Todos os capítulos de 婚約破棄されました。告発内容は、すべて事実です  ~前世で魔王だった悪役令嬢は、宿敵だった皇太子に溺愛される~: Capítulo 61 - Capítulo 69

69 Capítulos

第58話 近すぎて、見えない

宮に戻って三日が過ぎた。ネフィリスはまだ正式な役目を持たないまま、宮の一角に部屋を与えられていた。小さな部屋だったが、彼はそこを丁寧に整えていた。窓辺には、いつの間にか、南部の野草らしき花が一輪、水差しに活けられていた。その日、シェラとゼルが彼の部屋を訪ねると聞いて、私も同席することにした。三人の元四天王が顔を合わせるのは、あの街道での再会以来、初めてのことだった。「ネフィリス様」シェラが深く一礼した。その所作は、いつもと変わらず丁寧で、隙のないものだった。「前世からの仲間として、お話がございます」ネフィリスは警戒するように、じっと彼女を見た。「何のお話でしょう」「今後、独断で動くことは控えていただきたいのです」シェラは静かに続けた。彼女の口調は穏やかだったが、その奥には、譲れない一線を守ろうとする意志が滲んでいた。「何かあれば、まずわたくしたちに相談してください。あなた一人の判断ではなく、皆で考えるべきです」「――それは、少し違うのではないでしょうか」ネフィリスの声が低くなった。「相談してから動いていたら、間に合わないこともあるのではございませんか」その問いかけには、単なる反発ではない、実務的な鋭さがあった。「だからこそ、日頃から連携を」シェラが言いかけると、ネフィリスは遮った。「連携、連携と、簡単に仰いますけど」彼の声に、初めて棘が混じった。眉間に、微かな皺が刻まれている。「シェラ様も、ゼル様も。宮の中で、殿下や魔王様の近くにいらっしゃる。だからこそ、見えなくなっているものがあるのではございませんか」「見えなくなっている」私は思わず口を挟んだ。窓から差し込む光が、三人の間に、静かな緊張を照らし出していた。「はい」ネフィリスは私を見た。「お二人は、宮の政治に深く関わってい
last updateÚltima atualização : 2026-10-10
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第59話 好きなものを、好きと言えた場所

宮に戻ってから一週間が過ぎた。ネフィリスはまだ正式な役目こそ持たないものの、日々宮に通ってくるようになっていた。シェラやゼルとの打ち合わせを重ね、少しずつ仕組み作りが進んでいる。廊下ですれ違う侍女たちも、もう彼の姿に驚かなくなっていた。その日の午後、私は彼と二人、庭園で茶の時間を過ごしていた。アルヴィス様は執務で席を外しており、いつもの取り繕った男性口調も、今日はあまり必要なかったらしい。木漏れ日が、卓の上に、揺れる模様を落としていた。「――それで殿下がそうお答えになったんだけど、あたし思わず言葉に詰まっちゃって」ネフィリスは身振り手振りを交えながら、楽しそうに話していた。「本当に、あの御方は、どこまでもお優しくて」その語り口を、私はしばらく黙って聞いていた。風が庭木の葉を、さらさらと揺らしている。彼の表情は、初めて出会った日とは、まるで別人のように和らいでいた。「ネフィリス」「はい、何でしょう」「聞いてもいいかしら。あなたの話し方について」彼の手が、一瞬、止まった。カップを持ち上げかけた指先が、宙で静止する。「――やっぱり、気になりますよね」その声に微かな緊張が滲んだ。先ほどまでの朗らかさが、すっと影を潜めるのが見えた。「気になる、というより」私は言葉を選んだ。「初めて会ったときの、あの騎士のような話し方と、今の話し方。どちらも、あなたなのだと思うけれど。今の方が、ずっと自然に見えるの」ネフィリスは少し驚いたような顔をした。「――お気を悪くなさいませんか」「まさか」私ははっきりと答えた。「不思議には思うけれど、悪いとは少しも思っていないわ」彼はしばらく俯いていた。膝の上で、指先が、何かを確かめるように動いている。やがて、ゆっくりと口を開いた。「前世で、あた
last updateÚltima atualização : 2026-10-11
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第60話 優しさという、弱さ

