一輝が安藤青葉(あんどう あおば)を私のプライベート牧場へ連れて行ったと知り、私は車を飛ばした。次の瞬間、ドンッという轟音が響き、一輝の愛車は見るも無残な姿になった。けれど一輝は眉一つ動かさなかった。ただ、慣性でぶつけて腫れ上がった私の腕に気づいた途端、その目がすっと翳った。「痛むか?」「どうして、彼女をここに連れてきたの?」私は彼の手を振り払い、震える声で問い詰めた。「どうして?」この牧場は、結婚3周年の記念に一輝が私へ贈ってくれたものだった。そして、港市で私に残された最後の逃げ場でもあった。かつて港市の芸能記者たちは、冗談めかしてこう言っていた。一輝が寝た女なんて、そこら中にいる、と。宴会、ショッピングモール、クルーズ船。それどころか、私たちの寝室のベッドの上にまで。けれど、ここだけは違った。ここだけは、私だけの聖域だ。「ただの牧場だろ。お前が気に入ったなら、また別のを買ってやる」一輝は、なんでもないことのように言った。その表情を見る限り、彼はもう、この牧場の由来すら覚えていないのだろう。彼が私に贈ってくれたものは、あまりにも多かった。記念日の贈り物、季節の贈り物、怒らせた時の埋め合わせの贈り物、機嫌がいい時の贈り物……そして、不倫の償いとしての贈り物。彼の無関心に胸を痛める暇さえなかった。ふと視界の端に、青葉が乗っている白馬が映った。私は息を呑んだ。カグヤちゃんは、私が自分の手で取り上げ、自分の手で育てた仔馬だった。結婚3周年を迎えた頃、私は妊娠していた。けれど胎児は早産となり、生まれてわずか6時間で、心肺機能不全のためこの世を去った。若い頃の事故の後遺症で、私はもともと身体が弱かった。これが6度目の妊娠だった。子どもを守るため、私は7ヶ月もの間、ベッドからほとんど動かず安静にしていた。それでも、最後にはすべてが水の泡になった。医師には、もう二度と子どもを授かれない可能性があると言われた。生きる気力を失い、ひどく落ち込み、一度は自ら命を絶とうとさえした。そんな私のもとへやって来たのが、カグヤちゃんだった。難産で、母馬の腹の中に引っかかって出てこられなかった。私は自分の手で、胎衣に包まれた小さな仔馬を取り上げた。ふらつきながら立ち上がった仔馬が、最
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