ゲストたちが次々と会場に足を踏み入れてきた。それぞれの業界で名を馳せる事業家たち、外交官、そしてめったに公の場に姿を見せない名士たちが一堂に会していた。まるでこの国の政財界を動かす最高峰の重鎮たちが、今夜ひとつの屋根の下に集結したかのようだった。ドニャ・エレネがボールルームへと入ってきた。車椅子に揺られ、アシスタントに押されながらも、彼女の纏う凛とした美しさは微塵も衰えていなかった。光を反射して輝くブルーのグウンを身に纏い、その首元には数千万円の価値を誇るダイヤモンドのネックレスが燦然と飾られていた。髪には白髪が混じり始めていたものの、その立ち振る舞いには優雅な品格が満ちあふれていた。会場内の視線が一斉に入口へと注がれると、各テーブルでの会話がピタリと止まった。誰もが目を見開いて驚いていた。長年表舞台から姿を消していたドン・アントンの妻が、ついに公の場へと姿を現したのだから。「奥様、あの方たちと同じテーブルがお嫌でしたら、別の席をご用意させますが――」アシスタントが言い終える前に、ドニャ・エレネは言葉を遮った。彼女がここに来たのは愛する息子ダリアスのためであり、他の誰のためでもなかったのだ。「あのテーブルに座るわ」ドン・アントンとマグダレンが身を寄せるテーブルをまっすぐ見つめ、彼女は毅然と言い放った。アシスタントは深く頷き、ドン・アントンのテーブルへと車椅子を進め続けた。「……来てくれたなんて、思ってもみなかったよ」夫であるドン・アントンは、目の前の妻を茫然と見つめながら思わず声を漏らした。ドニャ・エレネは不敵に微笑んだ。緊張のあまり生唾を呑み込むマグダレンへと視線を向け、それから再びドン・アントンへと視線を戻した。「息子が直々に招待状を届けてくれたのよ、アントン。来ない理由なんてどこにあるの? 息子の婚約パーティなんて人生で一度きりだもの。どこかの誰かさんは、招待されてもいないのに中に入り込みたくて、必死でこのパーティに押しかけてきたみたいけれどね」ドン・アントンは言い返す言葉を見つけられなかった。ドニャ・エレネが言っているのが誰のことか、当の本人が一番よく分かっていたからだ。ダリアスはアルダマの屋敷に父親宛ての招待状など送っていなかった。老人は今日の昼間、勝手に姿を現して中に入れろと聞き入れなかったのだ。警備員がダリアスに電話をかけ、父親が
Last Updated : 2026-10-10 Read more