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警備飛行

 翌日の目覚めは最悪だった。自室に戻った後も泣き続けたミハル。キャロルに慰められはしたものの、悔しくて情けなくて馬鹿らしい自分に涙していた。 結果として瞼を腫らしたまま、詰め所を訪れる羽目に。「失礼します……」 午前中はベイルが会議とのことで部隊連絡はない。スケジュールにある通り、警備飛行を行うだけである。それはカザインの偵察機を撃墜するためのもの。本隊がゲートまで到着していない今も、カザインは毎日のように偵察機を送り込んでくるのだ。 午前中は301小隊の割り当てである。一班と二班が二時間飛行し、残りの三班で三時間を警備する予定だった。「ゲートE側か……」 ミハルの一班がE方向側を担当し、二班がW側を担当することになっていた。少人数での警戒はカザインの戦闘準備が整っていないからである。ゲートには先の大戦に参加しなかった戦艦が居座るだけであり、偵察機もそれらの艦隊から送り込まれたものだ。「おう、エース。その顔じゃあジュリアの説得は無理だったようだな?」 ダンカンが自機の前で待ち構えていた。冴えない表情のミハルを見てはそんな風に聞く。「ええ、まあ……」「だとしたら俺のすることは一つだ。ベイル副隊長が戻られたら、昨日のデータを見せるぞ? その場でミハルは支援機を募るんだ」 言葉もなくミハルは頷いた。もうジュリアが支援機となる未来はないだろう。他の隊員に頼み込むしか道は残されていないはずだ。「お前さんは警備飛行の間に頭を冷やしておけ。時には頭を下げることも必要だ」 真摯に受け止めるべき話である。昨日は頭を下げるどころか、感情的になりすぎていた。もしも最後まで頭を下げ続けていたとすれば異なる今があったかもしれない。「スコットたちはもう発進したようだぞ? 早く行け。頭をリセットしてこい」 警備飛行だというのに、ダンカンはまるで危機感を持っていない様子。しかし、それはダンカンだけの話ではなく、基地にいる誰もが楽観的に考えていた。ゲートに存在するカザインの艦隊が少数であることや、偵察機しか現れない現状も楽観視する一因である。
last updateÚltima actualización : 2026-10-06
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ミハルの支援機

 午後になり301小隊は詰め所に集まっていた。話していた通りにダンカンの姿がある。どうやら彼は会議が始まるよりも前に報告を済ませたようだ。 全隊員が揃うと直ぐに部隊連絡が始まった。長々としたベイルの話。今後のスケジュールが伝えられたあとは、いつもならそれで解散となる。しかし、本日はまだ解散とならないようで、ベイルは最後の議題を口にした。「昨日の午後、私は編隊訓練をしろと伝えたはずだ。ところが、ミハル一等航宙士は単機で訓練したという。スコット、これはどういうことだ?」 厳しい表情をしてスコットに聞く。ミハルの待遇が気にくわないのはベイルも承知していたけれど、新人を放置するなんて行動は流石に看過できなかった。「すみません……」 小さく謝るも、それ以上の言葉はなかった。スコットも死にたくなかったのだ。下手にかかわって後衛機とされるのだけは避けたかったに違いない。「ここではっきり決めておこうと思う。無事であったから良かったものの、先ほどのように単機で出撃するなんて問題外だ。誰かミハル一等航宙士の後衛機になろうという者はいないのか?」 ベイルは午前中にあった交戦の報告を受けている。結果的にスコットとミハルが編隊を組んでいたが、彼はそれまでの経緯を問題視しているらしい。 とても長い沈黙だった。それは終わりの見えない間であるようにも思える。 しかし、よく通る大きな声が室内に響き渡り、張り詰めた空気は緊張を解いた。ただし、声を張ったのは隊員の誰かではない。声の主はベイルの隣に立つダンカンだった。「頼む! 誰かミハルと飛んでくれ! まだ若いがそれでもミハルは戦えるんだ! どうか支援機を引き受けてやって欲しい! 