和佳奈は一体どこへ消えたのか。裕康は深く考え込んだ後、秘書へ電話をかけた。その声には、自分でも気づかないほどの焦燥が滲んでいた。「和佳奈の親族に当たってくれ。行き先に心当たりがないか、至急確認するんだ」秘書の返事を聞きながら、裕康は思案を巡らせた。和佳奈は去り際に何か残していかなかったか。記憶を手繰り寄せるうち、ふと、和佳奈から手渡された小箱の存在が脳裏をよぎった。確かに言っていた。半月早い誕生日プレゼントだと。――それ自体が異常だった。なぜ半月も前に、わざわざ前倒しで渡してきたのか。あの箱はどこへやったのか。あの時、自分は清良への腎移植手術を目前に控え、和佳奈を気にかける余裕など爪の先ほどもなかった。手近に控えていた秘書へ押し付けたはずだ。そこまで思い至り、裕康は慌てて受話口へ言葉を継いだ。「それと、すぐに病院へ来てくれ。この前、和佳奈から預かったあの箱を持ってくるんだ」窓の外を見つめながら、裕康は言いようのない虚無感と胸騒ぎに苛まれていた。ここ最近の和佳奈の不審な言動が、1つ1つ蘇ってきた。あの日、思い出の品々をすべてゴミ箱へ投げ捨てていた姿。感情の抜け落ちた声で言い放った言葉。「怒ってなんていないわ。プレゼントも、もう要らない」問い詰めても、冷たい沈黙を返すだけだった。お腹に触れて無事を確かめようとした時も、たった一言で遮られた。「ヒロさんと清良さん、大学の同級生だったの?」あの時、自分はぎこちなく話題を逸らした……まさかあの時点で、すでに気づかれていたのか。いや、単なる杞憂のはずだ。怪しまれるような隙を見せた覚えはない。だが、最後に顔を合わせた時のやり取りが脳裏をかすめた。出張に行くと告げた自分に対し、和佳奈は平然と返してきた。「いいのよ、ヒロさん。私、慣れるから」「慣れるって、何を?」あの時も、和佳奈は何も答えなかった。今になって振り返れば、様子は明らかに異常だった。不吉な予感がじわじわと心を締め上げていった。*そこへ、息を切らせた秘書が駆け込んできた。手には言いつけられた小箱が握られていた。裕康は箱を受け取ると、手元で重さを確かめた。驚くほど軽かった。「社長、奥様の行方は現在調査中ですが、もう少々お時
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