俺が席を立とうとした矢先、また誰かが手を叩いて場を盛り上げ始めた。「待てって泰介、最後にもう1回だけ」「今度はちょっと際どいやつな。LINEのトーク履歴を見て、誰と一番多くやり取りしているか確かめよう」洋司が笑いながらスマホをテーブルに滑らせる。「いいよ。僕は別に、見られて困るものなんてないし」だが、トーク一覧が表示された瞬間、個室の空気が凍りついた。永梨が最も多くやり取りしていた相手は、俺ではなく、洋司だった。誰かが気まずそうに笑う。「いや……永梨と洋司、意外と話してるんだな」洋司はぱちりと瞬きをし、悪びれもせず軽い調子で返す。「仕方ないだろ。泰介は聞き分けがよすぎて、何でもひとりで抱え込むタイプだし。永梨だって、愚痴のひとつくらいこぼしたい時もあるだろ」そう言いながら、彼はわざとらしく思い出したようにトーク画面を開いてみせた。画面に、永梨から届いたメッセージが浮かび上がる。【泰介、また結婚式の進行について聞いてくる。あの人、本当に神経質すぎ】洋司の返信。【あいつ、何でも真面目に考えすぎなんだよ。僕なんか、結婚式なんて楽しけりゃそれでいいって思うけどな】永梨のスタンプ。笑顔だった。【だから言ってるじゃん。洋司と話してる方が、よっぽど気楽】指先に少しずつ力が入り、強く握り締めていくのがわかった。画面には、さらに次のやり取りが流れてくる。永梨のメッセージ。【泰介、今日もあの白いシャツを着てた。自分は白が似合うとでも思ってるのかな】洋司が泣き笑いのスタンプを返す。【そこまで言うなよ。まあ確かに、似合ってはないよな。影が薄いっていうか】永梨からの返信も。【うん。洋司が着た方が、きっと似合う】個室の中は完全に静まり返っていた。俺はその場に立ち尽くし、喉の奥に何かがつかえたような感覚を覚えていた。細かな痛みが胸の奥からじわじわと込み上げ、呼吸すら浅くなっていく。なあんだ、そういうことか。俺がひそかに抱いていた期待も、タキシードを試着した時のあの緊張感も、永梨にとっては、洋司と一緒に笑うための、ただの話の種でしかなかったのだ。洋司が近づき、親しげに俺の肩へ腕を回してきた。「泰介、そんな怒るなって。相手が他の男だったら、僕が代わりに怒
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