茉優は忌々しさを噛み殺し、顔を上げて京介を見つめる。「私はただ、京介と彼女の関係を少しでも良くできないかと思って。だって、いくらなんでも、お二人の間には……」京介がその言葉を遮る。声は優しい。「あいつのことなんか気にする必要はない。君が気を遣う価値もない」茉優はこみ上げてくる甘い優越感と喜悦を押し殺し、こくりとうなずく。「うん。分かった」それから間もなくして、会社中にうわさが広まった。あの気品あるイケメン社長に、恋人ができたらしい。「社長の彼女って、里中グループの社長、里中秀明の妹なんだって。本物のお嬢様って感じだよね」「どうりで、あんなにきれいで品があるわけね。笑うときなんて、まるで女神みたいだ。それに話し方もすごく優しくて、礼儀正しいし、お嬢様ぶったところなんてまったくない。社長と並んで立つと、本当にお似合いだよね!」「ちょっと待って。なんであの人が社長の彼女だって分かるの?」「社長ってどんな人か知ってるじゃない。普段から女性社員とは最低でも1メートルは距離を取るくらいよ。それなのに、あの里中さんは社長の助手席に乗ってたし、社長が自分でバッグまで持ってたのよ。それに、エレベーターを降りるとき、里中さんが足をひねったんだけど、あのときの社長の心配そうな顔、見た?あれはもう、彼女以外ありえないって!」「彼女じゃなきゃ、奥様ね。絶対間違いないわ」オフィスでは、近くの席の女性社員たちが仕事をしながら、ひそひそと噂話に花を咲かせている。通りすがりにそれを耳にしても、真夕の心は少しも痛まない。まるで、京介を愛していたのは前世の出来事であるかのように、心はすっかり凪いでいる。真夕はノートパソコンを手に会議室へ向かう。急きょ招集された幹部会議に出席するためだ。会議室に入ると、ほかの幹部たちも茉優の話をしている。真夕は何食わぬ顔で席につき、静かに耳を傾ける。しばらくして、再び会議室の扉が開き、京介が大股で入ってくる。その後ろには、茉優が続いている。これは社内の幹部会議だ。なぜ茉優が来ているのか。真夕が疑問に思っていると、京介の秘書である満が椅子を運び、京介の席の隣に置いて、茉優に座るよう促した。会議室がざわめいた。「里中さんがなぜここに?」「そうだ。いくら社長の彼女とはいえ、これは内部の会議だ
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