三台のタブレットが、ほとんど同時に震えた。 獅子寮の談話室に低い振動音が重なり、白いテーブルの上で三つの通知光が明滅する。俺とテオとエマは、それぞれ伸ばしかけた手を止め、互いの顔を見た。「来たな」 テオが息を潜める。その声だけで、試験を受けたときより胸が詰まった。 窓の外では、夕暮れを迎えたルミナス市の高層棟に灯りがともり始めている。談話室の空調は一定の温度を保っているのに、タブレットへ触れた指先だけが妙に冷たい。 俺は通知を開いた。『下半期小テスト 合格』 青い文字の下に、ダンスパーティへの参加資格が付与されたという案内が続く。読み間違いでないと確かめてから息を吐くと、向かい側で椅子が大きく鳴った。 試験中に迷った解答も、夜ごとめくった教本も、通知へ収まっている。俺にとって、この合格は点数だけではない。ミナとの約束へ一歩近づけた証でもあった。「よっしゃあ! これで特別食にありつける!」 テオが両腕を上げる。隣では、エマが胸元へ手を当てて静かに息をついていたが、その眉がすぐに寄った。「真っ先に喜ぶのが料理なの? ダンスパーティよ」「分かってるって。でも年に一度の香草パンと果実ソースの肉料理だぞ。踊れば腹が減る。楽しみにするのは当然だろ」「踊る前から献立しか見ていない人が、理屈をつけないで」 テオは口を尖らせ、反撃先を探すように目を細めた。「そういうエマは誰と踊るんだよ。まさか俺とか言わないよな?」「誰があんたなんかと!」「そこまで即答するか? 俺にだって相手を選ぶ権利はあるぞ」「その権利を主張する前に、食事中にパンを三つも確保する癖を直しなさい」「今は俺の食生活じゃなく、ダンスの話だろ!」 二人の声が軽やかにぶつかり、張り詰めていた談話室の空気がようやくほどけていった。 そのとき、俺のタブレットにもう一件メッセージが届いた。『こちらも通過した。四人とも参加できるな』 送り主はアキト先輩だ。合格通知の画面も添えられている。俺が二人へ見せると、テオは拳を握り、エマも小さくうなずいた。 俺は合格通知を閉じ、時刻を確認した。医療棟の面会受付にはまだ間に合う。 ミナへは一度、俺と踊ってほしいと伝えている。それでも、参加資格を得た今、自分の口でもう一度きちんと申し込みたい。開発途中の薬を前に揺れた彼女へ、約束が変わっていないと伝
Terakhir Diperbarui : 2026-09-22 Baca selengkapnya