整備士が生意気だと思うだろうが、お願いだ!」 ダンカンは立候補者が現れない現状を危ぶんでいる。更には大きく頭を下げて、担当パイロットの相棒を募った。「ダンカンさん! 私のためにそこまでしなくても!」「ミハル! お前も頭を下げろ! お前はここじゃ一番の下っ端なんだぞ! 頼み込まずして誰も受けてはくれん!」 ダンカンの姿にミハルはようやく気付かされていた。  戦場でルーキーがパートナーを得ること。それが如何に困難であるかを。ましてエイリアンとの大戦を控えているのだ。とてもじゃないが突然現れた新人なんて信頼できない。命を懸けてまでルーキーの世話係を請け
last updateÚltima actualización : 2026-10-07
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総長の視察

 イプシロン基地司令室にはデミトリー総長の姿がある。陣中見舞いを兼ねた視察中であり、司令官クェンティン大将と参謀のアーチボルト准将に今後の見通しを聞いていた。「和平交渉はおろか、捕虜引き渡しにも返答はありませんでした。最早、話し合いで決着が付くような状況ではありませんね」 作戦参謀であるアーチボルト准将の話にデミトリーは表情を曇らせた。先の大戦における生き残りは全員が捕虜とされ、イプシロン基地に収容されたままである。「せめて要人でも含まれておれば話は違ったかもしれない。やはり戦争は続いていくのだな?」「大艦隊が母星ゼクスを発ったと確認されております。最短で十日ほど。遅くとも二十日以内にゲートへ到着するでしょう。大戦に加わらなかった艦隊と合流するものと思われます」 アーチボルトが続けた。何度も偵察を行っているGUNSはカザインに動きがあったことを確認しているようだ。「総長、悲観することはありませんよ? 長期戦になればカザインが不利であるのは傍受した内容からも明らか。次の戦闘を勝利さえすれば、自ずとその先が見えてきます。それに我々とて無策で挑むわけではありません。重イオン荷電粒子砲の増設も順調ですし、疲弊した部隊への補充も滞りなく完了しております。準備は万端であると断言致します」 クェンティンが付け加えるように言った。規模は前回を軽く超えてくると考えられているが、彼は今回も自信満々の様子である。「カザインの母星といったが、ゲートからどれほど離れているものなのだ?」「こちらの距離にして約200AU。ユニック群は最初に観測された頃から移動していない模様です。星系は太陽系と比較にならないほど巨大なものであります」 もしかすると他にも居住地があるかもしれないとクェンティン。現在は敵の警戒を掻い潜っての偵察となる。情報が限られてしまうのは仕方のないことであった。「次戦を乗り越えられたのなら、我々は次なる段階へと進む予定です」 「ああ、報告書を読んだ。確かS・O・A計画であったか……?」 続けられた話にデミトリーが頷きを返す。逐一報告を受けている彼は軍部主導での計画書にサインを終えている。「和平が望めないのであればやむを得ません。迎え撃つばかりが戦争ではない。我々は彼らを威圧し、また我々の姿を見せつける必要がございます」 イージスの盾と呼ばれるその計
last updateÚltima actualización : 2026-10-08
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ミハルとジュリア

