ならなくて。 リィーンは、今の自分の姿を目に焼き付けるように、鏡を凝視していた。 思い返すと、随分グレーな会社だった。毎日残業は当たり前だった。なのに、残業代は微々たるもの。サービス残業は美徳だとされていた。頭の固い上司が、幅を利かせていたのも原因の一つ。会社の為に尽くすのは当然だと。昔はこうだった、俺達の時代はこうだった、と。延々と続く過去話。リモートで作業出来る案件も、出社を強要させられる。要するに、やり方が分からないのだ。散々過去の栄光を自慢しているが、結局は過去の遺物。けれど、認めたくない。要するに扱いにくいお荷物の上司を押し付けられた部署だった。 あの日も、残業で疲れ切っていた。朝早く出社し、夜遅くに自宅に帰る日々が続いていた。終電に乗る為に急いで駅へ向かう途中、強い衝撃があった事は覚えている。 間近でブレーキ音が聞こえた気がする。 あの時、車にはねられたんだ。そして……死んでしまったんだ。 せっかくの二度目の人生。今度こそ有意義に生きたい。上司の顔色を伺ったり、忖度して自分の意見を押し殺したりしなくてもいいんだもの。自分らしくありたい。 記憶を思い出す前の私は、おしとやかだったと思う。 おそらく週に1度。門にパンの入ったカゴが届けられる。毎日三食食べるには足りない量。少しづつ食べて過ごしてきた。 あのパンは、一体誰が届けてくれてい
last updateHuling Na-update : 2026-07-30
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4.脱出②
パンは、ほとんどカゴに詰めて持ち出していた。あの時落としてしまったこともあり、とても拾って食べられる状態ではなかった。家に残っていたパンは少なく、少しづつ食べていたけれど、あっという間になくなってしまった。次にパンが届けられる日まで、気が気じゃなかった。何もしなくてもお腹は減る。空腹をごまかす為に、井戸水を飲んで過ごした。パンが届けられた時は、心底安心した。このまま餓死するのではないかと不安だったから。本当に救われた。やはり、こんな生活は耐えられない。脱出するしかない。リィーンは、小石を拾い集めてカゴに詰めた。外へ出ると、門の所で立ち止まる。「この間の罠は、この辺だったよね……。なくなってる」不思議なことにこの間の罠が消えている。リィーンは、目処をつけた箇所に小石を投げる。すると、小石が落ちた地面がほんのりと光ったかと思うと、突如罠が現れた。「っ!」ガシャンと金属音が響く。しばらく警戒しつつ眺めていると、地面に吸い込まれるように罠が消えていった。「魔法?魔道具なの……?」ルナリア王国は、魔法が存在する。魔道具と呼ばれる魔力を込めた道具も存在する。あまりゲームには直接的な描写はなかった。「私も魔法が使えたらいいのに……」リィーンは、試しに様々なゲームの呪文を唱えたり、手を振りかざしたりしてみる。けれど、何の変化も見られなかった。「まぁ、そうだよね……。脇役だもんね……」急に羞恥心に襲われて、顔中が真っ赤になる。ふるふると首を振り、忘れようと試みる。「地道に進んでいこう!」リィーンは、覚悟を決めると小石を地面に投げる。小石で罠の場所を確認して、避けながら進んでいくつもりだった。どこに罠があるのか分からないから。ガシャン、ガシャン、ガシャンと金属音が連続で響く。罠が現れている時に、急いで避けながら進んで行く。「この調子で進んで行けば大丈夫」ある程度の距離を進むと、罠が仕掛けられていなかった。「もう、石は必要ないかな」カゴに残っていた小石を前方にばら撒く。何の変化もないことにホッと胸を撫で下ろす。意気揚々と進もうとした時だった。突然、目の前を何かが横切る。ヒュッと風を切る音が聞こえた。早すぎてわからなかった。おそるおそる何かが飛んでいった方を向く。「ヒィッ!」恐怖から思わず変な声が漏れる。木には矢が突き刺さっていた。
last updateHuling Na-update : 2026-07-30
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5.訪問者
