All Chapters of 運命の番を監査する私、冷血アルファ王の偽装結婚を暴くはずが「お前こそ俺の唯一だ」と刻印されました: Chapter 31 - Chapter 40

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第31話 未来を映す鏡なら、どうして私たちの身体まで変えられたの?

第31話 未来を映す鏡なら、どうして私たちの身体まで変えられたの?「リア監査官、確認したいのだが、月鏡が示したお二人の婚姻成立確率は、最も高い映像で九十四パーセントだったという理解で正しいだろうか」 正式即位式から一夜明けた朝、私が最初に聞かされた質問がそれだった。 眠っていない。 正確には、一時間半くらいは寝たと思う。 即位後の祝宴から逃げてきたカエルと月鏡について話し、そのあと月鏡から抽出された記録をユアンと明け方まで整理し、ようやく寝台へ潜り込んだところで父から届いた「母の墓が空だった」という手紙を読み返してしまい、そこから考え事が止まらなくなった。 そんな朝に。 七群合同監査会議。 そして。 九十四パーセント。「いいえ」 私は答えた。 質問をした蒼牙群代表、エドガー卿が細い眉を上げる。「しかし記録には九十四という数字が」「ありました。ただし、単位がパーセントだとは確認されていません」「成立確率と表示されていたのだろう?」「はい」「なら普通は割合では」「普通という言葉で古代魔導装置の仕様を決めないでください」 会議室の端で、イリーナが飲んでいた茶を少し噴きそうになった。 隣のダリウスは露骨に顔をしかめる。「相変わらず細かい女だ」「監査官なので」「またそれか」「便利なんです、この職業」 疲れている。 たぶん、そのせいで少し口が悪い。 いつもより、と言われれば否定できないけれど。「では」 エドガー卿は諦めずに続けた。「仮に割合だとして、九十四
last updateLast Updated : 2026-09-06
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第32話 兄が死んだ夜、あなたは未来の私を見せられていた

第32話 兄が死んだ夜、あなたは未来の私を見せられていた 三年前、カエルの兄が死んでから三十二分後、月鏡は起動していた。 数字にしてしまえば、それだけだった。 午後十一時四十七分、王兄死亡確認。午前零時十九分、月鏡起動。午前零時二十一分、対象A――黒狼王血を接続。午前零時二十七分、対象B――白狼の生存状態を外部照合。午前零時三十一分、未来候補群を展開。午前零時四十分、刻印核への転写開始。 記録というものは残酷なくらい簡潔で、人がそこで何を失ったのかまでは書いてくれない。「一度、最初からやり直したい」 カエルがそう言ったのは、第31話の調査を終えた日の夕方だった。 私は机から顔を上げた。「何を?」「三年前の夜だ。兄が北塔へ上がったところから、俺の記憶が戻るところまで、証言と記録を全部並べたい」「かなりきついと思いますよ」「分かっている」「本当に?」「リア」「はい」「そこで『本人がやりたいと言っているんだから任せろ』と言うのがお前ではなかったか」「それと心配することは両立します」「便利だな」「人間なので、矛盾くらいします」 少し考えてから、私は書類を閉じた。「分かりました。ただし条件があります」「また契約か」「今回は五十三枚にはしません」「安心した」「一つ。途中で銀鈴反応が出たら即中止。二つ、記憶誘導術は使わない。三つ、思い出せないことを無理に埋めない。四つ、あなたが『やめる』と言ったら、その時点で終了します」「俺が言わなくても、お前が危険だと判断したら?」「止めます」「それでは俺が決める意味が」
last updateLast Updated : 2026-09-07
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第33話 私を十八歳から見守っていた恩人は、「私を最初に監査しろ」と手袋を外した

