――瑛司くんの会社で面接試験を受けた翌日、あたしはパート勤務先のファミレスの店長に退職の意思を伝えた。「――店長、あたし、この度知り合いが経営する会社で働くことになりまして。ここを辞めることにしました。これが退職願です」「……そうですか。宮瀬さんはとても気持ちのいい接客をしているし、よく気がつくし、勤務態度も真面目だし。もっと長く働いてほしかったんですけどね……。淋しくなります。二年間、お疲れさまでした」 その日の勤務を終えた後、制服姿のまま退職願を提出すると、女性店長は名残惜しそうにそれを受け取った。「すみません。あたしもできれば続けたかったのですが、もう決めてしまったので。二年間、お世話になりました。制服はそちらでクリーニングに出しておいて頂けますか? ロッカーのカギは帰りに返却しておきますね。――では失礼します。お疲れさまでした」「お疲れさまでした、宮瀬さん。またお客様として、奏ちゃんと一緒にお店にいらして下さいね」「はい……!」 本当は、こんな急に辞めることになってお店に迷惑がかかっているかもしれないのに。店長は「またお客としていらっしゃい」と笑って見送って下さった。初めての職場で、こんなに気持ちのいい退職の日を迎えられるなんて……、何だか感激してしまった。 退職の手続きもスムーズに終わり、あたしは瑛司くんに改めて連絡を取った。「――瑛司くん、ファミレスの退職手続き済んだよ。というわけで、明日からでも瑛司くんの会社の入社手続きを進めてもらえるかな?」『分かった。お疲れさま、莉子。じゃあ明日の朝十時、実印と通帳と筆記用具持って会社に来て。昨日の面接の時みたいに、来たら受付に声かけて。……奏ちゃん、保育園に送っていかないといけないと思うけど、十時で大丈夫?』「うん。送っていくのは九時だから、それから行っても間に合うと思うよ。少し早くそっちに着くかも」 あたしの家があるのは豊島区なのて、日本橋まで行くのに一時間もかからない。奏を保育園まで送って行って、それから駅に向かって電車に乗っても十分間に合う。『了解。それじゃ、俺はそれまでに雇用契約書とか入社に必要な書類を用意して待ってるよ。ちなみに、通帳と実印は給料の振込み先の口座を登録するためな』「はーい。じゃあ明日ね」 彼が「また明日な。連絡
Last Updated : 2026-09-24 Read more