 ようやく編成が完了した301小隊。本日は宙域を貸し切ってシミュレーターによる大規模な演習を行っていた。「ジュリアもっと早く! 照射ラグをフォローしてよ!」「りょ、了解……。しかしミハル、さん付けはどうしたんだ?」「敬語は使えるパイロットにしか必要ないのよ!」 ミハルたちは苦戦していた。どうにも息が合わない。ミハルが思うような支援をジュリアは掴みかねていた。「姉貴みたいな奴だな……」 「ぶつくさ言わない! 次来るわよ!」 実際の戦闘と同じようにワンブロックを丸々使用している。それに伴い敵機の数もミハルが一人で行った時とは比べものにならない規模となっていた。「UW方向から進入、CA108シュート!」 「了解! CA115チェック!」 ミハルとしてはジュリアの位置取りが気に入らなかった。ずっとグレックの支援を受けていたものだから非常に飛びにくい。操縦技術には文句などなかったものの、戦況の予測が自身とは異なっているように感じている。 規定時間を終え、引き上げてくる301小隊の面々。納得がいった者、調子がでなかった者、その表情を見れば明々白々である。ミハルたちはというと間違いなく後者だった。「ミハル君、流石だな。素晴らしい結果だ。実際に見た隊員たちも安心したことだろう」「有り難うございます……」 降機したミハルにベイル副隊長が声をかけた。ミハルの撃墜率に彼は満足しているようだ。  続々と隊員たちが撤収していく中、ミハルとジュリアはまだドックに残っている。「私たちには時間が必要ね……」 「すまん……。お前はどう飛んで欲しいんだ? いまいちミハルの意図が分かりづらい」 ジュリアが息の合わなかった理由を話す。急造のコンビであったから原因は明らか。やはり短期間で息を合わせるのは難しかった。「グレック大尉は理解してくれるけど? それに何かジュリアは位置取りが変なんだよ。何か気持ち悪いの!」「気持ち悪いって酷いな? 俺はちゃんとトレースしてるはずだぞ?」 二人は映像で見直すことにした。埒のあかない言い合いよりも効果的であると。「ここよ! 何で真後ろにいるの!? こう外側、W方向に回って牽制してくれないと、私がUW方向にいるCA90に向かえないじゃない?」「いやお前、W方向に出るとE方向が疎かになるだろう? CA90とは距離があったし、CA
last updateÚltima actualización : 2026-10-09
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似たもの同士

 一週間が過ぎていた。誰も口にしなかったが、次戦の予感を覚えている。いつ始まったとしても動揺しないように各員が覚悟を決めていた。 ミハルはアイリスの病室を訪れている。かといって見舞いとかではない。アイリスに呼び出されてしまっては無視できなかっただけだ。「悪いな。このような見舞いの品まで持参するとは背丈と同じで可愛い奴だ!」「身長のことはほっといてください! それで要件は何ですか? これでも私は忙しいんです!」 相変わらずそりの合わない二人。早くもミハルは顔をしかめていた。「あれから一週間が経ったからな。近況を聞こうと思ったのだ。訓練の内容は常に報告を受けているが……」 アイリスの要件はミハルの近況であるようだ。だが、ミハルの調子ならば報告を受けているから聞くまでもないはず。ならばとミハルは質問の真意を汲み取っている。「時間がかかりそうです。根本的に私とはフライトの方向性が違うんじゃないかと……」「すまない。あいつは決められた通りに飛ぶのは得意なんだが、どうにも発想力が乏しい。貴様と対極にいるようなパイロットだ。まあしかし、あいつを301小隊に引き留めてくれたことには感謝しかない」 二人が話しているのはジュリアのことらしい。やはりアイリスも姉であった。自身が戦列を離れた今、隊での居場所がなくなってしまうことを危惧していたようだ。「高望みはしていないんですけど、どうにもタイミングがずれてもどかしいです」 言葉は濁したが、ミハルは割と限界を感じていた。自由に飛ぶことを許さない支援機に疲れすら覚えている。「だとしたらミハルが合わせてくれないか? ジュリアの支援を先読みし、機動を組み立てていくのだ」「それ本気で言ってます? 私は貴方の記録を抜こうと頑張ってる。余計な機動は足かせでしかありません!」 ミハルは強く拒否を示した。だが、アイリスは不敵な笑みを浮かべている。どうにも嫌な予感がしてならない。「先の戦闘で私がジュリアに合わせて飛んでいたとしてもか? 貴様は自由に飛び回り、私はハンデを負いながら戦った。果たしてその二つの結果は平等だ
