第21話 ごめんなさいだけでは戻れないミレイユの身体から王家の古い術式紋が見つかった。その事実は、リゼットの頭から離れなかった。医師と術師は詳しい調査が必要だと言い、ヴァルドはすぐに古文書の確認と王都から届いた記録の照合を命じた。けれど、その日のうちに何かが分かるわけではない。ミレイユは高熱のため薬を飲み、しばらく眠ることになった。リゼットは医務室の隣に用意された小部屋で、椅子へ座ったまま待っていた。待つしかない。それが一番苦手だった。以前なら、自分に何かできないかと医師へ食い下がっていただろう。祈紡ぎを使えば熱だけでも楽にできるのではないか。呪滓を少しだけ抜けば。そんな考えが、今も浮かばないわけではない。でも。今日は言わなかった。医師が必要ないと言ったからだ。普通の解熱薬が効いている。呼吸も安定している。今、自分が力を使う意味はない。それでも、手を膝の上で握りしめていなければ落ち着かなかった。「また何かしたそうな顔をしているな」横から声がした。ヴァルドだった。いつから見ていたのだろう。「何もしていません」「知っている」「ならいいではありませんか」「していないが、したそうだと言った」リゼットは少しだけ眉を寄せる。「顔に出ていますか?」「かなり」「最近、公爵様に顔を読まれすぎている気がします」「分かりやすくなったんじゃないか」「前は?」「全部隠していた」
Última actualización : 2026-10-05 Leer más