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第11話

離婚届が正式に受理されると、直哉は目を閉じた。手続きを終えた私は、古い結婚指輪を外した。内側には二人のイニシャルが刻まれていて、長年つけていたせいで少し擦れていた。それを見た直哉の呼吸が重くなった。「その指輪、俺にくれないか?」「嫌」市役所を出たあと、私はその指輪を買取店へ持っていった。たいした金額にはならなかった。そのお金で、奈緒にワンピースを一着買った。受け取った奈緒は、たちまち目を潤ませた。「凪紗さん、こんなの受け取れません」「旦那さんがオーシャン・ブルー号の船長代行になったお祝い」奈緒は小さな声で言った。「夫は、黒崎船長の問題に乗じて、その座を奪ったみたいに思われるのが嫌だって……」私は言った。「誰かの失敗に乗じて代わりになったんじゃないよ。実力を認められたから任されたの」ほどなくして、東洋海運から正式な処分が公表された。直哉は統括船長への昇格資格を取り消され、半年間の乗船停止と再教育を命じられたうえ、オーシャン・ブルー号からも外された。澪には、ジュエリーと不正に受け取った補助金、さらに3年分の慰問品相当額の返還が命じられた。港湾関係の業務提携も、すべて打ち切られた。かつて直哉を通じて手に入れたものは、最後にはすべて、返さなければならないものになった。私は結婚していた頃の家を売った。そして、港の近くに小さな部屋を買った。朝になると、船の汽笛が聞こえる。以前は、その音が嫌いだった。汽笛が鳴るたびに心が揺れたからだ。直哉が遠い海へ出ていくときも。帰ってくるときも。けれど、今は違う。汽笛は、ただの汽笛だった。もう私の喜びも、苦しみも、その音には結びついていない。昨日は奈緒を誘って、久しぶりに二人で飲んだ。相変わらず酒には弱く、2杯目でもう酔いが回っていた。「凪紗さん、私もう、よその旦那さんがロマンチックだとか羨ましがるのやめます。大事なのは、何をしてくれるかじゃなくて、その気持ちが本当は誰に向いてるかですよね」思わず笑ってしまった。直哉は、ときどき番号を変えてメッセージを送ってきた。書いてあることは、いつも似たようなものだった。海は風が強くて、昔私が用意していた薬箱を思い出したこと。港でマグネットを見かけて、私がそういう小さな
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