last updateÚltima actualización : 2026-10-10
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努力の成果

 午後八時を回り、ミハルはキャロルと食事を取ったあと自室で雑談をしていた。 そんな折、思い掛けず部屋のチャイムが鳴る。「あれ? 誰だろうね?」 キャロルが応対に出ていく。ミハルは買ってきたおやつを頬張りながら、我関せずといった様子だ。「ミハル! ジュリアさんって方よ?」 ところが、来客はミハルに用事らしい。夕食後に何の用だと、ブツクサ言いながらミハルは重い腰を上げる。「何よ、ジュリア?」 不機嫌さを露わにしながらジュリアに尋ねた。急用であったのは明らか。息を切らせてやって来た彼の用事が雑談であるはずはない。「いや、悪いな! どうしても見て欲しいデータがあるんだ!」 ギアを片手に嬉々として話すジュリアに、ミハルも何かを感じ取っていた。明日にして欲しいところではあったが、彼の表情を見ると帰れとも言い出せない。「まあ入れば? キャロルに妙なことをすれば、ぶっ飛ばすけど?」「するかよ! 別に立ち話でも良いんだが……」 困惑するジュリアを放置し、ミハルは奥へと戻ってしまう。過度に気が引けたものの、ジュリアは言葉に甘えてお邪魔することにした。 非常に女の子らしい匂いがする。自室のむさ苦しさとはまるで違う。ジュリアは正直に動揺していた。「ギアに入ってるのは何? 早く見せなさいよ!」 まるで気にする様子のないミハル。少しは気を遣えと小さく愚痴をこぼしながら、ジュリアはギアのデータをミハルへと送る。「さっきまでシミュレーターをしていた。これはそのデータだ。かなり上手く飛べたと思う。お前ならどう感じるかを聞きたい」 夕食も取らずにジュリアは自主訓練をしていた模様だ。居残りに付き合った技師を気の毒に思うけれど、そんなことよりもミハルは渡されたデータに興味を持った。 ミハルは言葉もなく映像を再生し始める。一方のジュリアは目を泳がせていた。姉がいたから女性には慣れていると信じていたのに、どうしても視線を合わせられない。「そういや姉貴の女子力は最低レベルだっ
last updateÚltima actualización : 2026-10-11
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大戦、再び

 にわかに緊張が高まっていた。既にカザインの主力艦隊はゲートに到着している。偵察機の飛来頻度も増し、再戦の時がそう遠くないことを感じさせていた。「もう三日になるか。偵察機が増えたのは……」 そう漏らしたのはイプシロン基地司令のクェンティン・マクダウェルだ。「二度目の侵攻が予想されます。今回はかなりの戦力を投入してくるはず。ですが、我々の準備も抜かりありません。必ずや勝利しましょう」 クェンティンの呟きに応えたのはアーチボルト参謀である。防衛に余程の自信があったのか、彼は笑みさえ浮かべている。 慌ただしい司令室。厳戒態勢が続いており、末端の人間は休む暇もなく働いていた。さりとてクェンティンの出番はまだのようだ。葉巻を燻らせたり、雑談を交わす他は部下たちの仕事ぶりを眺めるだけである。 だがその刹那、突如として計器類に反応があった。瞬間的に全ての警告灯が光を発する。「ゲート全面に熱源反応多数! ビームきます!!」 ソロモンズゲートが光を帯びた。直径百キロというゲートがまばらに煌めく。それはビーム砲による一斉射撃に他ならない。「ダミー戦艦並びにダミードック消失! 被害報告ありません! 第二波きます!」 連射するようなビーム射撃。ゲートの直線上から艦隊を引き離すためだろう。ただデコイが破壊されただけで実害はない。宙域の爆発は開戦を知らせる合図でしかなかった。「ようやくお出ましか……」 クェンティンがフンと鼻を鳴らす。思えば焦らされ続けた三日間だった。彼はまるで開戦を心待ちにしていたかのような表情である。「続いて艦隊! その数、五百隻! 座標転送します!」 「機雷の射出急げ! 重イオン荷電粒子砲起動! 一隻たりとも抜かれるなっ!」 クェンティンの指示が飛ぶ。彼は今回も冷静であり的確だった。「艦首から飛翔体が射出されました! これは……誘導弾です!」 ところが、戦況は想定通りに運ばない。敵艦は艦首に砲台を装備しており、艦の全貌が現れるよりも先に攻撃を開始していた。「重イオン砲、三十
