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火車──カシャ──

 親戚の葬儀ため、久方ぶりに田舎へ帰った。 正月には酒を飲んだ赤ら顔で、楽しそうに話してるのをみたことがある。 そして、いつも飼い猫を膝に乗せてそれこそ猫可愛がりしてたものだ。 それくらいの親戚。 この地方では、式が終わった後一晩は、ロウソクの火を絶やさない、という風習がある。 遺骸をさらう物の怪が出るからだ。 火車、と言ったか。 祖父曰く 死体にゃいろんなもんが詰まってる。 その人が生前積んだ業とか福運なんかが、まだこびりついてるもんよ。 奴らはそれが欲しくて、妬ましくて仕方がねぇのさ。 その中で、なぜか僕がそのロウソクの寝ずの番を任された。 とはいえ、特別やることはない。 ロウソクの火を絶やさなければ、なにをしていてもいいのだ。「にゃーお」 猫が入ってきた。 確かこの猫は、このおじさんの飼い猫。 猫は何事もなかったかのようにその場に座る。 じぃ、と遺体の顔を眺めていた そういえば、火車の正体は猫じゃないかと言われることもあるらしい。 もしかしたらこの猫も……。「にゃあ」 猫は僕の顔を見て小さく鳴いた。 僕は緊張していた。燭台を手に取り、身構える。 その時、フッと電気が消えて、あたりはロウソクの光だけになった。 そして。 がたり、と戸がひらく。 ロウソクの火だけではよく見えないが、あれは、人間、では、ない。 生臭い匂いがして、ロウソクの炎が揺れる。 火を消そうとしているのだ! 身体で息を遮り、ロウソクをまもる。 その時。「ふぎゃああああっ!」 猫がすごい勢いで、飛びかかった。 そして、謎の影と猫は取っ組み合いをしながら、外へと行ってしまった。 へたり、とその場に倒れこむと同時に、電気が復活した。 その日はそれ以上何もなく終わったが、あれから猫は行方がしれなくなってしまったという。 最後の最後まで、飼い主を慕い火車という怪異から主人を守ったのだ。 葬儀を終えて、思う。 猫は火車と同視されるが、火車から遺骸を守る役目を持っているのではないか。 守るのに失敗した所を家主に気づかれて、妖怪と勘違いされたのではないか。 そんな気がしてならない。
last updateDernière mise à jour : 2026-08-16
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百々目鬼──ドドメキ──

店で買い物中、不穏なブザー音がなる。 警備員や店員が集まり、ひとりの女性を捕まえていた。 どうやら、万引きのようだ。 この一週間で、万引きの現場を見るのはこれで5回目。 嫌な予感が拭えない。 泥棒とセットで付いてくる、怪異、か。 そして、次の日。 6回目を見かけてしまった。 同じ大学でたまに講義も一緒になる奴だ。 俺は別に正義漢ぶるわけでもないし、犯罪を止めるほど勇気があるわけでもない。 しかし、今回は……。 祖父の言葉が蘇る。 言っちまえば、奴らはただの幻覚さ。 人に見られる、見られていたらどうしよう。 そう言った被害妄想が奴らに取り付くのさ。 昔は妖怪の仕業だと考えてたわけだ。 俺は思わずそいつの手を掴んで言ってしまった。 「みんな、見ているぞ!」 そいつは戸惑ったようになにかを怒鳴りながら逃げていった。 足元には万引きしようとした商品。 俺はやっちまった、と思いながら、商品を元に戻す。 少なからず力のある俺が吐いた言霊は、アイツに干渉するだろうか…。 数日後。 あれから万引き現場は見なくなった。 そして、例のアイツは精神的に参ってしまい、病院に通っているそうだ。 曰く。 常に誰かに見られてる。 腕に目があるんだ。 潰しても、潰しても、何度でもできてくる。 視線が見えるんだ。 俺は、あの時に俺に付いていたものを最悪の形でアイツに受け渡してしまったんだ。 盗人に取り付くというのを、百の目を持つ鬼を……。
last updateDernière mise à jour : 2026-08-16
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轆轤首──ロクロクビ──

