博之は、拓真からの警告をまるで意に介さなかった。彼はひそかに拓真の動向を探り始めた。それを手がかりに、麻実を見つけ出そうとしたのだ。けれど拓真は彼女を徹底的に隠し通しており、博之の情報収集能力をもってしても、その行方を掴むことはできなかった。彼は次第に苛立ちを募らせ、日常の訓練も業務も疎かになり、ついには任務の遂行さえ拒むようになった。本部長は怒りのあまり、彼に自宅待機を命じた。だが博之はそれすら気にせず、むしろますます自分を抑えなくなった。そんな折、綾子から電話がかかってきた。「博之、麻実のことがあってから、母が今も食事も喉を通らないでいるの。会いに来てあげて」博之は一瞬迷ったが、結局向かうことにした。玄関に入る前から、綾子の声が聞こえてきた。「お母さん、麻実はきっと大丈夫よ。これはきっと、あの子が意地を張ってやってる芝居なんだから。計算高くて、嫉妬深いところがあるから……」博之はそれ以上聞いていられず、そのまま扉を押し開けた。顔つきが険しい。「今、何て言った?」綾子はぎくりと肩をすくめ、顔色を青ざめさせながらしどろもどろに言った。「あっ、博之、誤解しないで……母を安心させたくて、それで……」明美はひどくやつれていた。博之を見るなり、慌てて歩み寄って尋ねた。「博之、麻実と晴菜は、本当に何もないの?」博之は隠さずに答えた。「……ふたりとも無事です」それを聞いた綾子は、体の脇で手をぎゅっと握りしめ、しばらくしてようやく無理に笑ってみせた。「だから言ったじゃない。お母さん、心配しなくて大丈夫だって」明美は長く息を吐き出すと、また不満を漏らし始めた。「やっぱりね。あの子は昔から、こうやって同情を引くのが上手だったのよ。性根が曲がってるんだから……」博之は眉をきつく寄せた。「彼女は、そんな人間じゃありません」明美は手を振った。「あんたには分からないのよ。私はあの子の母親。誰よりもあの子のことを分かってる。晴菜だって、母親に似たのよ」博之の口調に、抑えきれない冷たさが滲んだ。「晴菜は、悠斗の身代わりになったんです」そのそばで、食卓に向かって夢中で食事をしていた悠斗が顔を上げ、もごもごと口を動かしながら言った。「あいつ、どうせ手も足もないじゃん。死んで当然
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