ゼルに案内されたのは、帝都の外れにある小さな鍛冶場だった。炉の炎が絶えず唸り、鉄を打つ音が規則正しく響いていた。 軒先には農具や馬具が並び、いかにも堅実な仕事ぶりを物語っていた。 壁に立てかけられた鋤や鍬には、丁寧な手入れの跡が見えた。 一つひとつの道具に、作り手の誠実さが滲んでいるようだった。*「――ここでございます」ゼルが鍛冶場の入り口で足を止めた。いつもの軍師の顔ではなかった。 今日の彼はどこか緊張した、五歳児そのものの表情をしていた。「あの、少し緊張いたします」「あなたでも緊張するのね」「当然でございます。恩人にこれからご迷惑をおかけするのですから」鍛冶場の奥から白髪の男が姿を現した。長い髪を後ろで一つに束ねている。 細身だが槌を持つ腕には確かな力の芯があった。 目には常に何かを考え込んでいるような、深い陰りがあった。 額に浮いた汗が、炉の熱を物語っていた。 焼けた鉄と、炭の匂いが、彼の周りに纏わりついている。彼は私たちを見て動きを止めた。 槌を握る手の位置が、ほんのわずかに変わった。 攻撃に転じるためではなく、むしろ、逃げ場を探すような、そんな動きだった。「――ゼル坊、今日は何の用だ」声は平静を装っていたが、微かに強張っていた。「ドルフ様」シェラが前に進み出た。「お久しゅうございます。灰塵のシェラハドでございます」その一言でドルフの表情から完全に色が消えた。 炉の炎だけが、変わらず唸り続けていた。 その音と、彼の凍りついた沈黙との対比が、やけに際立って感じられた。「――何のことか分からんな」「惚けずとも結構です」シェラの声には抑えきれない昂りがあった。「あなた様が武力のドルガン様であることは承知しております。魔王様も、こちらに」彼女は私を示した。
Última atualização : 2026-09-20 Ler mais