All Chapters of 『彼女の汗の匂いだけ、なぜか忘れられない。~匂いに敏感な俺と、秘密のフェチを抱えた女子大生たち~』: Chapter 51 - Chapter 52

52 Chapters

第50話 変な好きでも、笑わない場所

第50話 変な好きでも、笑わない場所 交流祭終了のアナウンスが流れたのは、夕方五時を少し過ぎた頃だった。 学生ホールの人波が、ゆっくり外へ流れていく。 朝からずっと人がいたせいか。 急に静かになると。 少し変な感じがした。「終わったね」 陽菜が言う。「うん」「長かった」「かなり」「悠真、途中かなり休んだけど」「そこ言う?」「大事」「もう反省した」「本当に?」「かなり」「次また無理したら?」「怒られる」「誰に」「陽菜」「私だけ?」「神崎先輩と久我にも」「よし」 完全に管理対象になっている。 でも。 今日は。 それでいい気もした。 俺たちは。 少しずつ片付けを始めた。 匿名カード。 模造紙。 風船。 受付用の机。 案内板。 そして。 陽菜の体験文。『高校生の頃、同級生に汗の匂いのことを言われてから、私は自分の匂いが嫌になりました。』 そこから始まる。 一枚の文章。 交流祭前。 出すかどうか。 何度も悩んだ。 文章にする時も。 俺とかなり揉めた。 それでも。 最後は。 陽菜自身が。 出すと決めた。 その文章の横。 小さな感想カード。『自分の嫌いなところを、すぐ好きにならなくてもいいって初めて思いました。少し救われました。』 陽菜は。 まだそれを持っている。「それ」 俺が言う。「何」「持って帰る?」「うん」「展示物として保管しない?」「これは」 陽菜が少し考える。「私が持ってていい?」 神崎先輩へ聞く。「もちろん」「本当に?」「書いた人の個人情報もないし」「はい」「陽菜ちゃん宛てに近い感想だから」「じゃあ」 陽菜は。 カードを。 大事そうに財布へ入れた。「なくさない?」「悠真のカードもまだある」「あれ財布?」「うん」「一緒?」「別のところ」「何で」「折れたら嫌だから」「そんな大事?」「大事」 以前。 俺が書いた。『一緒にいると、自分が少しまともになるところ。』 それも。 まだ持っているらしい。「悠真は?」「何が」「私のカード」「手帳」「まだ?」「ある」「見せて」「今?」「確認」「信用ない?」「あるけど見たい」 俺は。 バッグから手帳を出す。 少し奥。 透明のポケット。『
last updateLast Updated : 2026-09-22
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第51話 夏になると、彼女の匂いは少し変わる

第51話 夏になると、彼女の匂いは少し変わる 六月の終わり頃から、大学の空気は目に見えて変わった。 講義棟の窓は朝から開いているし、学生ホールでは冷たい飲み物ばかり売れるようになった。外を歩けば、まだ真夏ではないのに日差しだけは妙に強く、昼休みに中庭を横切るだけで背中へ汗が浮く。 そして、陽菜の匂いも少し変わった。 そのことに気づいたのは、陸上部の練習が終わった陽菜と駅前で待ち合わせた日のことだった。「ごめん、待った?」「五分くらい」「それなら待ってない扱いでお願いします。今日最後に一本追加されて、着替えるのも遅くなった」 陽菜はそう言いながら、首元を手で扇いだ。ポニーテールの先がまだ少し湿っていて、額には細かな汗が残っている。以前なら、俺と会う前にもっと念入りに拭いてきたはずだが、最近はそこまで神経質ではなくなった。「暑い」「見れば分かる」「彼女が暑がってるんだから、もう少し優しいこと言えない?」「冷たい飲み物買う?」「それ。そういうのでいいの」「じゃあコンビニ」「悠真も何か飲む?」「コーヒー」「この暑さで?」「アイス」「そこは安心した」 二人で駅前のコンビニへ向かう。 歩き始めてすぐ、俺はいつもと違う匂いに気づいた。 汗。 シャンプー。 洗剤。 そこへ、少し甘さのある日焼け止めの匂いが混ざっている。春にはほとんどなかったものだ。 さらに制汗剤も変わっていた。 以前使っていた、かなり強い香りのものではない。もっと軽い。柑橘っぽいが、すぐ消えるタイプ。 俺は。 そこで
last updateLast Updated : 2026-09-23
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