庭園でのあの日から、さらに数日が過ぎた。ネフィリスは宮での日々に、少しずつ馴染んでいた。シェラやゼルとの連携の仕組みも、細部が固まりつつある。あの告白以来、彼の表情には、以前より柔らかなものが増えていた。廊下ですれ違う侍女たちにも、気さくに声をかけるようになっていた。けれど、その平穏は長くは続かなかった。「殿下。南部より急報が」朝議の場に、ガイル様が青ざめた顔で駆け込んできた。手にした書状の端が、彼の手の震えを、そのまま伝えているようだった。「教会派の民兵が、国境沿いの村を一つ、焼き払いました」私は思わず立ち上がった。椅子が、後ろに大きく激しく音を立てて傾いた。「焼き払った、というのは」「帝国側に通商の便宜を図っていた村です。見せしめとして狙われたと思われます。死者は幸い出ておりませんが、村人たちは家を失いました」アルヴィス様の表情が硬くなった。円卓の上に置かれた地図を、彼の指先が、強く押さえつけている。「――我々への明確な挑発だな」「はい。ですが、こちらから手を出せば相手の思う壺かと」朝議の間に重い沈黙が落ちた。円卓を囲む誰もが、視線を落としたまま動かなかった。窓から差す朝の光さえ、いつもより硬く、部屋を照らしているように感じられた。私は拳を握りしめた。方針は変わらない。先に手を出さない。けれど、目の前で村が焼かれたという事実の重さに、その原則を貫くことの苦しさを、改めて噛み締めていた。焼け出された人々の顔を、私はまだ知らない。それでも、その痛みだけは、はっきりと想像できた。その様子を、部屋の隅でネフィリスが黙って見ていた。彼の表情からは、いつもの朗らかさが消えていた。朝議の後、私は廊下でネフィリスに呼び止められた。「魔王様。少し、よろしいでしょうか」その声は、いつもの柔
last updateÚltima atualização : 2026-10-12
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第61話 置き手紙

翌朝は、よく晴れていた。朝の光が、宮の白い石壁に跳ね返って、廊下をまぶしいほどに照らしている。庭の木々からは、季節外れに元気な小鳥の声が、絶え間なく聞こえてきた。あまりに穏やかな朝だったせいで、私はその報せを聞いたとき、しばらく理解が追いつかなかった。「お嬢様。ネフィリスの姿が、どこにも見当たりません」シェラが私の部屋の扉を叩いたのは、朝食を済ませた直後だった。「見当たらない、というのは」「昨夜のうちに、宮を出たようです。門番も、誰一人、気づいておりません」その言葉に、私は昨夜の不安が、そのまま形を取ったのだと悟った。あれほど言葉を尽くしたつもりだったのに、届いていなかった。「部屋は」「調べました。荷物はそのままです。ただ」シェラは、一枚の紙を差し出した。粗末な紙だった。あの日、彼女の私室に置かれていたのと、同じ質の紙。「これが、寝台の上に」私はそれを受け取った。指先が、かすかに冷たくなっていくのを感じた。*流れるような、美しい筆跡だった。『魔王様へ』『先日のお言葉、確かに承りました。一人で背負うな、と。仲間と共に考えよ、と』『そのお心を、疑うつもりはございません。ですが、あたしには、どうしても待てないことがございます』『村が焼かれました。次は、また別の村でしょう。そのたびに、魔王様は苦しまれる。あたしは、それを見ていることが、できません』『ですから、根を断ちに参ります』その一文で、私の指が止まった。『バルドウィン大司教。あの方さえいなくなれば、この争いの多くは、収まるはずです』『魔王様の御手を汚さぬために。あたしが、参ります』『どうか、お怒りにならないでくださいませ。これは、裏切りではございません。あたしなりの、忠誠でございます』そして、最後の一行。『ネフィリス』私は、そ
last updateÚltima atualização : 2026-10-13
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第62話 追う者の、覚悟

