All Chapters of 運命の番を監査する私、冷血アルファ王の偽装結婚を暴くはずが「お前こそ俺の唯一だ」と刻印されました: Chapter 21 - Chapter 30

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第21話 逃亡した王と殺人容疑者ですが、「極秘捜査でした」で王宮へ戻れるでしょうか

第21話 逃亡した王と殺人容疑者ですが、「極秘捜査でした」で王宮へ戻れるでしょうか 三年前の月鏡に、まだ出会ってもいない私とカエルが夫婦として映っていた。 そんなものを見せられた翌朝、人間が最初にすることは何だろう。 祈る。 泣く。 運命について考える。 おそらく普通なら、そのあたりではないかと思う。 私は違った。「王宮へ戻ります」 朝食のパンを齧りながら言うと、向かいに座っていたカエルが露骨に嫌そうな顔をした。「嫌だ」「子供ですか」「今の王宮は敵と味方の区別がつかない」「だから戻るんです」「理屈が逆だ」「逆じゃありません。私たち、現在の公的記録上ではどうなってます?」 ローデンを見る。 彼は飲みかけの茶を置き、非常に答えたくなさそうに口を開いた。「リア監査官は、殺人事件の重要容疑者として拘束中に逃亡」「はい」「殿下は、その逃亡を王権を使って幇助した疑い」「はい」「さらに王位継承手続き自体が停止中で、暫定王権についても七群側から異議申し立て」「はい」「加えて」「まだあるんです?」「王家唯一の月璽を紛失」 カエルがパンを食べる。「紛失ではない」「投げましたね」「必要だった」「報告書には何と書けばいいんです!」 ローデン。 また。 これ。 昨日から何度目だろう。「『緊急人命救助のため、一時的に所有状態を喪失
last updateLast Updated : 2026-08-27
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第22話 「殺人容疑者の偽王妃」と笑われたので、その場で皆様の番契約を監査することにしました

第22話 「殺人容疑者の偽王妃」と笑われたので、その場で皆様の番契約を監査することにしました 殺人容疑者として牢へ入り、王と一緒に逃亡したことになり、崖から落ちかけ、王家唯一の月璽まで谷底へ消える原因になった女が、王宮へ戻った翌日の夜に舞踏会へ出席する。 自分で言うのも何だけれど。 かなり。 どうかしている。「行きません」 私は鏡の前で言った。「行ってくださいませ」 背後からマルタが言った。「嫌です」「存じております」「じゃあ休ませてください」「それはできません」「マルタさん」「はい」「私、昨日王宮へ戻ったばかりです」「はい」「一昨日は崖から落ちかけました」「伺っております」「その前は牢屋」「机を持ち込まれたとか」「あれ、もう知られてるんです?」「王宮でございますので」 秘密を守るのが最も下手な場所。 前にも聞いた。「しかも」 私は鏡の中の自分を見る。 銀色の髪を結われ、王宮仕立ての深い青のドレスを着せられている。 王妃用ではない。 そこだけは。 私が絶対に譲らなかった。 月印監査院の正装を基礎にした礼装。 胸元には王家の宝石ではなく、監査官章。「私、まだ薬師殺害事件の容疑者ですよ」「正確には重要参考人へ再変更されたと伺いました」「微妙に出世したみたいに言わないでください」「おめでとうございます」
last updateLast Updated : 2026-08-28
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第23話 七年ぶりの妹は、「お姉様が戻ってきたら、また私は何者でもなくなる」と泣いた

