第41話 父の署名で、私の偽物の番は作られていました「七年前の私とセドリックの人工番刻印は、父上の署名で作られています」 そう告げた瞬間、父の顔から血の気が引いた。 墓所から屋敷へ戻る途中だったから、私たちはまだ喪服に近い黒い外套を着たままだったし、私の手には母が残した生命移送記録が入った鞄があり、父の頭の中もおそらく、十九年前に死んだと思っていた妻が実はその後も生きていて、自分の知らない場所から娘へ生命力を送り続けていたという事実だけで限界に近かったはずだ。 その状態で、さらに七年前の娘の人生まで突きつけることになるとは思わなかった。 けれど、待つ理由もなかった。「……見せてくれ」 父はそれだけ言った。「屋敷へ戻ってからにします」「今見たい」「父上」「逃げない」 私が何か言うより先に、父は苦しそうに続けた。「昨日お前に言われたばかりだろう。分からないことを勝手に自分の都合のいい答えにしないでくれ、と。なら私も、今ここで『そんな署名は知らない、偽造だ』とは言わない。見せてくれ」 私は少し迷ってから、セドリックが持ってきた複製記録を渡した。 原本は月印監査院の臨時監査局が確保しており、こちらへ送られてきたのは魔力転写による精密写しだ。それでも筆圧、印章の魔力波形、署名時に残る個人固有の月脈反応まで確認できる。 父は最初の一枚を読み、次の一枚へ進み、最後の署名欄まで来たところで長く黙った。「父上」 セレーネが恐る恐る呼んだ。「これ、お父様の字なの?」「ああ」 即答だった。「覚えてる?」「……署名したこと自体は」 私は父を見る。
Last Updated : 2026-09-17 Read more