翌朝は、灰色の雲が空を低く覆っていた。昨日のあの晴天が嘘のように、風は冷たく、庭の木々を重く揺らしている。私は夜明け前に目を覚まし、まだ薄暗い部屋で、旅の支度を進めていた。窓の外から聞こえるのは、風の音だけだった。「お嬢様。お支度、お手伝いいたします」シェラが部屋に入ってきた。彼女もまた、一睡もしていないような顔をしていた。「あなたも、休めていないのね」「あの者のことを考えますと、どうにも」その声には、苛立ちと心配が入り混じっていた。前世からの仲間が、また一人で危険に飛び込んでいく。彼女にとっても、それは決して他人事ではないのだろう。「シェラは、ネフィリスのことが嫌い?」「――いいえ」彼女は、旅装を丁寧に整えながら、静かに答えた。「腹立たしくはございます。ですが、あの者なりの理屈は、分かってしまうのです。それが、余計に厄介で」*朝議の間に、主だった者が集まったのは、日が昇り切る前だった。卓の上には、昨夜のうちに準備された書状の束が積まれている。アーデルハイド王国への入国許可願い、聖教会への謁見申請、そして使節団の名簿。ゼルとガイル様が、夜通しで整えたものだった。「使節としての体裁は、これで整いました」ゼルが、書類を私の前に押し出した。彼の目の下には、はっきりと隈が浮かんでいる。「名目は、婚約成立の正式な報告と、両国関係の改善に向けた協議。これなら、教会も表立って拒めません」「ありがとう。よくここまで」「当然のことでございます」彼は短く答えたが、その声には、いつもの余裕がなかった。五歳の身体に、この二日の緊張は重すぎたのかもしれない。「随行者は、最小限といたします」ガイル様が続けた。「殿下、ヴィオレット様、シェラ殿、そして護衛の騎士を十名。それ以上は、かえって警戒を招きます」
last updateÚltima atualização : 2026-10-14
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第63話 罠は、すでに

出立から二日目の朝、私たちは国境を越えた。帝国の田園とは、まるで景色が違った。乾いた赤茶けた土に、低い灌木がまばらに生えている。空はよく晴れていたが、風は砂を含んで乾いており、頬に当たると微かに痛んだ。街道を行き交う人の姿は、驚くほど少ない。「――静かすぎますね」馬車の窓から外を眺めながら、シェラが呟いた。「本来なら、この時期は巡礼者で賑わうはずの街道でございます」「人払いがされている、ということかしら」「あるいは、皆が何かを察して、家に籠っているか」その言葉に、私は背筋が冷えるのを感じた。静けさは、平穏の証ではない。むしろ、その逆であることを、これまでの経験が教えていた。アルヴィス様は、地図を膝の上に広げたまま、じっと窓の外を見ていた。「総本山まで、あとどれくらいですか」「順調にいけば、明日の夕刻には着く」「順調に、いけば」「――そうだな」彼は、そこで言葉を切った。その短い沈黙が、私たちの誰もが抱えている不安を、そのまま表しているようだった。*昼を過ぎた頃、後方から馬蹄の音が近づいてきた。一騎だけの、猛烈な速度だった。護衛の騎士たちが即座に警戒態勢を取ったが、その旗印を見て、すぐに緊張を解いた。帝国の伝令旗だった。「殿下、火急の報せにございます」泥まみれの伝令が、馬から転げ落ちるように降り立った。喉が渇き切っているのか、その声はひどく掠れていた。アルヴィス様が、馬車を降りて彼のもとへ向かう。私も、後を追った。「何があった」「帝国国境の四方に同時に、武装勢力が現れました」その一言に、周囲の空気が凍りついた。「四方、というのは」「南、東、北、そして西でございます。すべて、同じ日の未明に動き出しました」私は、思わず
last updateÚltima atualização : 2026-10-15
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第64話 手の届かない、四つの戦場

三日目の朝、私たちは総本山を望む丘の上にいた。眼下に広がる街は、想像していたよりもずっと大きかった。白い石造りの建物が斜面に沿って幾重にも連なり、その中心に、天を突くような大聖堂の尖塔がそびえている。朝の光を受けて、街全体が眩しいほどに白く輝いていた。美しい光景だった。その美しさが、かえって不気味だった。「――謁見の申請は」アルヴィス様が、傍らの騎士に尋ねた。「昨日のうちに、先触れを出しております。ですが、まだ返答がございません」「意図的に、遅らせているな」「おそらくは」その短いやり取りだけで、状況の厳しさが分かった。私たちは、この街の外で、ただ待たされている。その間にも、時は刻一刻と過ぎていく。*昼前、二人目の伝令が到着した。帝都からの、二日ぶりの報せだった。伝令は昨夜からほとんど眠っていないらしく、目の下に濃い隈を作っていた。差し出された書状には、ゼルの筆跡で、四方の戦況が詳細に記されている。「読み上げます」アルヴィス様が、書状を広げた。「東門。ガイル率いる守備隊が、教会派の民兵およそ千二百と交戦中。防衛線は保持しているが、消耗が激しい」その一行を聞いただけで、ガイル様の疲れ切った顔が目に浮かんだ。彼は、いつも最前線で無理をする人だった。「北門。守備隊長の判断で、市街地への侵入を防ぐ布陣を敷いている。膠着状態」「西門は」私が問うと、彼は書状の続きに目を落とした。「西門は、最も手薄だ。守備隊の主力が、南と東に回されている」その言葉に、私は息を呑んだ。「では、そこが破られたら」「帝都の中枢まで、遮るものがなくなる」*私たちは、丘の上に張られた天幕の中で、書状を囲んでいた。風が布地を絶えず打ちつけ、その音が話し声に重なる。
last updateÚltima atualização : 2026-10-16
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第65話 鍛冶場を出る