リィーンは、洗濯物を干し、掃除を終えると、あのビラを探すことにした。確か、捨てずに取ってあったと思うのだけど……。ゴミ捨て場は、家の裏にある。ゴミはいつの間にかなくなっている。おそらくこれも魔道具なのだろう。まぁ、ゴミ捨てと言っても、普段は掃除して出たほこりくらいだ。ゴミ捨て場より先に進めるか試したけれど、こちらも罠が仕掛けられていた。前回のこともあるから、強行突破は諦めた。「あった!」リィーンは、引き出しの奥に目的のビラを発見して思わず声を上げる。ビラを取り出し皺を伸ばすと、改めて記事の内容を確認する。「えっと……、兼ねてより愛を育んでいたレオン殿下とマリア嬢……」記事には、二人の婚約発表について書かれていた。無事にシナリオ通りに婚約したのね。このビラを発見してから、どれくらい経ったのだろう。よく覚えていない。う~ん……。ゲームのシナリオ通りなら、これからマリア嬢が、私を見つけてくれるのよね?ん?待って。そもそも、どうやってこの家に辿り着くの?家の周囲には、罠があるのに……。近づけなくない?ヒロインには、罠が発動しない……とか?ヒロイン補正というやつね。きっと、そうよ。でも、もしも……万が一ヒロイン補正が発動しなかったら?マリア嬢が罠で怪我をしてしまう。もちろん罠を仕掛けたのは、私ではないけれど。家の周囲にあるのだもの。必然的に私が犯人だと疑われるよね……。もしそうなったら、マリア嬢を溺愛するレオン殿下から、私、殺されるかも……。それは困る!そんなのは嫌。それに、あの天使のようなマリアちゃんが怪我するかもしれないなんて、耐えられない。「どうしたらいい?」リィーンは悩んだ末に、マリア嬢が来ないか、外に立ち監視することにした。それこそ、まるでかかしのように、ひたすら立っていた。マリア嬢がやって来たら、罠があることを伝えるべく。他に妙案が浮かばなかったのだ。家の中にいては、気づかないかもしれないから。それからは、天候に関係なく外に立つのが日課になった。おかげで、日焼けして肌が荒れた。ただでさえ、そばかすが気になるのに……。肉体はまだ若いのに。「はぁ……。誰もいないから、独り言が増えるんだよね」リィーンは、記事の内容を思い返していた。記事には、レオン殿下とマリア嬢の姿絵も描かれていた。整った顔立ちのレオン殿下と、遠慮が
last updateHuling Na-update : 2026-07-31
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6.とある男性side①
この任務についてどれくらい経つだろう。 もうすぐ17年か。 入隊して最初の任務が、とある対象者達を監視することだった。 私も若く、先輩達と行動を共にした日々が懐かしい。 いつの間にか隊は縮小されて、気がつけば私1人となっていた。毎日、森の中に住む者達を監視すること。それが与えられた任務だった。 対象者達に気づかれぬこと、決して対象者達を逃さぬこと、決して殺さぬこと。 食事は、パンを週に一度届けるきまりになっている。早朝気づかれぬように門のところに。 木の影に隠れたり、木の上から見張ったり、ずっと私は彼女を見てきた。 そういう私は、今年35になる。 18からずっと彼女を見てきた。彼女は17になるのか。母親が亡くなり、彼女1人になった時は会議が開かれたようだ。 報せを待つ間も私達は監視を続けた。泣き暮れていた彼女も、日が経つにつれて、泣くこともなくなり、大人しく軟禁生活を送っていた。母親の亡骸は、弔い丁重に埋葬したと聞く。 幼い彼女は、覚えていないだろうが……。 リィーン……。 幼くして一人で過ごす彼女に、何度声をかけようと思ったことか……。 本当に大きくなった。この感情は、なんなのか。 毎日変わらぬ日々の中で、ある日を境に彼女に変化が現れた。 大人しい彼女に何があったのか。 門を出ようとした時は、焦った。 石を投げてカゴに命中させたものの、罠の発動に驚いたようだった。 森の中まで出てきた時には、心臓が止まるかと思った。 彼女は、石で罠を確認しているようだったが……。あの先には、手足を麻痺させる毒草が生い茂っている。 それ以上進めさせたくなくて、弓矢で合図したつもりだったが……。姿を見られる訳に行かないので、手荒なことをしてしまった。 一生の不覚。 どうしてこうも彼女が気になるのか。対象者だからか。 監視している私は、彼女に恨まれることはあれ、決して許されることはないだろう。 彼女を一生見守ることで、少しは罪の償いになるだろうか。 リィーン。 決して触れることはないと思っていたのに……。 倒れた姿を見た時は、何も考えられずに、咄嗟に飛び出していた。 気がついたら、真っ青な顔をしている彼女に水を与えていた。 抱き上げたその体はとても軽くて、壊れてしまいそうだった。 食事がパンだけなど、どうかしている。 自分
last updateHuling Na-update : 2026-08-01
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7.訪問者②
