あの頃の蒼真の瞳は、雪のように澄み切っていた。私はかつて、彼を愛していた。自分のすべてを懸けて、彼を愛していた。蒼真は声を詰まらせた。「すまなかった……本当に……すまなかった」私は彼をじっと見つめた。長い、長い時間。それから、静かに口を開いた。「蒼真、あなたが謝るべきなのは今の私じゃないわ。かつて、心の底からあなたを信じていた私よ」彼の目から涙がこぼれ落ちた。けれど、私はもう彼を見ることはなかった。きびすを返して裁判所を後にしたとき、降り注ぐ陽射しが痛いほど目に刺さった。階段を下りきったところで、私はふいにしゃがみ込んでしまった。九条弁護士が驚いて声をかけてくる。「望月さん?」私は手を振って制した。「大丈夫です」けれど、涙はすでに床に落ちていた。一滴。二滴。あっという間に、足元の地面を小さく濡らしていく。私が泣いているのは、蒼真のためじゃない。23歳の私のために泣いているのだ。努力さえすれば、いつか「家」が持てると信じていた私のために。異国の地で高熱にうなされながらも、歯を食いしばって彼に送金し続けた私のために。身ごもった子を諦め、冷たい手術台の上でひとりぼっちで横たわりながら、それでも「いつかきっと良い暮らしが待っている」と自分に言い聞かせた私のために。その日の夜。仮住まいの小さな部屋に帰った私は、スマートフォンの中にある蒼真の写真をすべて見返した。児童養護施設の門の前で撮ったツーショット。古ぼけたアパートで祝った誕生日のケーキ。彼が初めて買ってくれた薔薇の花。二人で一緒に作った、あの泥人形のペア。一枚見ては消し、また一枚見ては消す。そうやって消し続け、最後に残ったのは一枚の写真だけだった。それは、粉々に砕け散ったあの泥人形の写真。私はそれをじっと見つめ……やがて、それも削除した。その夜、私は夜が明けるまで泣き続けた。泣き尽くした後、顔を洗い、服を着替えた。スーツケースを開け、荷物を少しずつ、丁寧に収めていく。私の前半生は、ここで終わったのだ。朝日が昇る時、カーテンを開け放つ。眩しい光が部屋に差し込んできた。私は鏡の中の自分に向かって、静かに呟いた。「安奈、家に帰ろう」そこでふと、自嘲気味に笑ってしまった。私に帰る「家」なんて、どこにある
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