宮に戻って三日が過ぎた。ネフィリスはまだ正式な役目を持たないまま、宮の一角に部屋を与えられていた。小さな部屋だったが、彼はそこを丁寧に整えていた。窓辺には、いつの間にか、南部の野草らしき花が一輪、水差しに活けられていた。その日、シェラとゼルが彼の部屋を訪ねると聞いて、私も同席することにした。三人の元四天王が顔を合わせるのは、あの街道での再会以来、初めてのことだった。「ネフィリス様」シェラが深く一礼した。その所作は、いつもと変わらず丁寧で、隙のないものだった。「前世からの仲間として、お話がございます」ネフィリスは警戒するように、じっと彼女を見た。「何のお話でしょう」「今後、独断で動くことは控えていただきたいのです」シェラは静かに続けた。彼女の口調は穏やかだったが、その奥には、譲れない一線を守ろうとする意志が滲んでいた。「何かあれば、まずわたくしたちに相談してください。あなた一人の判断ではなく、皆で考えるべきです」「――それは、少し違うのではないでしょうか」ネフィリスの声が低くなった。「相談してから動いていたら、間に合わないこともあるのではございませんか」その問いかけには、単なる反発ではない、実務的な鋭さがあった。「だからこそ、日頃から連携を」シェラが言いかけると、ネフィリスは遮った。「連携、連携と、簡単に仰いますけど」彼の声に、初めて棘が混じった。眉間に、微かな皺が刻まれている。「シェラ様も、ゼル様も。宮の中で、殿下や魔王様の近くにいらっしゃる。だからこそ、見えなくなっているものがあるのではございませんか」「見えなくなっている」私は思わず口を挟んだ。窓から差し込む光が、三人の間に、静かな緊張を照らし出していた。「はい」ネフィリスは私を見た。「お二人は、宮の政治に深く関わってい
Última atualização : 2026-10-10 Ler mais