第13話 轆轤首──ロクロクビ── 相談があるんだけど……。 放課後、大学近くの喫茶店にいた僕に、彼女らは話しかけてきた。 なんでも。 自分の首が伸びるというのだ。 寝てる時に限らず、講義中や部屋で勉強してる時など、場所、時間を問わないらしい。 なぜ僕に? という疑問もあった。 が、なぜか大学で僕が霊能力者だという噂が広がっているらしい。 誰がそんな噂を……。 それはいいとして、僕は彼女らの良くない噂も耳にしている。 イジメをしている、と。 好きでもない男に告白して、舞い上がる奴を、嘘でしたー、と言って馬鹿にしたり。 漫研のオタク達を蔑んだりしていると。 多分今回も自称霊能力者である僕のことを馬鹿にしにきたのであろう。 だから、僕は見えたままのことを彼女たちに伝える。 貴女は幽霊に取り憑かれたりなんてしていない。 精神の病だ、と。 スマホで「不思議の国のアリス症候群」というのを検索して見せてやった。 それは、自分以外のものが、巨大化して見えてしまう、幻覚の一種だ。 そういった類の病だ、と断言した。 彼女らは、わかりづらく舌打ちをして、挨拶をして去っていった。 祖父に言われた言葉が、脳裏をよぎる。 因果応報を知ってるか?自分のしたこと(原因)には、必ずつけ(結果)が生じる。  それが巡り巡って自分の所に返ってくるのさ。 いいことにつけ、悪いことにつけ、自分か、自分が一番大切だ、と思う者に返ってきやがる。 きっと、彼女たちもそのうち悪行の業が返ってくるのだろう。 それから数日。 彼女らの1人が亡くなった。 混雑に巻き込まれる、電車に轢かれたのだ。 ちょうど首を切断するように電車にひかれた。 のだが。 首の皮だけは一枚繋がっていたという。 まるで、轆轤首のように。
last updateDernière mise à jour : 2026-08-18
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口裂け女──クチサケオンナ──

 数十年前、日本を恐怖の渦に巻き込んだ口裂け女。 ネットでほかのホラーが流行るにつれ、全く姿を見なくなった。 が。 それは時期ではないだけだ。 数年単位で繰り返される、ホラー、オカルトの流行り廃りには原因がある。 ただ、存在が希薄になり、普通の人間には見えなくなってしまっただけなのだ。 そして、僕みたいな見える人間にとっては、奴らは未だに脅威でしかない。 特に日本人は、海外の人が驚くくらいにマスク着用率が高い。 感染防止、衛生。 理由は様々だが、その中に口裂け女がいないと、なぜ言い切れるのか? 祖父曰く。 奴らは恨み辛みを一身に受けて生まれちまった可哀想な忌子よ。 人が人を恨み、その恨みは憎しみとなって他者を傷つける。 そして、憎しみが許容量を超えた時、生きながらにして妖怪さながらの容姿で生まれちまうのさ。 その容姿のためいじめられ、恐れられ、徹底的に排他された忌子は、さらに恨み、憎しみを増して死後、人に仇なす妖怪となるのだ。 その典型的な妖怪が口裂け女だという。 世の中の、地獄にも等しい呪いを受け生まれ、それが発散されている間は、現れない。 そして、呪いが一定値を超えると、再び新たな妖怪として、この世でブームになるのだ。 人の輪廻から外れた、可哀想な妖怪。 人が人を恨み、憎み、妬む。 負の感情がなくならない限り、その輪廻の輪から抜け出すことはできない。 口裂け女が出てから数十年。 不平不満が募るこの世界に今度はまた、別の怪異として忌子は誕生するのかもしれない。
last updateDernière mise à jour : 2026-08-19
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海難法師──カイナンホウシ──