第23話 七年ぶりの妹は、「お姉様が戻ってきたら、また私は何者でもなくなる」と泣いた「どうして、そのペンダントから七年前の偽造薬と同じ匂いがするの?」 私がそう尋ねた瞬間、セレーネは首元の銀月を握り締めたまま、まるで私が突然知らない言葉を話し始めたような顔をした。「……偽造薬って、何?」「番刻印を人工的に作ったり、儀式中の記憶を曖昧にしたりするために使われた可能性がある薬よ」「知らない」「本当に?」「知らないって言ってるでしょう!」 声が。 大広間へ響く。 まだ残っていた客たちがこちらを見る。 セレーネ自身も、それに気づいたらしい。 急に。 顔。 赤くなる。「……ごめんなさい」「私に?」「違うわよ、こんなところで大声を出したこと!」「そう」「何よ、その言い方」「別に」「昔からそうだった」 来た。 七年ぶりなのに。 会話を始めて。 数分。 もう。 昔。「何が?」「お姉様は、自分が何を言っても正しいみたいな顔をする」「してない」「してる!」「セレーネ」「ほら、その呼び方!」「名前でしょう?」「そうじゃなくて!」 周囲。 さらに。 見てる。 最悪。「場所を移し
last updateLast Updated : 2026-08-29
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第24話 私は「狼になれない」のではなく、狼にならないよう壊されていたのかもしれません

第24話 私は「狼になれない」のではなく、狼にならないよう壊されていたのかもしれません「お姉様が、白い狼になったように見えた」 セレーネがそう言ったあと、私はしばらく何も答えられなかった。 頭の中では監査官としての自分が、証言者は当時五歳前後、しかも長期間にわたり月泪草系薬物へ曝露されていた可能性がある以上、幼少期の記憶をそのまま事実認定してはいけない、と冷静に警告している。 その一方で、もっと幼いところにいる私が、そんな理屈とは関係なく震えていた。 ――知っている。 白い毛。 血の匂い。 泣き叫ぶ声。 母の歌。 そして、自分のものではないほど大きな前脚。「リア」 カエルが低い声で呼んだので、私はようやく自分が呼吸を止めていたことに気づいた。「……聞こえてます」「座れ」「座ってます」「なら背もたれを使え。今のお前、椅子へ座ってるというより、意地だけで垂直になってる」「何です、その表現」「俺にも分からん。ただ、倒れそうだ」 少し腹が立ったので、私は言われたとおり背もたれへ身体を預けた。 こういうとき、昔の私なら「大丈夫です」と言って終わらせていただろうけれど、今それをやると目の前の男が十倍面倒になることを、私はこの数日で学習している。「大丈夫ではありません。でも、話はできます」「……それならいい」 カエルが素直に引いた。 セレーネが私たちを見比べ、泣いたあとなのに少し呆れた顔をする。「お姉様、本当にこの人とまだ『監査中』なの?」「その話は今しない」「だっ
last updateLast Updated : 2026-08-30
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第25話 本物の番なら幸せになれるなんて、誰が決めたのでしょう

第25話 本物の番なら幸せになれるなんて、誰が決めたのでしょう「真正の番同士が、互いを襲っている?」 ユアンから報告を受けた瞬間、私は寝間着の上へ外套を羽織っただけの格好で廊下へ飛び出した。 身だしなみも何もないけれど、十二組の番が同時に異常を起こし、その全員が直前に銀の鈴らしき音を聞いたという状況で、「監査官なので着替えてから参ります」などと言っている場合ではない。「最初の発生場所は?」「王都東区です。昨夜の舞踏会で相談に来たノルマン夫妻が、自宅で突然争い始めました。その十五分後に南区で三組、さらに西区で――」「怪我人は?」「重傷二名、軽傷十九名、今のところ死亡者はいません。ただ、止めに入った家族まで襲われています」「十二組全部、本当に真正認定済み?」「再照合しました。少なくとも登録上は真正で、偽造歴も処分歴もありません」 廊下の曲がり角で、カエルが追いついてきた。 こちらも寝起きそのものだった。黒い上着だけは着ているけれど、髪は整っていないし、何より足元が室内履きである。「陛下」「何だ」「靴」「……」 カエルが自分の足を見る。 ユアンも見る。 ローデンも、遅れて走ってきてから見る。「戻られますか」 ローデンが真顔で聞いた。「時間がない」「でも室内履きですよ」「リアまで言うな」「王都へ出るんですよ?」「馬車までなら歩ける」「途中で脱げたら拾いませんからね」「お前は寝間着だろう!」「外套で隠れてます!」「隠れればいいという問題か!」
last updateLast Updated : 2026-08-31
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第26話 王宮の地下には、十九年前から「番の心」を書き換える装置が眠っていました

