夫の訃報を聞いただけで気を失うような、あの儚げな女が今、大胆に胸元を開けたドレスを纏い、見知らぬ男の腕の中に凭れかかっていた。服は乱れ、首筋には生々しい痕が残っていた。男の声に、千鶴は鼻で笑った。「前の金づるが死んで、ようやく金もあって騙しやすい男を見つけたと思ったのに。稔なんて本当に役立たずよ。普段は偉そうなくせに、私みたいな女にあっさり騙されるんだから。あれだけ手間をかけて丸め込んだのに、まさか私が作り上げた理想の女を愛してたんじゃなくて、死んだ女を愛してたなんてね。清海も馬鹿な女よ。あんな男のために身も心も尽くして。前に稔が事故に遭ったとき、あの女、死にものぐるいで助けに行って半分死にかけたのに。私なんて、稔のベッドの脇でちょっと涙を流しただけで、私が助けたって勝手に勘違いしてくれたんだから」彼女はライターを手に取り、タバコの煙をくゆらせた。その姿は、稔の記憶にある彼女とはまるで別人だった。「あの馬鹿、騙されやすくて呆れるわ。子どもが自分に全然似てないことにすら気づかないのよ。それどころか、嬉々としてあの子を抱いて人に見せびらかして、みんなの前で『跡継ぎだ』なんて宣言しちゃって。あの間抜けっぷりときたら――」彼女は下品に笑っていたが、ふと視界の端に、ドアの隙間から覗く稔の顔を捉えた。彼は表情ひとつ変えず、そこに立っていた。バーの薄暗い明かりが顔を照らし、悪鬼のように見えた。「きゃあっ!」千鶴が悲鳴を上げ、男の腕から飛び退いた。気まずそうな表情を浮かべながら、探るように尋ねる。「あ、あなた、いつ来たの?何か……聞いた?」稔は何も言わず、ただ俯いたまま、目の前の千鶴を見つめていた。どうして今まで気づかなかったのだろう。千鶴の嘘が、これほど稚拙なものだったなんて。それなのに自分は、こんな嘘に、こんなにも長く騙され続けてきたのだ。千鶴の怯えた眼差しの中で、彼はようやく口を開いた。掠れた声で、「あの時、お前が俺を助けたのか?」と尋ねた。あのとき、彼は生死の境をさまよい、意識が朦朧とする中で、ひとりの女性が自分を助けてくれたことだけをかろうじて感じ取っていた。目を開けたとき、視界に映ったのが千鶴の顔だったのだ。だから当然のように、彼は千鶴に助けられたのだと思い込み、彼女に恩を感じてきた。そ
続きを読む