スマホを切って間もなく、蓮から電話がかかってきた。「七海、いい加減にしろ!俺の家族は好意で、君とお義母さんをF国に呼んだんだ。遅れてきただけでもありえないのに、俺のSNS投稿にコメントするとは、どういう意味だ?君たちを迎えるために、兄も姉もわざわざ駆けつけてくれたんだ。沙耶だって体調が悪いのに、君のために故郷の料理を用意してくれたんだぞ」私は黙って彼の叱責を聞きながら、目の前の母の遺体を見つめていた。この瞬間、私の心は完全に死んだ。彼が言い終えると、私は淡々と返した。「私たち、バレンタインデーを一緒に過ごすのは、もうやめましょう。そちらで召し上がってください」「なにを言ってるんだ!」蓮の声の調子が一気に高くなり、怒鳴った。「今回君たちを呼んだのは、俺たちの結婚のためだ。そんな態度なら、結婚のことなんて二度と考えるな」「じゃあ、ご希望どおりに」私はあっさりと答えた。「別れましょう」電話の向こうは、一瞬で静かになった。私と蓮は、海外で働いていたときに知り合った。5年一緒にいて、どんなカップルもぶつかる問題は経験してきた。けれど、一度だって別れを口にしたことはなかった。「自分が何を言ってるのか、わかってるの?」電話の向こうはしばらく沈黙した後、蓮が信じられないといった声で、もう一度問い詰めてきた。私は小さく「ええ」とだけ言った。そのとき、電話の向こうから突然、沙耶の声が聞こえてきた。「蓮さん、痛み止めを探してくれませんか?なんだか熱っぽいんです」蓮はすぐに慌てふためき、電話を切った。切る前に、最後に私へこう言った。「七海、その言葉は君が言ったんだ。あとで後悔しても知らないぞ」電話が切れた。私は黙ってスマホをしまうしかなかった。私は一人で全ての手続きを済ませ、母の遺体を国内へ連れ帰って埋葬した。それから半月以上、蓮からは一度も電話がなかった。彼という存在は、私の周りからすっかり消えてしまったかのようだった。たまにスマホを開いてSNSを見ると、蓮は何も投稿していなかったが、沙耶はほとんど毎日更新していた。中央タワー、近代美術館、王立美術館……写真の中の蓮は、沙耶と一緒にF国中の観光地を巡り尽くしていた。コメント欄も、やけに賑やかだった。【ついに蓮が、憧れ
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