『僕達のマザーランド』「おーい、そろそろ着くぞー」 目の前の小さな液晶画面に映し出された、目的地の座標を指でなぞる。 ヘッドセットのマイクに向けて他の船員達に告げたのは、操縦席に座る、見目十二、三の小柄な少女だった。 腕時計型の端末から無線で接続した愛らしい音声は、同じ様にヘッドセットを付けた仲間達の耳へと届く。 疎らに返ってきた返事に、少女はガスマスクの奥で小さな笑みを浮かべた。 今回の任務は『瘴気』と呼ばれる有毒ガスが濃く発生している区域を指定されている。全員がガスマスク着用の物々しい雰囲気の中、ヘッドセットのスピーカーから「前方注意」という低い声が聞こえた。「見つけたか?」 少女の問いに、監視台で双眼鏡を覗く彼は呆れたように鼻で笑った。《クソが、またガセネタ掴まされてんじゃねぇか》 「またぁ?」 少女は「んもー」と溜め息を吐く。「今度は何だった?」 《四足大型が二頭》 羽織ったスナイパーマントが風に靡く度、彼の長い三つ編みが揺れる。 辺りの地形、木々、そして流れてくる風と気配を注意深く観察し、彼は目標までの距離をおおよそで計算した。「正面一五〇〇メートル、もう一体は十時方向に一二〇〇メートル先ってとこか。どっちも目視は出来ねぇ」 風で音声にノイズが混ざる中、耳元では「面倒臭ぁ」と嘆く少女の声が聞こえた。《まぁ、別に偽情報でも良いけどもさぁ》 「良いワケあるかクソババア。風向きが北西から西へ移動、風速も上がってる」 《了解、船を風下へ移すぞ》 見張り台からの報告に応え、少女は操縦桿を小さく回してペダルを踏む。 船の速度を落とし、ゆっくりと旋回させると、操縦席の右後ろ側にあるコントロールパネルからも声が上がった。「こっちでも反応確認。左のは結構なデカさだ」 袖から覗く、夜明け前の空が如く青い肌をした逞しい腕。 伸ばした先にあるスイッチを幾つか切り替えた彼は、回転椅子を座ったまま滑らせて長い脚でブレーキを掛ける。「モニター切り替えたぞ。そっちでも確認頼む」 「ありがとう」 座標が表示されたモニターの隣に、二点の反応を示すレーダーが映し出される。 そこに表記されたデータを確認し、少女は明るい色の髪を掻いた。「……んもー……」 「ローズマリー、指図書には何と?」 「二足小型の群れだって。『密
Last Updated : 2026-08-04 Read more