まどかは明らかに透子を敵視している。 後からやって来て弦也を奪ったのだと、憎んですらいる。 弦也との契約結婚は透子の意志ではなく、むしろまどかの身の安全を重んじた冷泉院家の判断だというのに。 血の繋がりがあるはずの冷泉院の『父』『母』『兄』はまどかの言動を諌めず、透子を冷たい目で見ていた。 だから透子も彼らを肉親だと感じてはいない。 透子にとっての家族とは、祖母の志乃だけだ。 と。 まどかが耳元で囁いてきて、透子は我に返った。「お姉様はただの身代わり。透子お姉様のものは、全部あたしのものなのだから。お屋敷も、服も、宝石も。……弦也さんも」 宣戦布告と呼ぶにはあまりに傲慢な、透子を見下しきった言葉だった。 まどかは勝ち誇ったように微笑んで、再びリビングへと入っていった。「弦也さん、お待たせ。ここのお庭、前より少しきれいになったわね。まるでお祖父様が生きていらした頃のよう」 まどかの声は、再び高く愛らしいものに変わっていた。「ああ。少し手を入れたからな」 弦也が答える。 自分がやったことだとは、透子は一言も言えないでいた。◇◇ 透子はリビングの入り口から少し離れた場所に立ち、2人の会話を聞いていた。 立ち去ってしまえばいいと思うのに、足が重くて動かない。 相良が紅茶と茶菓子を運び、まどかの前に置く。「美味しい。やっぱりここの紅茶は格別ね」 まどかはカップを置き、ふと思いついたように言った。「そういえば弦也さん、さっきあっちの部屋で、お姉様が何か汚い板みたいなものを広げていたけれど。あれは何?」 弦也の眉がわずかに動いた。「……祖父の絵だ。少し傷みがひどくてな。彼女に修復を頼むことにしたから、その準備をしている」「お祖父様の? あれが?」 まどかは大げさに驚いてみせた。「弦也さんが
Última atualização : 2026-10-05 Ler mais