第15話 海難法師──カイナンホウシ──僕はここ二、三日、毎晩夢を見るの。暗い。真っ暗な浜辺に立っているのだ。身体は動かせない、声も出ない。そんな中、真っ暗な海から何かが上がってくるのだ。最初は一人。こいつが海難法師だ。それは夢を追うごとに増えていき、俺を取り囲む。その時、祖父の言葉がおもいだされた。祖父曰く。夢ってのは、現実を暗示してるのよ。特に、おめぇみてぇな力を持った奴の見る夢は要注意だ。下手すりゃそれだけでお陀仏だ。ただ、夢にゃヒントが隠されている。それをうまく見つけ出して、奴らを満足させりゃ、助かるだろうよ。ヒント、ヒント!?ヒント!いくら考えても出てこない。いや、まて。何故ぼくはこんな暗闇の中で奴が「海難法師」だと気付けた?顔どころき服装すらもわからないほどの暗闇なのに。ならば、赴くしかない…。ここが海難法師伝説が残る場所。俺は何の迷いもなく、一つの浜辺に来ていた。こここそ、夢で見たあの場所だ。不意に、冷気を浴びた様な悪寒が走る。ーー後ろに誰かいる。ひたり、ひたり。と足音が付いてくる。時折肩に手が触れる。そして生臭い息を耳元で吐きかける。おそらく今夜夢を見たら俺は死ぬ。それだけは避けたい。考えろ!かんがえるんだ!奴らは海から現れた。何の目的でだ?この先には…。一軒のお寺!俺は一目散にお寺に駆け込む。そして、忙しいであろう住職に、何とか頼み込んで、お話を伺うことができた。海難法師はここで祀ることにより、その怪異を沈めていたそうだ。しかし、その御本尊が何者かに破壊されたらしい。ご住職曰く、たった今御本尊が出来上がり、また海難法師を封印しようとしていたところだった、と。そこへ海難法師に取り憑かれた俺が来たものだから、驚いたらしい。ただ一つ疑問なのは、なぜ俺だったのか。塵芥の雑多な怪異ならいざ知らず、本物の怨霊に出くわした。ーーあなたにはこれを渡しておきましょう。それは祝詞。その歌に宿りし言霊が、悪霊からその身を守ってくれるらしい。しかも、これは海難法師の元となった人物が高僧につくらせた、霊験あらたかなものらしい。俺はうやうやしく礼をして、お寺を後にした。サルボボからはじまり、これを機にレアなアイテムが俺の元にあつまりはじめたのだった……。
last updateDernière mise à jour : 2026-08-20
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青行燈──アオアンドン──

 ここはオカルト研究部の部室。 今日はここで、百物語をやるらしい。 このオカ研がある棟は昔、生徒が自殺をし、今もその霊が彷徨い出るという噂がある。 そして、見える質でもある俺が、なぜか呼ばれていた。 おかしい。 部室で飲み食いするだけという話だったのだが、いつのまにか百物語になっている……。 はっきり言って、この棟には霊はいない、断言できる。 しかし、雰囲気に押され、俺まで怖い話をしだしてしまった。 そして。 90話目が終わる頃。 耳鳴りがし始めた。 怪異が押し寄せてくる。 91…92…と終わりにつれ、耳鳴りは声に変わっていた。 今ならまだ間に合う。 今やめれば、怪異は起きないなのに。  百話目は俺だった。 祖父曰く 百物語ってのは、一種の降霊術みたいなもんよ。 物も百年経ちゃあ、立派な妖怪になる。 怪談だって百話やりゃあ、一つくらいは本物になるってもんだ。 百話目に話すのは、青行燈。 百物語が終わると現れる怪異。 この世とあの世のトンネルをつなげ、ここに怪異を呼び起こすのだ。 しかしそれは、百話目を話している僕自身なのか? ガタガタと扉が震えて、ロウソクの火が消える。 周りは怯えて、逃げ出そうとするものもいた。 そう、これこそが本物の怪異だ!…。……。………。 翌日。 一人でオカ研の部室で寝ている僕が、メンバーに発見された。 オカ研の連中に聞いても、百物語などやっていない、という。 ならばあれは……。 最初から最後まで、奴らの思う壺だったのかもしれない。 このオカ研のある棟に、魔魅穴が開いてしまった。 こうして部室棟の怪異は本物になったのだ。
last updateDernière mise à jour : 2026-08-22
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ぬらりひょん

