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河童の木乃伊──カッパノミイラ──

Author: 葛葉龍玄
last update publish date: 2026-09-01 19:30:14

 実家に帰った際に、倉庫の奥底の地下から出てきた珍品を見ることとなった。

 しかし、その中でも地下室から運び出せないほどのものがあっ た。

 少なくとも祖父すらもその存在を知らなかった地下室。

 そこにあったのは、河童のミイラ。

 テレビの特番とかでも見かけたこともあるし、それが、偽物だとも判別したはずだ。

 これもその類だろう。

でも。

『見える性質』の僕には見えてしまった。

 これは、たしかに河童じゃない。

 そんな生易しいものじゃない。

 これは、特別強力な呪物だ。

 祖父曰く。

 即身仏。それは「死んだ人間がミイラになり、自らが御本尊になること」

 つまり、このミイラは僧が命をかけてその身を仏にしたものだ。

 ありがてぇじゃないか。

 だがな。

 そうじゃねえのは恐ろしいぞ。

 これは「その身をミイラにする事により、相手を呪い殺す呪物となる事」が目的だ。

 個人どころか、集落一つ呪い潰してもまだあまりある呪いを放つ禍つ神。

 それは、うちの倉庫で丁重に祀られていたのだ。

 捨てることも出来ず、社を取り壊すことも出来ず、呪いが雲散霧消するまで奉り続けなければいけない神。

 
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  • 百鬼徒然   提灯お化け──チョウチンオバケ──

     ひどく懐かしいものを見てしまった。 それは今や忘れ去られた提灯お化け。「けけけっ」 と鳴くと、付いて来いと飛んでいく。 祖父の言葉を思い出す。  お化け幽霊、妖怪なんぞは人間が信じちまうから生まれるんだ。 そして、使うものは年代を重ねるごとに変わっていって、古いもんは滅びゆくのよ。 もう使わねぇもの、あんだろ? ああいうのは境を隔てた向こう側に行くのさ。 境の向こう側、と祖父は行った。 時代遅れになり、人からも忘れ去られた妖怪。 それは妖怪たちにとっての天国や地獄のようなものなのか。 赤提灯お化けはフラフラと一軒の酒場に入っていき、そこで姿を消した。「いらっしゃい」 老夫婦が二人で切り盛りするような小さな酒場。 外には赤提灯が、下げられている。 少しはあのお化けも集客になっているのかもしれない。 それは、付喪神のように年月を経てこの老夫婦に、恩返しがしたかったのか……。 たまには美談も悪くない。 そう思ってから数日後。 その酒場は無くなっていた。 なんでも火の不始末で火事になったそうだ。 死者は二人。 あの老夫婦だ。「けけけっ」 またあの声を聞いた。 あれは老夫婦を守るものだったのか、それとも仇なすものだったのか。 最後までわかることはなかった。

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  • 百鬼徒然   河童の木乃伊──カッパノミイラ──

     実家に帰った際に、倉庫の奥底の地下から出てきた珍品を見ることとなった。 しかし、その中でも地下室から運び出せないほどのものがあっ た。 少なくとも祖父すらもその存在を知らなかった地下室。 そこにあったのは、河童のミイラ。 テレビの特番とかでも見かけたこともあるし、それが、偽物だとも判別したはずだ。 これもその類だろう。でも。 『見える性質』の僕には見えてしまった。 これは、たしかに河童じゃない。 そんな生易しいものじゃない。 これは、特別強力な呪物だ。 祖父曰く。 即身仏。それは「死んだ人間がミイラになり、自らが御本尊になること」 つまり、このミイラは僧が命をかけてその身を仏にしたものだ。 ありがてぇじゃないか。 だがな。 そうじゃねえのは恐ろしいぞ。 これは「その身をミイラにする事により、相手を呪い殺す呪物となる事」が目的だ。 個人どころか、集落一つ呪い潰してもまだあまりある呪いを放つ禍つ神。 それは、うちの倉庫で丁重に祀られていたのだ。 捨てることも出来ず、社を取り壊すことも出来ず、呪いが雲散霧消するまで奉り続けなければいけない神。 そうしなければ、この世にどんな災いをもたらすか、わかったものではない。  いつになったらその怨嗟は消えるのだろうか。

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  • 百鬼徒然   雪女──ユキオンナ──

    第18話 雪女──ユキオンナ──山で遭難した男は、雪女と約束をする。「私の事を誰にも言わなければ、命は助ける」その後男は、雪女のことを誰にも話さずに暮らしていた。数年後。妻帯者になった男は、もう大丈夫だろう、と妻に雪女のことを話してしまうのだ。すると妻は妖怪に変幻する。その姿はまさに雪女。そして、約束を破った男は氷漬けにされ、雪山へと連れ去られたという。祖父曰く。神や悪魔や悪霊なんてのは『約束事』が好きな連中だ。それは口約束でも、違反したら逃れられないのさ。奴らと話す時は気をつけろ。魂持っていかれるぞ。もう4月も半ばだと言うのに、ひどく寒い夜があった。ちらりと外を見ると、女が一人で雨の中立ち尽くしている。濡れ女子か?いや、違う。あれは……。僕は慌ててカーテンを閉めた。目は、合っていない。心臓が早鐘を打つように鳴り響く。そして、何の気なしに後ろを振り返る。「見たね…」先ほどの女が後ろに立っていた。「……っ!?」「死ぬか、わたしの事を未来永劫誰にも話さないか、決めなさい」それは言霊。しかし。しかし、僕も言霊は得意な方だ。「み、未来永劫話さない!そ、そのかわり……」僕は頭を回転させる。この場合、おそらく生き続けても、死ぬ間際に僕の魂を奪いに来るだろう。「僕が天寿を全うしたら、天国に行きたいんだ!でなければ…」僕はスマホを見せる。「世界中にあんたのことを、話してやる!」「……?」どうもスマホがよくわからないらしく、一から懇切丁寧教えてあげる。「人間も変わったのね……。あなたの条件飲みましょう。それと」「ま、まだ何か?」「あなた、なかなか物の怪に好かれやすいみたいだから、これを持ってなさい。天寿を全うするまで、あなたの魂はわたしのものよ」それは、氷でできた、タリスマンのネックレス。これはなんなのか聞こうとした時には、雪女はすでに消えていた。しかしこれだけはわかる。僕の口車に惑わされた雪女は、僕が約束を破るか、死ぬまでは僕の味方だ、と。

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