一度たりとも。その一言は、あまりにも軽く聞こえた。だがそれは、知凛をその場に釘付けにする何よりも重い鎖だった。彼はまるで身動きひとつ取れなくなったかのようだった。彼は彼女を見つめた。月光の下、揺らぎひとつない顔を。その瞳にはっきりと浮かぶ冷たさと決然とした拒絶を。全身の血がその瞬間氷のように凍りつき、そして次の瞬間には烈火となって身の内を焼き尽くしていった。彼が激しい動揺で今にも立っていられなくなりそうになったそのとき、奥の部屋の扉が軋んだ音を立てて開いた。清河が提灯を手に姿を現した。上着を羽織っただけの姿を見るに、庭の物音で目を覚ましたのだろう。庭で対峙する二人の姿を見て眉をひそめると、大股で歓宜のもとへ歩み寄り、ごく自然に肩を抱き寄せた。その目は警戒するように知凛へと向けられていた。「歓宜、こんな時間までどうして中に入らないんだ?この方は……」彼の視線は知凛の顔にとどまり、昼間の店にいたあの男だと気づくと、いっそう疑念を深めた。歓宜はその腕の中に身を寄せた。全幅の信頼と甘えを見せる仕草だった。彼女は清河に安心させるように微笑みさえ向けた。「大丈夫。こちらの方は、道に迷われただけよ。少し道を尋ねられただけ。さあ、入りましょう。囡囡が掛け布団を蹴飛ばしているはずだから」その言葉が終わるか終わらないかのうちに、家の中から寝ぼけた泣きそうな声で娘の呼び声が聞こえてきた。「母上……父上……だっこ」清河はすぐさま言った。「ほら、囡囡が目を覚ました。早く戻ろう」彼は知凛に向かって儀礼的に軽く会釈すると、よそよそしく、けれど礼を失わない口調で言った。「お客様、夜も更けました。粗末な家で失礼ながら、これ以上お引き留めすることもできません。どうぞお引き取りを」言い終えると、歓宜を抱き寄せたまま身を翻し、家の中へと戻っていった。最初から最後まで、彼は歓宜を自分の側へ引き寄せ、守るように庇い続けていた。知凛はその場に立ち尽くしたまま、目の前で扉が閉ざされるのを見つめていた。その内側の灯りも、あの家族三人の温かな世界も、すべてが遮断された。冷ややかな月光が、その孤独な影を照らしていた。彼は拳を握りしめた。爪が掌に深く食い込み血が滲んだが、痛みなど感じなかった。胸の奥を抉る絶望が、すでに他のあらゆる痛みを凌駕してい
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