第33話 私を十八歳から見守っていた恩人は、「私を最初に監査しろ」と手袋を外した「リア、君が『無月者』と診断された夜、私はその場にいた」 エリアス院長がそう言ったあと、私はしばらく何も返せなかった。 十九年前。 私は五歳だった。 ヴェイル家の西棟と温室が壊れ、私は高熱と筋肉損傷、それから左肩に三本の傷を負った。その翌日、王家から派遣された医師によって「先天的に月脈が閉塞した無月者」と診断され、以後十九年間、私は一度も狼へ変身できない女として生きてきた。 ところが、現在分かっている事実は違う。 私には月脈がある。 むしろ普通の狼人族より強い狼型魔力核が存在し、それを人型へ固定する封印術式が左肩に施されている。 そして、五歳から現在まで、その封印状態は月印監査院内部で秘密裏に観測されていた。「院長は、十九年前に何歳だったんです?」 最初に出てきたのが、それだった。 もっと重要なことはいくらでもあるのに、頭が混乱しすぎると、人間は妙に具体的なところから確認したくなるらしい。 エリアスは少しだけ苦笑した。「十三歳だ」「十三?」「叔父のマルセル・モーンが、当時の月印監査院医療部門の責任者だった。私は正式な監査官でも医師でもない。ただ、叔父の仕事について回って、書類を運んだり薬箱を持ったりしていた」「十三歳の子供を秘密の診察へ連れていったんですか」「今考えれば問題だらけだよ。当時の叔父は『一族の仕事は若いうちから見て覚えろ』という人だったから」 その言い方には、懐かしさより少し苦いものが混じっていた。「その夜、私はヴェイル邸へ同行した。西棟は半分崩れ、庭には焦げ跡もないのに木が何本も折れていた。なのに公式説明は『暴風被害』だった。子供の私でも、明らかにおかしいと思ったよ」
last updateLast Updated : 2026-09-08
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第34話 「白狼の器を王血へ接触させよ」――十九年前、五歳の私は人間として数えられていませんでした

第34話 「白狼の器を王血へ接触させよ」――十九年前、五歳の私は人間として数えられていませんでした 十九年前の命令書に残っていたのは、たった三つの言葉だった。 白狼。 王血。 接触。 これだけなら、いくらでも解釈できる。白狼とは私ではないかもしれないし、王血とはカエル個人を意味するとも限らないし、接触という言葉だって、身体を触れ合わせることではなく外交や交渉を指していた可能性もある。 だからこそ、私は焦げた紙を前にして、自分の中で一番嫌な想像が浮かんでも、それを口にはしなかった。「リア監査官、もう朝ですよ」 ユアンがそう言ったとき、私はようやく窓の外が薄青くなっていることに気づいた。「知ってる」「絶対いま気づきましたよね」「時間は把握していました」「では、現在時刻は?」「……朝」「それは時間帯です」 向かいではカエルが腕を組んだまま、露骨に「ほら見ろ」という顔をしていた。「何です、その顔」「俺は何も言っていない」「言ってます」「感情共有を便利に使うな。俺はただ、お前が昨日『徹夜は禁止』と言った本人だったことを思い出しているだけだ」「徹夜してません。まだ昨日から今日になっただけです」「それを一般に徹夜という」「陛下もいますよね」「俺は王だ」「便利に使わないでください」「お前が『仕事だから』を使う回数より少ない」 エリアスが机の反対側で、疲れたように笑った。「二人とも、私を監査している最中だということを忘れていないか?」「忘れてません」「なら少
last updateLast Updated : 2026-09-10
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第36話 七年前に追放された故郷へ、今度は監査官として帰ります