第26話 王宮の地下には、十九年前から「番の心」を書き換える装置が眠っていました 妹というものは、どうして姉に「一人で行くな」と言われるような場所へ、よりによって一人で行くのだろう。 ――もっとも。「リア」「何です」「今、自分のことを棚に上げてセレーネへ怒っているだろう」 礼拝堂の地下階段を下りながらカエルに言われ、私は思わず足を止めた。「何で分かるんです?」「俺も同じことを何度もお前に思ったからだ」「私は仕事です」「便利な言葉だな」「セレーネは仕事じゃありません」「本人にとっては、自分の人生を調べる仕事みたいなものかもしれんぞ」「……」 腹が立つ。 正しいから、さらに腹が立つ。「陛下」「何だ」「最近、少し私の扱いに慣れすぎてません?」「かなり苦労した」「私だって苦労してます」「どっちが多いと思う」「私」「俺だ」 後ろからローデンが、深いため息をついた。「お二人とも、今は行方不明者の捜索中です」「分かっています」「分かってる」「でしたら、少なくとも階段を下りている間くらい口論をお控えください」 さらにその後ろからユアン。「僕は逆に、喋っててもらったほうが安心しますけどね」「なぜ?」「静かになると大抵、もっと危ないことを考えてるので」「ユアン」「何でしょう」「最近、生意気」「誰
last updateLast Updated : 2026-09-01
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第27話 妹は七年間、私を憎んでいた――そして母に「姉を見張りなさい」と言われていた

第27話 妹は七年間、私を憎んでいた――そして母に「姉を見張りなさい」と言われていた ベルアードを取り逃がした。 その事実だけでも十分に腹立たしいのに、逃げる直前の彼が残した言葉が、頭の中へ棘みたいに刺さったまま抜けなかった。『お前の母が、この国に何をしたかも知っている』 母は私を守った。 左肩へ封印を施し、白い狼を閉じ込め、少なくとも幼い私が「月」と呼ばれる何かに見つからないようにした。 私は、そう考え始めていた。 けれど、それはまだ私に都合よく並べた仮説にすぎない。 母が白月群の出身だったこと。 王宮地下の巨大な番干渉装置が十九年前にも起動していたこと。 同じ時期、母が私の狼化を封じたこと。 そしてベルアードは、母が「この国に何かをした」と言った。 守った側と、事件を起こした側。 その二つは、必ずしも矛盾しない。 人というものは、誰かにとっての善人であることと、別の誰かにとっての加害者であることを、平気で同時に成立させる。 私は父親を見て、それを嫌というほど知っていた。「お姉様」 隣から呼ばれ、私は我に返った。「何?」「怖い顔してる」「今、かなり怖いことを考えていたから」「私のこと?」「違う」「即答されると、それはそれで少し腹が立つわね」「どうしてほしいの?」「分からない。久しぶりに姉と話しているから、正しい妹のやり方を忘れたのかも」「私も正しい姉のやり方なんて知らない」「それは昔からでしょう」「セレーネ」「何よ」「今のは腹が立った」
last updateLast Updated : 2026-09-02
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第28話 妹を助けるため人質になった私に、王は何も言わず剣を捨てた

第28話 妹を助けるため人質になった私に、王は何も言わず剣を捨てた エステル・ヴェイルの短剣が、セレーネの喉へ触れていた。 ほんの少し皮膚を切っただけらしく、流れている血は一筋でしかない。それでも、その赤が妹の白い首筋を伝っていくのを見た瞬間、私は考えるより先に一歩前へ出ていた。「リア、止まれ」 カエルの声が飛んできた。「止まっています」「一歩出た」「一歩だけです」「その一歩を止まれと言っている」 こういうときまで細かい。 けれど、カエルのほうが正しい。 私はそこで足を止め、両手を見える位置まで上げた。「エステル夫人、まず短剣を少しだけ離してください。あなたが本当に欲しいのは私でしょう。セレーネを傷つければ、その時点で私はあなたの要求に従う理由を失います」「お姉様、来ないで!」 セレーネが叫んだ拍子に刃がわずかに食い込み、血がもう一滴落ちた。「動かないで、セレーネ」「でも!」「今は私の言うことを聞いて」「嫌よ! さっきまで私に『自分で決めろ』って言ってたでしょう!」「そうだけど、首に刃物を当てられているときくらいは姉の言うことを聞いて!」「そういうときだけ姉ぶらないで!」「今それを言う!?」 人質事件の最中に姉妹喧嘩を始めるな、と自分でも思う。 けれど、セレーネがいつもの調子で言い返してくれたことで、少なくとも意識がはっきりしていることだけは分かった。「……あなたたち、本当に似ているのね」 エステルが小さく言った。 声が震えている。 そこで初めて、私は彼女の顔をまともに見た。
last updateLast Updated : 2026-09-03
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第29話 「すべては月を正すために」――真相を話しかけた男は、私の目の前で口を封じられた