last updateÚltima actualización : 2026-10-12
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ミハル、出撃

 第八ドックに隣接する詰め所へと301小隊は集まっていた。 現在は待機中。交戦が始まったのは既に通知されていたが、無人機を除いた航宙機部隊はまだ配置についていない。そわそわと詰め所を彷徨く者や無意味な雑談をする者。緊張を和らげる術は様々であったけれど、そんな中ミハルは椅子に座って音楽を聴いていた。「戦闘配備命令だ! 出撃するぞ!」 ベイル副隊長の号令が詰め所に木霊する。まだ交戦が始まって五分足らず。有人機部隊の最前列を守護する301小隊はいの一番での出撃となった。「おい、ミハル。出撃らしいぞ」 ジュリアが声をかけると、彼女は言葉もなくギアを操作し音楽を止めた。スッと立ち上がり、パイロットスーツを首元まで締める。 徐に歩き出したミハルは、ようやくとジュリアに視線を合わせた。「始まるのね?」 「ああ、必ず勝とう……」 自分でも不思議に思うほど、ミハルは落ち着いていた。数ヶ月前は再三にわたって落ち着けと怒られていたというのに、出撃命令が下った今はどうしてか感情の昂ぶりがない。 中央ブロックでの戦闘はシミュレーターにて何度も経験している。前回を遥かに超える大戦が予想されていたけれど、ミハルの心は強くあるままだ。技術面に加えて精神面や身体面も完全な状態に仕上がっていた。「戦おう……。私は戦闘機パイロットなんだ」 ミハルは軍人であり、戦闘機パイロットである。否応なしに戦場へと飛び立つ立場だ。 しかし、逃げだそうとは思わなかった。長らく抱えた個人的な目標だけでなく、この戦争が意味するところを彼女なりに考えたからだ。戦える者が戦わないことには平穏など得られない。戦って勝つしか人類に未来はないのだと。 戦闘機パイロットである自覚はただ彼女に前を向かせた。カザインが侵攻してくるならば全てを撃墜するだけ。戦闘機パイロットはトリガーを引くだけだ。 一番後に詰め所を出ていく。ミハルは口元を結び、もう一度決意を口にした。「戦うために、ここまで来たんだ――――」  ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇  β線配備の部隊は持ち場に入っていた。他の航宙機隊も全てが指定宙域についており、敵機を迎え撃つ準備が整っている。 ミハルもそんな僚機の一つだった。初めての大戦。シミュレーターとは違う張り詰めた空気を感じている。前方で爆発が起こるたび、ミハルは鼓動を早めていた。「ミハル、
last updateÚltima actualización : 2026-10-13
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未知なる規模の戦い

 司令室では各部隊への指示が飛び交っていた。  交戦が始まってから二時間。β線上で両軍が押し合うような状況が続いている。 既に前回の大戦を遥かに超える敵機がゲートより侵攻していた。一方的な戦いとなった前回とは異なり、両軍の戦力は拮抗している。「とんでもない数を送り込んできましたね。もう既に前回の総数を超えています」 参謀のアーチボルトが溜め息混じりに話す。ただ言葉とは裏腹に悲壮感はない。カザインの猛攻も想定内といったところだろうか。「しかし、またもや無人機が目立つな。有人機がいないわけでもないのだが……」 「確かに気になります。第二陣に有人機部隊を組み込んでいるのやもしれません」 今回も敵航宙機部隊は無人機が中心の編成であった。