All Chapters of 愛も憎しみも、もういらない: Chapter 21 - Chapter 22

22 Chapters

第21話

「全部あんたのせいよ!」車を降りた途端、母の怒声が飛んできた。「最初から私たちを罠にはめるつもりだったんでしょう!実の親をこんな目に遭わせるなんて、とんだ恩知らずだわ。今日お金を返さないなら、親子だからってもう容赦しないからね!」「親子?」思わず笑いが漏れた。「今さら親子の情を言うの?」「そもそも、あれだけのお金を出せって私が頼んだ?黒瀬製薬に全財産をつぎ込んだのも、自分たちで決めたことでしょ。美羽を黒瀬家に嫁がせて、それで自分たちまで得をしようとしたのも、全部そっちの都合。それですべて失ったからといって、今さら私に責任を押しつけられても困るから。自分で賭けて、自分で負けた。それだけでしょ。私には何の関係もないし、これ以上つきまとうなら警察を呼ぶから」そこまで言うと、さすがに二人の勢いが鈍った。「それに、そもそもあのお金は二人のものじゃないよね。東側の商業地一帯は、おばあちゃんが私に残してくれたものだった。それを遺言どおり私に渡さず、自分たちのものにしたのは誰?」二人が黙り込むのを見て、私は続けた。「私は取られたものを取り返しただけ。返す理由なんてないし、今さら返せなんて、よくそんなことが言えるね」「でたらめを言うな!あれは俺たちの財産だ!お前一人のものじゃない!」父と母が口々に怒鳴りながら詰め寄り、そのまま私をつかもうとしたが、手が届くより早く京司が2人との間へ入り、私を背中にかばった。「触らないでください。これ以上彼女につきまとうなら、弁護士を通して正式に対応します」その言葉に、父と母は伸ばしかけた手を引っ込め、それ以上近づいてこなかった。そんな二人を見ても、もう怒りすら湧かない。とっくに壊れた関係に、これ以上付き合うつもりもなかった。京司の手を取って背を向けた、その瞬間、激しいエンジン音が背後から迫ってきた。振り返ると、美羽が顔を歪め、私だけを睨みつけたまま車でまっすぐ突っ込んできていた。「詩乃!あんたなんか死ね――!」
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第22話

車はもう目の前まで迫っていて、避ける間もなかった。「詩乃!」京司がとっさに私を背後へかばった、その瞬間、横合いから黒い車が飛び込み、美羽の車の側面へ激突した。ハンドルを握っていたのは恭介だった。二台は激しい衝撃で道路の中央へ弾き出され、車体を大きくひしゃげさせながら止まったが、そこへ避けきれなかった大型トラックが突っ込み、轟音とともに炎と煙が一気に上がった。「美羽――!」父と母の叫び声が響き、二人はその場に崩れ落ちた。あまりの光景に動けずにいる私を、京司がすぐに抱き寄せ、事故現場から顔を背けさせた。「見なくていい。こっち向いて」……事故のあと、美羽は命こそ取り留めたものの、両脚に麻痺が残った。恭介も5度にわたる救命処置の末、どうにか一命を取り留めたものの、重い後遺症が残った。それから私は、恭介の入院する病院を訪れた。病室の前まで付き添ってきた京司が、肩にそっと手を置く。「外で待ってる」「うん」扉を開けると、消毒薬の匂いが漂う白い病室の奥で、青白い顔をした恭介がベッドに半身を起こしていた。私に気づくと、その視線がわずかに動く。「詩乃……俺たち、もう一度だけやり直せないか?これから先は、ずっと償っていく。それでも……駄目か?」私はしばらく恭介を見たあと、あの日のことを口にした。「覚えてる?昔、私とあなたが好きだった人が一緒に階段から落ちたときのこと。私が血を流して倒れていても、あなたは迷わずあの人を先に助けた。私はあの日、子どもを失った。そのあとも、痛くて眠れない夜を何度も一人で過ごした。だから、もう二度と会わない。それが私たちには一番いいと思う」言い終えると、ベッド脇のモニターに映る波形が大きく乱れた。恭介は長いあいだ黙ったまま私を見つめ、やがて力なく笑った。目に溜まっていた涙が、そのまま静かに頬を伝っていく。私は背を向け、一度も振り返らずに病室を出た。扉が閉まり、病室には恭介だけが残った。もう取り戻せない過去と向き合うしかない。これで、本当に終わったのだ。長いあいだ背負っていたものが肩から下りるように、身体が少し軽くなる。廊下の窓から差し込む光の中を歩き、病院を出る頃には辺りは夕暮れに染まっていた。その先で待っていた京司が、私に気づくと穏やかに笑い、手
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