相良が、通話を切らず、できるだけ長く話させてほしいという指示を紙へ書いたため、私は、電話の向こうにいる者が冬真を殺したと認めたことより、私の身体で何が始まったのかを先に尋ねた。「あなたが本当に冬真を殺したのなら、どうして私へ教えるのですか。黙っていれば、私は妊娠による自然な反応だと思い、あなたが望む次の段階まで治療を受けない可能性もあったのに、電話をかければ、病院も警察も、外部から操作されたことを疑います」『黙ったままでは、久瀬朔也が、あなたを守る夫として血液浄化を選び、AR‐7と一緒に、ようやく作られ始めた抗体まで捨てるからです。医師は母体を優先すると言い、兄さんは、あなたの命が大切だと話し、美しい理由を並べて、二十四年間待った結果を消します』「私の血液から抗体を得るため、治療を止めさせたいのですね。それなら、私が妊娠を続けるかどうかではなく、危険な数値までAR‐7を増やすことが目的であり、子どもを守ると話した冬真の計画とも違います」『冬真は、最後に怖くなりました。自分が愛する妻を研究へ使ったと認めるより、全て話して、選ぶ権利を返した夫として死にたくなったのです。けれども、二十四年前、十番を生かすために死んだ患者や、今も身体を動かせない八番へ、彼が良い夫として終わる都合は関係ありません』 私は、電話の相手が、私をAUR‐010ではなく十番と呼び、八番である美月の状態を知っていることに気づいた。朔也も同じことを相良の紙へ書き、真奈は、音声を解析するため、通話を病院の回線へ分岐させながら、相手へ聞こえないよう手元の端末を操作していた。
Última actualización : 2026-09-08 Leer más