不思議な夢を見た。誰かが出てくる不思議な夢。この家に誰かが来ることなんてないのに。 夢の中でも、人の姿を見たのはいつぶりだろう? いくら寂しいからって、夢に出てくるのが中年の男性なんて、どうかしている。 前世ではアラサーだったから、記憶が混乱しているのかもしれない。 今の私は何歳なのだろう?たぶん20代にはなってないんじゃないかな。手入れしてないけど、肌にハリもあるし、見るからに若いし。 それにしても、引き締まった体だったな。 かなり鍛えている人だろう。夢に見るくらいだから、潜在意識の中で筋肉質な人が好きなのかな。 元々年上の人が好きだし、実際にあんな人と出会えたら……。何考えてるんだろ私。 こんな年下は、相手にもされないだろうな。中身は、年齢近いんだけどなぁ。 人恋しいのか欲求不満なのかな、また夢の中で出会えるといいな。 「ふふふっ」 リィーンは、思い出し笑いをしながら、寝返りをうった。そして、ゆっくりと目を開けると、目の前の人物を見て心臓が止まりそうになる。 「え⁉︎」 夢に出てきた男性が、ベッド傍の椅子に腰掛けていたのだ。 「いい夢でも見たのか?」 「えっ⁉︎ あ⁉︎ だ⁉︎」 あまりの驚きで、誰ですか?という言葉もでてこない。奇声を発するおかしな人と化していた。そんなリィーンの様子を気遣うように、男性は優しく言葉を続ける。 「昨日より顔色がいいが、まだ起き上がらない方がいい」 男性は微笑みながら、布団を整えリィーンに掛ける。リィーンは頭の中が混乱していた。 いったいどうして夢で見た人が、目の前にいるのだろう? 考えても答えが出るはずがなく、無言で見つめることしかできない。 先程から、ずっと心臓がドキドキしている。驚きによるものなのか、緊張によるものなのか、嬉しさによるものなのか、自分でも分からない。 戸惑うリィーンの様子を見て、男性は申し訳なさそうに話し始める。 「あ~、勝手をしてすまない。私は、その、たまたま通りがかった時に、リィ……、 いや、その、倒れているあなたを見つけて。失礼とは思ったが、運ばせてもらった。一人では心配だったので。わ、私は決して怪しいものではない!いや、十分怪しいな…私の名はカイン。カインと呼んでくれ。リィ、あ、あなたの名前は?」 しどろもどろに語るカインの様子を見て、少し訝しむリィ
last updateHuling Na-update : 2026-08-02
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8.訪問者③
「カイン様。あの、私を助けて下さった時に、どこか怪我などされなかったでしょうか? なにぶん古い家で……」 リィーンは、カインが家の周囲にある罠で怪我をしていないのかが気がかりだった。 ここに軟禁されているなんて、とても言えない。軟禁って、ひくよね……。 「怪我?いや、なんともない」 カインは、リィーンの質問の意図を汲み取ろうと考えを巡らす。 (怪我? そうか、罠のことだな⁉︎ 私の怪我の心配をしてくれるのか?リィーン、あなたは、なんて優しい人なんだ。すまない……心配無用だ。罠の場所は、把握してある。それに……) カインは、逡巡した後に口を開く。 「リィーン、今はこんなラフな格好をしているから、不安にさせていると思う。だが、一応これでも騎士団の治安部隊に所属している。人々の治安を守るのが仕事だ。良ければ、回復するまでここにいさせてもらえないだろうか?もちろん、夜は外で寝る。その、女性の一人暮らしは心細いと思い……」 「どうして私が一人暮らしだと?」 (しまった!つい気が緩んでしまった。なんとか誤魔化せねば) カインは、うっかり口を滑らせてしまったことを後悔する。しどろもどろになりながら、誤魔化すように早口で続ける。 「リィーンが昨日倒れてから、い、いままで誰も帰ってこなかったから。多分、おそらく、一人暮らしでは?と、そ、そう思ったが……違ったのか? べ、別にリィーンが一人暮らしだからといって不埒なことなど決してしない‼︎ 約束する! 不安ならば、寝る時は私を、縛ってくれてもいい!あ、縛られたら護衛できないか……でも、リィーンが安心するら縛られても……」 ごにょごにょと言い淀んでいたので、最後の言葉は聞き取れなかった。 けれど、カインの慌てた様子や、必死に弁解する姿を見て、リィーンの緊張の糸が解れていった。 黙っていると威圧感のある人なのに、中身はどこかかわいく思える。 この人は、きっと悪い人ではない。 「ふふっ、私なんかがそんな心配なんてしていません。訳あって、一人で暮らしていますが、助けなど必要ありません。お気遣いありがとうございます」 突然マリア嬢が来るかもしれない。それに、ゲームの強制力がどの程度か分からない。カイン様を巻き込んで、危険な目にあわせたくない。どうか、このまま穏便に帰られますように。 リィーンは祈るような気
last updateHuling Na-update : 2026-08-03
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9.母の記憶