 最近よくある怪異。 ふとした拍子に現れ、足元にまとわりついたり、腕に絡まる、ヌルりとした感触。 現れては不意に消え、忘れたころにまた現れる。 そして増えていく妖怪。  昔に比べ、格段に増えているのを感じる 最初はなにかわからなかったが、祖父の言葉を思い出した。 祖父曰く。 ヒョンてのは、思いがけない拍子に、という意味で、感触はまさにぬらり、だ。 だからぬらりひょんとかいう名前になっちまった。 決して、妖怪の総大将なんかじゃねぇ。 しかしな。 こいつがひょんなことから、怪異を引き連れてやってくることがある。 気をつけろ、今もオメェの後ろにいるかもしれんぞ。 大学に入り、今まで以上に世界が広がった僕の前に現れた、ぬらりひょん。 妖怪の総大将ではないにしろ、こいつが数々の怪異を持ち込んだのだろうか。 こいつ自体は無害だとしても、現れる怪異はまったく持って無害ではない 目も効かぬ暗闇の中にそれはいるのかもしれない。 ぬらりひょんに率いられた百鬼夜行が、今夜も俺の方へと近づいてきているのを感じる。 見知らぬところから、少しずつ、少しずつ。  だが確実に、奴等は僕らの元に近づいてきている。 皆も気をつけた方がいい。──奴らは、暗闇の中にいる──
last updateDernière mise à jour : 2026-08-23
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雪女──ユキオンナ──

第18話 雪女──ユキオンナ──山で遭難した男は、雪女と約束をする。「私の事を誰にも言わなければ、命は助ける」その後男は、雪女のことを誰にも話さずに暮らしていた。数年後。妻帯者になった男は、もう大丈夫だろう、と妻に雪女のことを話してしまうのだ。すると妻は妖怪に変幻する。その姿はまさに雪女。そして、約束を破った男は氷漬けにされ、雪山へと連れ去られたという。祖父曰く。神や悪魔や悪霊なんてのは『約束事』が好きな連中だ。それは口約束でも、違反したら逃れられないのさ。奴らと話す時は気をつけろ。魂持っていかれるぞ。もう4月も半ばだと言うのに、ひどく寒い夜があった。ちらりと外を見ると、女が一人で雨の中立ち尽くしている。濡れ女子か?いや、違う。あれは……。僕は慌ててカーテンを閉めた。目は、合っていない。心臓が早鐘を打つように鳴り響く。そして、何の気なしに後ろを振り返る。「見たね…」先ほどの女が後ろに立っていた。「……っ!?」「死ぬか、わたしの事を未来永劫誰にも話さないか、決めなさい」それは言霊。しかし。しかし、僕も言霊は得意な方だ。「み、未来永劫話さない!そ、そのかわり……」僕は頭を回転させる。この場合、おそらく生き続けても、死ぬ間際に僕の魂を奪いに来るだろう。「僕が天寿を全うしたら、天国に行きたいんだ!でなければ…」僕はスマホを見せる。「世界中にあんたのことを、話してやる!」「……?」どうもスマホがよくわからないらしく、一から懇切丁寧教えてあげる。「人間も変わったのね……。あなたの条件飲みましょう。それと」「ま、まだ何か?」「あなた、なかなか物の怪に好かれやすいみたいだから、これを持ってなさい。天寿を全うするまで、あなたの魂はわたしのものよ」それは、氷でできた、タリスマンのネックレス。これはなんなのか聞こうとした時には、雪女はすでに消えていた。しかしこれだけはわかる。僕の口車に惑わされた雪女は、僕が約束を破るか、死ぬまでは僕の味方だ、と。
last updateDernière mise à jour : 2026-08-26
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ア行さん──アギョウサン──