第29話 「すべては月を正すために」――真相を話しかけた男は、私の目の前で口を封じられた 人間というものは、自分が誰かに操られている可能性を指摘されたとき、必ずしも助けを求めるわけではない。 むしろ逆に、そんなはずはないと怒り、自分は自分の意思でここにいるのだと証明するため、それまでより強く間違った道へ進もうとすることがある。 ベルアードの顔を見た瞬間、私はたぶん、この男がその種類だと分かった。「あなたにも刻印がありますね」「見るなと言った」「では、見られると困るんですね」「リア監査官、今は言葉遊びをしている場合ではない」「私もそう思います。だから、あなたの首を見せてください」「嫌だ」「どうして?」「私の身体だ。拒否する権利くらいあるだろう」 その返答に、私は一瞬だけ黙った。 皮肉なものだと思う。 この男は、本物の番制度が人間の自由を奪うと怒り、その制度を壊すためなら人工刻印で他人の意思を縛ってもいいと考え、それでも自分の身体については「拒否する権利」を当然のように主張する。「ありますよ」 私は答えた。「あなたにも拒否する権利があります。だから私は、無理やり刻印を調べるつもりはありません」 ベルアードが少し意外そうな顔をした。「なら黙れ」「ただし、あなたがエステル夫人を人工刻印で拘束していること、銀鈴を使ってカエルの意思へ干渉しようとしたこと、王都の真正番へ感情増幅実験をしたことについては別です。それは、あなた一人の身体についての自由では済みません」「……」「それと、もう一つ」「まだあるのか」「あなた自身が命令を受けているなら、その命令によってこれから誰かを
last updateLast Updated : 2026-09-04
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第30話 「偽物ではありません」と告げた瞬間、三年前の鏡に私たちの結婚式が映りました

第30話 「偽物ではありません」と告げた瞬間、三年前の鏡に私たちの結婚式が映りました 最初の即位式で、私は王の前に立って「あなたの番刻印は偽物です」と言った。 それからまだ、それほど長い時間は経っていない。 けれど、その短い間に私は殺人事件の容疑者になり、牢へ入り、王と一緒に逃亡したことにされ、雪山で遭難しかけ、七年前の自分の番刻印が人工物だった可能性を知り、母が白月群の出身だったと知り、妹が母親から薬を盛られていたことを知り、王宮の地下から人の感情へ干渉する巨大装置まで発見した。 ついでに、王家唯一の月璽は谷底へ消えた。 これは私のせいではない、と私は今でも思っている。「まだ気にしているのか」 再び即位式用の礼装へ着替えたカエルが、鏡越しに私を見ながら言った。「何をです?」「月璽」「気にしますよ。王位の証ですよ」「捜索は続いている」「見つかってません」「俺は後悔していない」「それも聞きました」「ならいいだろう」「よくありません。私一人助けるために国家級遺物を谷へ投げる王を、国民はどう評価すればいいんです?」「『人命を大事にする立派な王』」「自分で言います?」「では『物を大事にしない雑な王』でもいい」「そっちはかなり正確です」「リア」「何です」「今日、緊張しているだろう」 話を変えられた。 私は否定しようとして、やめた。「しています」 鏡の中の自分は、三日前の舞踏会よりさらに堅い顔をしていた。 今日は王妃の衣装ではない。 月印監査院の最高位監査礼装。
last updateLast Updated : 2026-09-05
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