「あつーい」 リィーンは、ベッドの上でゴロゴロと左右に転がるように寝返りを何度もうっていた。 寝汗をかいていて、背中が湿っている。 「気持ちわるい」 ずっと横になっていたので、倦怠感はなくなっていた。体調が回復してきたら、今度は暑くて寝苦しい。せめて、半袖の服が欲しいかも。 リィーンの服は2着共に長袖だった。 袖口を折りたたみ捲りあげているけれど、通気性が悪い。 まぁ、冬のことを考えると仕方ないんだけれど……。ダメだ、もう我慢できない。汗ばんだ体が、妙に気持ち悪い。シャワー浴びたい!もちろん、この家にシャワーなどない。浴室にバスタブらしき、大きな桶がある。その桶に水を溜めて体を洗うのだ。冬場はお湯を沸かして、温度調整している。 小さな暖炉があるので、薪を入れて魔道具で火をつけている。鍋に水を入れて火の上にかけれるようになっているのだ。キャンプに使うはんごうみたいな感じだ。 今の時期は、水浴びが気持ちいい季節。 リィーンは、重い身体を起こして、井戸から水を汲むために外へ出た。 バケツに水を汲んで、浴室の大きな桶に水を移す。恐ろしいほどに時間のかかる地道な作業だ。 「よいしょっ、よいしょっ、えい!」 水の入ったバケツをゆっくりと浴室に運ぶと、勢いよく桶へ流し込む。 何往復したのか分からない。同じ作業を延々と繰り返した。 「もう、これくらいの量で大丈夫かな」 ある程度桶に水が溜まると、今度はもう一つの桶にも同様に水を入れる。一つの桶は、身体を洗う用。もう一つの桶は、体を洗った後に入る用。元日本人だもの。シャワーより浴槽に浸かりたい。 この作業は体力がいる。何とか二つの桶に水を貯め終えると、リィーンは衣服を脱いで水に浸かる。 「はぁ、気持ちいい」 久々の入浴だった。石鹸で全身を綺麗に洗う。流し終えてスッキリすると、もう一つの桶に入った。 石鹸など生活に必要なものは大量にある。 「そうだ、ついでに服も洗おう」 リィーンは、先程着ていた服を洗うことにした。浴室に置いてある洗濯用の桶に入れて、手洗いをする。 「洗濯機欲しいなぁ。きっと魔道具があるんだろうな。ここを出たら、いつか買えるといいな」 服を洗い終えると、ひとまず水気を絞る。 後で干そう。 リィーンは再び桶に浸かった。 「気持ちいい」 前世では、自宅に帰るとシャワー
last updateHuling Na-update : 2026-08-04
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10.攻略対象は
部屋に戻ると、リィーンはゲームの内容を振り返ることにした。 現在ヒロインのマリアちゃんは、ここルナリア王国の第一王子レオナルドと婚約している。つまり、レオナルドルートのendを迎えようとしている。 ゲーム「キミのために」の攻略対象は全部で四人。 第一王子のレオナルド、最年少で魔術師団長になった伯爵家のシリル、騎士団の侯爵家の次男のトール、それと隠しキャラの……。誰だったかなぁ、名前が思い出せない。 人間ではなかったような……、確か魔族だったような気がする。 隠しキャラは、縛りがあって解放できていなかったんだよね。 ちょっと待って。ここって人間以外も存在する世界だった。私、こんな所にいて大丈夫なのかな……。襲われたりしないよね。 戦争のエピソードとかは、なかったはず。 王道のレオナルドルートに進んでいるから、もうすぐ解放されるはず。だから、大丈夫。 せっかくだから、攻略対象に会ってみたいけど、誰に一番会いたいんだろう。特に誰が推しとかではなくて、それぞれ好きだったなぁ。 現実では、恋愛に縁のないいわゆる喪女だった。仮想の乙女ゲームの世界で擬似恋愛できるのが幸せだった。 せっかくゲームの世界にいるのに、脇役だしなぁ。断罪も終わっている時期だし、攻略対象との接点はないな。 レオナルドとマリアちゃんには会えるよね。ゲームのスチルをリアルに見る機会があるかも。 リィーンは回想を中断すると、部屋の中を物色する。もしかしたら、身元がわかる母の持ち物や、日記のようなものがあるかもしれない。淡い期待を抱きながら手がかりを探した。 「これは?」 本棚にある分厚い本が気になって、取り出す。埃を軽く払うと、ページをパラパラとめくってみる。 文字がびっしりと書かれていて、子供向けの本ではなさそうだ。 不思議なことに、文字は難なく読むことが出来た。誰かに教わった記憶はない。ゲームの力なのかもしれない。 なんとなく気になったページで止める。リィーンは、書かれている文字を声に出して読み始める。 「遥か昔、ルナリア王国は混乱の渦中にあった。魔族と人間との間に戦争が勃発。 圧倒的な力を持つ魔物により、人間の大量虐殺が行われ、ルナリア王国は滅びようとしていた。 そんな時、光の膜がデルム王国を覆った。 まるでオーロラのように輝く光の膜が、国全体を守るように広が
last updateHuling Na-update : 2026-08-05
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