録音魔石を再生する日、セレスティアは朝から喉が渇いていた。 水を飲んでも、紅茶を飲んでも、少しも潤った気がしない。 喉が渇いているのではなく、体の内側が乾いているのだと思った。 昨日、薬草保管庫から見つかったもの。 ミレイユの手紙。 薬の処方記録。 ノエルに渡さないで、と書かれた封筒。 そして、録音魔石。 透明な小さな石は、今はリュシアンの書斎の机の上に置かれている。 何も知らない人間が見れば、ただの装飾品のように見えるだろう。 光を受けて、静かに輝いている。 だが、その中に声が入っている。 誰の声か。 ミレイユか。 アルベルトか。 レイモンド伯爵夫人か。 それとも、ジル・サルヴァか。 分からない。 分からないことは怖い。 けれど、聞かないままにするほうが、もっと怖い。「顔が冷たいな」 書斎に入るなり、リュシアンが言った。 セレスティアは目を上げる。「冷たい顔とは?」「怒っている顔だ」「怒っています」「怖いか」「怖いです」「両方か」「両方です」 そう答えるのに、もう抵抗がなくなっている。 怒っている。 怖い。 その両方を同時に持つことを、ノエルから学んだのかもしれない。 リュシアンは机の前に立っていた。 隣には財務監査院の監査官。 記録官もいる。 女性薬師も呼ばれていた。
Last Updated : 2026-09-05 Read more