――――ドルフ視点――――その日の朝、俺はいつものように炉に火を入れた。三十五年、変わらぬ手順だった。炭を積み、種火を移し、風を送る。炎が育っていく音を聞きながら、鉄を選び、槌を握る。この繰り返しの中に、俺の今世のすべてがあった。だが、その朝は違った。炉の火が安定しきる前に、村の若い衆が息を切らして駆け込んできたのだ。「ドルフさん、大変だ。街道の向こうに、大勢の兵が」俺は槌を置いた。手の中に残った鉄の冷たさが、やけにはっきりと感じられた。「どのくらいだ」「分からねえ。だが、砂埃がすごい。何百、いや、もっとかもしれねえ」若い衆の声は震えていた。無理もない。この村で、そんなものを見た者は誰もいない。*村の外れの高台から、俺は南の街道を見下ろした。確かに、砂埃が上がっている。だが、それは村へ向かってくるものではなかった。街道を西へ、帝都の方角へ、迂回するように動いている。その動きを見て、俺は前世の記憶が呼び起こされるのを感じた。あれは、正面の守りを避けて、手薄な側面に回り込む動きだ。「――西門か」呟いた声は、自分でも驚くほど低かった。帝都の西門。守備の主力は南と東に回されていると、先日行商から聞いた。ならば、あそこは今、がら空きに近い。背後で、村人たちのざわめきが聞こえる。俺はしばらく、動けずにいた。*家に戻ると、妻が心配そうな顔で待っていた。土間には、まだ湯気の立つ朝食が並んでいる。息子は奥の間で、まだ寝息を立てていた。妻は俺の顔を見るなり、何かを察したようだった。長年連れ添った相手には、隠し事ができない。「あんた。何かあったのかい」「――ああ」俺は
last updateÚltima atualização : 2026-10-17
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第66話 誰も、倒れない

――――ドルフ視点――――先頭の騎馬が、俺の十歩ほど手前で止まった。砂埃が、ゆっくりと晴れていく。その向こうに、隊列が広がっていた。槍を持つ者、剣を提げる者、粗末な革鎧をまとった者。統一されていない装備が、彼らが正規軍でないことを物語っている。だが、数だけは確かに千を超えていた。「――そこをどけ、老いぼれ」騎馬の男が叫んだ。指揮官らしい風体だった。「どかん」俺は短く答えた。「死にたいのか」「死ぬ気はねえ。あんたらを殺す気もねえ」その言葉に、男が眉を寄せた。前列の兵たちが、顔を見合わせている。刃のない鉄棒を担いだ老人が何を言っているのか、理解できずにいるのだろう。「――正気か。一人で、この数を止められると思っているのか」「そんなもん知るか」俺は、鉄棒を肩から下ろした。地面に石突を突き、両手で柄を握る。「だが、やらねばならん」*最初に動いたのは、前列の三人だった。槍を構えて、同時に突進してくる。訓練された動きではない。勢いだけの、素人の突撃だ。俺は半歩だけ横に動き、最初の槍をやり過ごした。そして、鉄棒を振った。狙ったのは、人ではない。槍の柄だ。乾いた音が響き、三本の槍が、まとめて中ほどから折れた。持ち主たちが、たたらを踏んで後ろへ下がる。「な――」誰かが息を呑む声が聞こえた。俺は、追撃しなかった。ただ、元の位置に戻り、再び石突を地面に突いた。三十五年、ひたすらに鉄を打ち続けてきたのだ。どこを叩けば折れるか、どの角度で当てれば砕けるか。鉄の性質は、俺の身体が誰よりも知っている。*そこからは、同じことの繰り
last updateÚltima atualização : 2026-10-18
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