第36話 七年前に追放された故郷へ、今度は監査官として帰ります「駄目です」「まだ何も言っていない」「一緒に灰牙群へ行くつもりでしょう」「行く」「だから駄目です」「会話になっていないぞ」 母の墓が十九年間ずっと空だったという報告を受け取った翌朝、私とカエルは王の執務室で、出発前の打ち合わせをしていた。 正確に言えば、私は出発の打ち合わせをしているつもりだったのだけれど、カエルの机の横にはどう見ても旅行用ではない黒革の大型鞄が置かれ、その上には王家近衛隊の移動計画書まで積まれている。「陛下」「何だ」「灰牙群へ行くのは私です」「ああ」「セラ・ルネアの墓を調査するために」「ああ」「つまりヴェイル家と、私の母と、私自身に関する調査です」「ああ」「王が来る必要はありません」「ある」「ありません」「ある」「子供ですか」「お前にだけは言われたくない」 そこへハロルドが入ってきて、机の上へ書類の束を置くなり、私たちの顔を見比べた。「まだやっているんですか」「まだとは何です」「今朝七時から三回目です、この議論」「陛下が理解しないので」「リアが俺を置いていこうとするからだ」「置いていくという表現がおかしいでしょう。王には王都で仕事があります」「三日分なら昨夜終わらせた」「何でそういうときだけ仕事が早いんです?」「行きたいからだ」「素直すぎて腹が立つ!」 ハロルドが疲れた顔
last updateLast Updated : 2026-09-12
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第37話 王の番になった途端「家へ戻れ」と言われても、その家は七年前に私を捨てました

第37話 王の番になった途端「家へ戻れ」と言われても、その家は七年前に私を捨てました「リア、よく帰ってきた」 父――ヴァレリウス・ヴェイルは、七年前には一度も私へ見せなかったような穏やかな笑顔で、街道脇の土の上へ片膝をついていた。 その光景を見た瞬間、懐かしいと思うより先に、腹の底が冷えた。 七年前の私は、この人に笑ってほしかった。 セレーネと話しているときのように、ほんの少し目尻を下げてほしかったし、剣術試験で一番になったときも、監査学の予備試験に合格したときも、たった一言でいいから「よくやった」と言ってほしかった。 けれど父が私へ向ける顔はいつも同じだった。 狼になれない娘。 婚約相手に拒絶された娘。 ヴェイル家へ利益をもたらさない娘。 そして最後には――家の恥。 そんな私が王の番になった途端、この人は笑うのか。「父上」 私は馬車から降りずに言った。「七年前には、私へ『帰ってくる場所などない』と言いましたよね」 父の笑顔が固まった。 セレーネも何も言わなかった。 カエルは私の斜め後ろへ座ったまま、動かない。胸の奥からはかなり強い怒りが流れ込んできているのに、約束どおり口を挟まずにいる。 頑張っている。 あとで少しくらい褒めてもいい。「リア、そのことについては、家で話そう」「どうして?」「ここでは人目がある」「七年前に私との婚約が偽物だったと広場で言われたときも、人目はありました」「……」「セドリックが私を拒絶したとき、灰牙群の貴族も使用人も商人も見ていた。父上もいましたよね」 少し離れた場所で馬から降りてい
last updateLast Updated : 2026-09-13
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第38話 「お帰りなさいませ」と言われても、ここはもう私の家ではありません

第38話 「お帰りなさいませ」と言われても、ここはもう私の家ではありません「リアお嬢様のお部屋は、すぐに使えるよう整えてございます」 夕食後、年配の侍女長からそう告げられた私は、返事をするまでに妙な間が空いてしまった。 昔の私の部屋。 七年前まで使っていた、二階東側の角部屋。 窓から庭の林檎の木が見えて、朝になると日差しが強すぎるから夏だけ薄い青のカーテンへ替えていた。勉強机の右端には、幼い頃にナイフでつけた小さな傷がある。父に叱られると思って本を積んで隠したまま、結局家を出る日まで誰にも言えなかった。 覚えている。 嫌になるほど。「客室をお願いしたはずですが」 私が言うと、侍女長は困ったように父を見た。「しかし旦那様が、長旅でお疲れでしょうから、慣れたお部屋のほうがよろしいのではないかと」「慣れていません」「リア」 父が低い声で呼んだ。「七年経っています。もう、あの部屋で眠ることには慣れていません」 言ってから、自分でも少し刺々しすぎたかと思ったが、訂正する気にはなれなかった。 父も反論しなかった。「……そうか。では南側の客室を」「待って」 セレーネだった。 廊下の少し先に立っている妹は、なぜか気まずそうな顔をしていた。「その部屋、今は私が使ってる」「私の昔の部屋?」「うん」「そう」 それ自体は知っていた。 第23話でセレーネから聞いている。私が追放されたあと、妹は私の部屋も教師も衣装も引き継ぎ、本人が望んでもいないのに「リアの代わり」を求められ続けた。
last updateLast Updated : 2026-09-14
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第39話 母の墓を暴いた犯人を探したら、棺は十九年前から一度も閉じられていませんでした

