200万円を返し、生活費の明細も送ってから、3分もしないうちに亮介から電話がかかってきた。電話に出るなり、亮介はうんざりした声で言った。「何だよ?アイスランドに行けなくなったくらいで、今までの生活費まで持ち出してくるのかよ?」私は圭介が送ってきた写真をスマホに保存し、淡々と返した。「気持ちとお金のことは別だって、いつも言ってたのはあなたでしょ?」電話の向こうが一瞬静かになり、亮介はため息をついた。「彩香、楽しみにしてたのは分かってる。悪かったよ。仕事が片づいたら、改めてアイスランドに行こう。今度は彩香の好きなだけ付き合うから。だから今だけは勘弁してくれないか?」私は何も答えなかった。私が何も言わずにいると、亮介は私が納得したと思ったのか、会議に戻るからと一方的に電話を切った。電話を切った直後、クレジットカードの利用通知が2件続けて届いた。1件はヴァンクリーフ&アーペルでの80万円の買い物。もう1件はインターコンチネンタルホテルで注文された記念ケーキの代金だった。私はスマホを握りしめ、そのままホテルに電話をかけた。「すみません。先ほどそちらのホテルからカードの利用通知が届いたんですが、記念ケーキの代金になっていて。主人が予約したものだと思うので、内容を確認していただけますか?」予約者の名前を聞かれ、亮介の名前を告げると、スタッフはしばらく確認したあとで答えた。「松本様ですね。お二人様の記念日プランでご予約を承っております。ケーキも10周年のお祝いとしてご用意しております」亮介と出会って5年、結婚して3年。その「10周年」が私とのものではないことは、考えるまでもなかった。「分かりました。主人がサプライズで用意したのかもしれません」そう答えてから、私は続けた。「もし、飾りつけが終わったときの写真があれば、1枚送っていただけませんか?どんな雰囲気になっているのか、少し見ておきたくて」スタッフは、準備が整ったあとの写真なら送れると言った。メールアドレスを伝えると、2分もしないうちに写真が届いた。写真には誰の顔も写っておらず、バラの花びらが散りばめられたテーブルと、ワイングラスに手を添えた女性の手元だけが写っていた。その手首には、オーロラをイメージした銀色のブレスレットが光っていた。私はしば
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