「お前は一体何者だ。俺たちのことに首を突っ込むな」裕康は和佳奈の後を追おうとしたが、ジェシマに軽々と行く手を阻まれ、怒りを込めて睨み据えた。だがジェシマはどこ吹く風で、裕康の肩をポンと叩くと、澄ました顔で言い放った。「俺は和佳奈に求婚している男だよ。さっさと帰りな。彼女は今、俺のものだ」思いがけない返答に、裕康は表情を強張らせ、目の前の男を値踏みするように見定めた。仕立ての良いスーツを着こなし、抜群のスタイルを誇る長身の体躯。引き締まった肉体が服の上からでも分かり、決して御しやすい相手ではなかった。「和佳奈がお前なんかを好きになるはずがない」裕康は断言した。和佳奈が愛するのは、自分のような大人の男だけのはずだった。「へえ?俺みたいな魅力的な男を差し置いて、あんたみたいなオッサンを好きになるとでも?」裕康は思わず目を丸くし、声を荒らげた。「オッサンだと?」確かに目の前の青年より年上だし、和佳奈よりも10歳年上だ。だが、手入れを怠ったことはなく、日頃から完璧な身だしなみを整えている自負があった。「これは成熟した大人の魅力だ!ガキのお前に何が分かる。和佳奈は俺のような男がタイプなんだ」だがジェシマはそんな負け惜しみを完全に聞き流し、裕康の体を敷地の外へ力強く押し出した。パチンと手を鳴らすと、控えていたスタッフたちが駆け寄り、裕康の両脇を抱えて門の外へ放り出した。「次また来たら、何度でも叩き出すからな。ここは俺の家であり、和佳奈の居場所でもあるんだ」重厚な鉄の扉がピシャリと閉ざされた。門前払いを食らった裕康は、怒り狂って扉を力任せに叩いたが、中から何の反応も返ってこなかった。苛立ち紛れに門を蹴り飛ばすと、忌々しそうにその場を後にした。*一方その頃、ジェシマはオープンカーを走らせ、レストランへ駆けつけていた。店内へ入ってきた長身の姿に、テーブル席の和佳奈が心配そうな眼差しを向けた。「あれくらい朝飯前さ」和佳奈の様子に気づいたジェシマは隣の席に腰を下ろすと、満面の笑みを浮かべ、隠そうともせず熱い視線を注ぎ込んだ。「愛する人の煩わしさを取り除くのは、男として当然の務めだからね」至近距離から端正な顔で見つめられ、甘い言葉を囁かれた和佳奈は、耳たぶまで熱くなるのを感じた。
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