第39話 母の墓を暴いた犯人を探したら、棺は十九年前から一度も閉じられていませんでした 母の墓を開く朝が来た。 十九年間、そこに母が眠っていると信じていた。 幼い頃には父に連れられて花を置き、追放される前の数年間は一人で訪れ、誰にも言えない不満や寂しさを墓石へ向かって話したこともある。父と喧嘩をした日も、セレーネに嫉妬した日も、セドリックとの婚約が息苦しくなった日も、「死んだ人なら私を嫌わないだろう」という、今思えばかなり身勝手な理由で母へ話しかけていた。 その墓に。 母はいなかった。 それどころか、昨夜見つけた手紙によれば、母自身が最初からそれを知っていた。『墓を開けて。そこに私はいません』 あれだけ分かりやすく書かれてしまえば、さすがの私でも「もしかすると遺体があるかもしれない」という期待は持てない。 それでも。 墓地へ向かう途中で、私は何度も思った。 本当に空なのだろうか、と。「リア」 隣を歩いていたカエルが呼んだ。「何です?」「今、また考えすぎてるだろ」「どうして分かるんです」「共有」「便利ですね」「お前は嫌がるがな」「だって考え事まで筒抜けみたいで嫌でしょう」「考えている内容までは分からない。ただ」 カエルは少しだけ歩調を緩めた。「今は怖い、寂しい、それから少し期待している」「……そこまで分かるなら十分嫌です」「何を期待してる」「分かりません」「墓を開けたら、実は母親がいること?」「それも少し。でも、いたらいたで昨夜の手紙と矛盾します」
last updateLast Updated : 2026-09-15
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第40話 母の棺は空でした――墓の下で見つけた記録には「遺体移送済み」と書かれていました

第40話 母の棺は空でした――墓の下で見つけた記録には「遺体移送済み」と書かれていました 母の墓の下へ続く階段を前にして、一晩待つという判断をしたことを、私は翌朝までに六回くらい後悔した。 入りたい。 何があるのか知りたい。 母が十九年間、何を隠していたのか確かめたい。 それでも地下空間の空気検査、崩落確認、魔力罠の有無、古代術式の残存状態を調べさせたのは正しかったらしく、朝食の席でローデンから報告書を受け取ったとき、一番最初に書かれていた文章は、『昨夜そのまま進入していた場合、第一隔壁で全員が昏倒していた可能性があります』 だった。「……待ってよかったですね」「だから言っただろう」 カエルが隣でパンを食べながら得意そうに言った。「言ったのは私です」「俺も同意した」「陛下は最初『今行く』って顔をしていたでしょう」「顔まで証拠にするな」「生命共有がありますから」「便利だな」「こういうときだけ」 向かいではセレーネが眠そうに茶を飲みながら、報告書へ目を落としていた。「第一隔壁って、何があったの?」「白月式の昏睡結界です。十九年前のものですが、まだ生きています」「そんなのがお墓の下に?」「しかも侵入者を殺すものではなく、眠らせて外へ排出する術式でした」 カエルが眉を寄せた。「殺さない?」「はい。かなり古い術式ですが、致死性はありません。侵入者を傷つけるより、ここから追い出すことを優先していたみたいです」「セラらしい」 父がぽつりと言った。
last updateLast Updated : 2026-09-16
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