 昼休み。 オカ研の一人から話しかけられた。「ア行さん、って知ってる?」「ア行さん?聞いたことないな…」 いくら僕だって、全ての妖怪を知ってるわけでもない。 そしてこういうタイプの男は、こちらが知らないも図に乗るタイプだ。 案の定、誇らしげに話す。「ア行さんはね、暗い夜道を歩いていると、いきなり背中に飛び乗り、『アギョウサン、サギョウゴ、如何に?』と聞いてくるんだ」 そして、それに答えられない奴は殺されるんだよ」 そう言って、ぼくの肩を叩いて、立ち去ろうとする。 その間際。「3日以内に来るはずだから、気をつけてね」 と言って、今度こそ去っていった。(なんだ、その話か……) ア行さん、アイウエオの三つ目つまり『う』 サ行ゴ、さしすせその『そ』 つまり『うそ』だ。 しかしムカついたし、せっかくだからあいつに仕返ししてやるか。 そして後日、俺はそいつに声をかける。「まだ生きてたみたいだね。答えられたんだね」「おかげさまでね」 あ、ただ。と僕はそいつを呼び寄せた。「アレは、そんな簡単な妖怪じゃないぞ」 目一杯ドスを効かす。「あれは、ア行さんじゃない。『悪行斬』だよ」「え?悪行斬……?」「昔、悪行を犯した者は体に刺青を入れられたんだ。社会に出ても、こいつは犯罪を犯した奴だ、とわかるように」 俺はそいつの目をじっと見る。「悪行斬。それでもまた悪行を重ねた者は、最後には斬られるんだ」 祖父曰く── 言葉は時代とともに変化して、尾びれ背びれが付き、全く話の内容が変化するんだ。 その怪異を根本まで遡ると……。 案外危険なのさ。 そう、遡ったのだ、ア行さんを。 ア行さん、サ行ご如何に。答えはうそ。 嘘という悪行を重ねる妖怪になってしまったのだ。 そして、重ねられた嘘という悪行により、悪を斬る妖怪になり、その力を増していく。「随分たくさんの人に嘘をばらまいたみたいだな。気をつけろ、3日以内に来るぞ」「そ、そんな助かる方法は…っ!?」「そいつは悪行を斬るんだ。なら、善行を重ねるしかないのさ」 それからこの男はボランティアに参加したりするようになったらしい。いいことだ。 悪行斬。 あんなの、口から出まかせの『うそ』だったのにな
last updateDernière mise à jour : 2026-08-29
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河童の木乃伊──カッパノミイラ──

 実家に帰った際に、倉庫の奥底の地下から出てきた珍品を見ることとなった。 しかし、その中でも地下室から運び出せないほどのものがあっ た。 少なくとも祖父すらもその存在を知らなかった地下室。 そこにあったのは、河童のミイラ。 テレビの特番とかでも見かけたこともあるし、それが、偽物だとも判別したはずだ。 これもその類だろう。でも。 『見える性質』の僕には見えてしまった。 これは、たしかに河童じゃない。 そんな生易しいものじゃない。 これは、特別強力な呪物だ。 祖父曰く。 即身仏。それは「死んだ人間がミイラになり、自らが御本尊になること」 つまり、このミイラは僧が命をかけてその身を仏にしたものだ。 ありがてぇじゃないか。 だがな。 そうじゃねえのは恐ろしいぞ。 これは「その身をミイラにする事により、相手を呪い殺す呪物となる事」が目的だ。 個人どころか、集落一つ呪い潰してもまだあまりある呪いを放つ禍つ神。 それは、うちの倉庫で丁重に祀られていたのだ。 捨てることも出来ず、社を取り壊すことも出来ず、呪いが雲散霧消するまで奉り続けなければいけない神。 そうしなければ、この世にどんな災いをもたらすか、わかったものではない。  いつになったらその怨嗟は消えるのだろうか。
last updateDernière mise à jour : 2026-09-01
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