GUNSとしては有り難いことであるのだが、有人機が最後まで姿を現さないなんて話は期待していない。「無人機のハッキングはどうなっている?」「いえ、どうもシステムごと換装されているようです。残念ながら戦闘中のハッキングは難しいですね」 先の大戦後にGUNSは回収した無人機を解析していた。その過程で発見したセキュリティホールを利用し、戦闘中にハッキングするという大胆な作戦を立てていたのだ。しかし、カザインはそれに気付いていたのか、対策を講じてきた模様である。「ならば蹂躙するしかないな。β線及びγ線の艦隊は戦線を押し上げろ! α線に配備された艦隊はゲートへ直接撃ち込め! カザインの大将をいぶり出してやれ!」 戦況を動かす指示が飛んだ。無駄撃ちとなる可能性が高かったものの、クェンティンは挑発と威嚇の意味を込めてビーム砲の照射を命令している。持久戦となる前に敵主力部隊の侵攻を促そうとしていた。   ミハルたち301小隊は依然として戦線を維持していた。ゲートのど真ん中に位置する最も攻撃の激しいエリアであったが、そこはエース部隊である。怒濤の勢いで押し寄せる無人機からエリアを守護していた。『こちらセラフィム・ツー、全隊員に告ぐ。W1ラインEブロックがβ線を抜かれたようだ。現在W1ラインFブロッ
last updateÚltima actualización : 2026-10-14
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奮闘するジュリア

 司令室は騒然としていた。第二陣と思われる艦隊がゲートを通過してきたのだ。大艦隊に加え飛来する航宙機は有人機の比率が高い。α線上は再び敵軍に埋め尽くされていた。「これでは補給もままならないですね……」「中央ブロックの部隊には今しばらく我慢してもらうしかないな。代替部隊には配置先の変更を通達しろ。E1EブロックとW1Eブロックを重点的に補充だ」 クェンティンは悩んでいた。戦闘開始から三時間が過ぎて、推進剤の補給やエネルギーチャージ。更にはパイロットの休憩が必要な時間となっていたからだ。この時間になって大量の新手が侵攻してきたとあっては作戦の練り直しを迫られてしまう。「中央ブロック各隊の補給状況はどうなっている? どれくらい持ちそうだ?」「持って一時間でしょうね。疲労に加え、エリアが拡大しています。欠損機は随時補充していますが、最初から戦い続けているパイロットの疲労は蓄積しています……」 アーチボルトの返答は色よいものではなかった。しかし、有人機を加えた大軍の相手が代替部隊に務まるはずもない。「果たして一時間でどれほど削ってもらえるだろうか……」 侵攻してくる艦隊への対応は順調である。問題は航宙機だ。浮遊トーチカによる砲撃や重イオン砲などではとても狙えなかった。「司令、一時間後に戦線を下げてみては如何でしょう?」 唐突にアーチボルトが進言する。それは意外な提案であった。だが、顔をしかめたクェンティンを見る限り、了承などされないだろう。「貴様、本気か? とち狂ったんではないだろうな?」「割と本気です。一時間後にトップパイロットたちが戦線を離脱しますと、必ずやカザインは戦線を押し上げるでしょう。どうせならば離脱と同時に戦線を下げ、僚機の密度を高めるのです。それは同時にα線上に圧縮されていたカザイン機の分散にも繋がります。危うい作戦ではありますが、私が考える最善の策でもあります……」 一時的な後退は攻めの姿勢であるという。確かに結果が同じであれば試す価値はあるのかもしれない。「分かった。ただし補給並びに休憩は三十分とする。デルタ線にまで攻め入られては押し返すのが困難だ。その内容で通達しておけ」「致し方ありませんね。以降は敵軍の様子を見て休憩してもらうことにしましょう。一時間後の交代準備を手配して参ります」 交代時間の変更に続き、通常一時間与え
last updateÚltima actualización : 2026-10-15
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