ディバインは医師から受け取った朗報を胸に、満面の笑みを浮かべてダリアスの部屋へと足を踏み入れた。彼女はベッドの端に腰を下ろすと、ダリアスが読んでいた本を優しく取り上げ、彼の意識を完全に自分へと向けさせた。顔を寄せると、彼女は彼の唇に素早くキスを落とし、甘い笑みを投げかけた。けれど、彼女のそんな愛撫に対しても、ダリアスの表情は硬く無感情なままだった。「主治医の先生とお話ししてきたわ、あなた。今週から少しお散歩に出かけても良いんですって!」興奮を隠せない様子でディバインが宣言した。彼女はダリアスの胸に頭を預け、目を閉じてその瞬間を心ゆくまで堪能した。ディバインにとって、この状況はまさに天国だった。以前であれば、隣り合って座っていても、ダリアスの自分に対する距離感と冷たさを痛いほど感じていたものだった。けれど記憶喪失になった今、彼女はこれまで望んでいたことのすべてを叶えることができたのだ。彼の体を心ゆくまで抱きしめ、迷うことなくその手を取り、まるで自分が彼の人生の真の女王であるかのように、一刻一刻を満喫することができた。「どこへ行くんだい?」ダリアスが淡々と尋ねた。ディバインが注ぐ愛撫をそのまま受け入れてはいたものの、その声は一本調子であり、目の前の女性からは感じ取れない見覚えのある温もりを、未だに模索しているかのようだった。人目につきにくく、誰にも邪魔されない場所を思い浮かべながら、ディバインは窓の外へ視線を遣った。「そうね……ビクトリアのブッチャート・ガーデンなんてどうかしら? それともバンフのルイーズ湖のほとりを静かにお散歩するのも素敵だわ。あそこは息を呑むほど綺麗なのよ、あなた。昔、私たちがカナダへバカンスに来るたびによく訪れた場所なの。混雑していなくて、美味しい空気と山々があるだけ。あなたの回復にもぴったりだし……私たちが夫婦として特別な時間を過ごすのにも最高だわ」計画を練りながら、ディバインはダリアスの指先と戯れた。彼の本当の記憶を刺激しかねないあらゆるものから、彼を遠ざけておきたかったのだ。遠く離れた平穏な場所であれば、彼が耳を傾ける声は自分だけのものになるのだから。「ルイーズ湖……」まるでその場所の名前を思い出そうと試みるかのように、ダリアスは言葉を反芻した。「僕たちにとって、何か意味のある場所なのかい?」ディバインの動きが一瞬固まったが
Huling Na-update : 2026-10-12 Magbasa pa