All Chapters of ファミリア ~シングルマザーが幸せになる方法~: Chapter 31 - Chapter 33

33 Chapters

たまには二人きりで…… ③

「――で、莉子。俺に話ってなに?」 バーガーショップでダブルチーズバーガーにかぶりついた瑛司くんが、ポテトをつまんでいたあたしに訊ねた。 ちなみに二人ともオーダーしたのは同じダブルチーズバーガーセットで、飲み物だけ瑛司くんはアイスコーヒー(それもブラックだ!)であたしがコーラという点だけ違っている。支払いは瑛司くんがしてくれたけれど、あたしの分は後から返すつもりでいる。「……あのさ、瑛司くん。今度、たまには二人だけでどこかに行かない? あたしたちまだ、デートらしいデートってしてないでしょ?」 自分から誘うのは本当に久しぶりだったので(瑛司くんと付き合ってからは初めてなので、竜也と付き合っていた頃以来だろうか)言い出すまでにちょっと緊張したけれど、案外言葉はスルスルと出てくれた。「二人だけでっていうと、奏ちゃん抜きでってことか? 珍しいじゃん、奏ちゃん大好きな莉子がそんなこと言い出すなんて」「えー、そうかなぁ? あたしも奏のことは大事だけど、たまには母親の立場から離れて瑛司くんと普通のカップルになりたい時もあるんだよ。それに前、瑛司くんが言ったんだよ? 『今度は二人きりでどこか行きたいな』って。それもまだ叶ってないじゃない?」「あ……、そういや俺、そんなこと言ってたな。そうだよなー、たまには二人きりでデートか。いいな、行こう」「うん、行こ行こ! 今度の土曜とかどう? 奏のことはお父さんとお母さんにお願いしとくから」「いいよ、今度の土曜な。……あのさ、それって泊まりもOK……ってわけにはいかない……よな?」「え…………。いきなり泊りがけは……ちょっと」 瑛司くんが赤面しながら言うので、あたしもたじろいでしまった。もちろん出産経験がある以上、男性経験もあるのだけれど。初デートで、しかも両親にわが子を任せてのお泊りは母親としてNGだろう。「……だよなぁ、ごめん。じゃあ、泊りはまた別の機会にってことで。土曜日は日帰りでデートしようか。莉子はどこか行きたいところある?」「う~ん……、今のところは思いつかないなぁ。でも、瑛司くんに何か買ってもらいたい。ブランド物とかそんな高い物じゃなくていいよ。 そこは瑛司くんに任せるから」「え、そんなんでいいのか? 欲しい物あるなら何でも遠慮なく言ってくれていいのに」「うん、ホントにいいの。別にお金持ちの瑛司くん
last updateLast Updated : 2026-10-24
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初めてのデートと彼からのプレゼント ①

 ――瑛司くんとの初デートは、いつか奏も連れて三人で言った豊洲の大型ショッピングモールへ行くことに決まった。 ここには何でも揃っているので、ランチもできれば映画も観られる。アパレルショップも雑貨のお店もたくさんある。一日いても絶対に飽きないはずだ。「――おはよ、莉子。迎えに来た。じゃあ行こっか」 朝九時。いつもよりオシャレをして、メイクもしっかりして準備万端のあたしを瑛司くんが家まで車で迎えに来てくれた。玄関まで見送りに来たのは母と奏だけだ。父は今、ちょうど朝の散歩で近所のコンビニまで出ていて家にいない。「うん。じゃあお母さん、あたし行ってくるから。今日一日お父さんと一緒に奏のこと見ててあげてね。何かあったらあたしのスマホに連絡して」「分かったわ。気をつけていってらっしゃい。奏ちゃんのことは気にしなくていいから、瑛司くんとゆっくりしてきなさいね。何かあったらちゃんと連絡するから」「ありがと、お母さん」 奏は今日一日、両親に面倒を見てもらうことにした。瑛司くんとのデートが決まってから母に相談すると、「奏ちゃんのことはお母さんたちに任せなさい」とあっさり快諾してくれて、父も「親に遠慮することなんかないから、たまには瑛司くんと二人でゆっくりしてきたらいい」と言ってくれたのだ。 何だかんだ言って、奏は二人にとって可愛い唯一の孫。たまにはこうして独占したい日もあるのだろう。「ママー、いってらっしゃ~い! かなタン、いいコでまってるからね~」「うん。奏、行ってきます。帰りに奏のお土産買ってくるからね、楽しみにしてて」「あ~い!」「莉子、奏ちゃんにそんなに気を遣うことないのに」「いいの、瑛司くん。これはあたしの母親としてのケジメだから。あたし決めたんだ。仕事の日以外に瑛司くんと二人で出かける時は、ちゃんといい子で待ってる奏にお土産を買って帰るんだって」 あたしが出かけている間、祖父母が一緒とはいえ奏はきっと淋しい思いをしているはずだから。健気に母親であるあたしの帰りを待っている娘に、何かごほうびを買ってあげたいというのは当然の気持ちだと思う。「そっか……。莉子が母親としてそうしたいって言うなら、俺は何も言うことないな」「ありがと、瑛司くん。……それにしてもお父さん、タイミング悪いなぁ。あたしが出かける時に限って
last updateLast Updated : 2026-10-26
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初めてのデートと彼からのプレゼント ②

 あたしはわが子を二の次にして、自分の恋愛を優先させるようなふしだらな母親じゃない。何をおいても奏が優先で、自分のことや恋愛は二の次三の次だと考えている。今回は奏が「いいよ」と言ってくれたから実現したデートなのだ。「……そうだな。お前はそんないい加減な母親じゃなかった。じゃあ、奏のことは父さんと母さんに任せて今日は一日楽しんできなさい。瑛司くん、莉子のことをよろしく頼む」「はい……。それじゃ、俺たちはそろそろ行きますね」「ああ。行ってらっしゃい」 父がやっと快く送り出してくれたところで、あたしたちはやっと瑛司くんの車――国産のSUV車に乗り込み、出発した。「――莉子、コーヒー飲む? カフェラテでよかったっけ?」 助手席側のドリンクホルダーには、五〇〇ミリペットボトルのホットのカフェラテがセットされていた。しかもまだ未開封だ。運転席側には、微糖のボトル缶のコーヒーが。こちらはもう封が切ってある。「え、どうしたのこれ? まだあったかいけど」「莉子の家に行く前に、自販機で買っといた。昨夜、楽しみであんまり寝られなかったんじゃないかと思ってさ」「何よぉ。あたしは遠足が待ち遠しい小学生じゃありません! でもありがとう、瑛司くん。いただきま~す」 あたしは文句を言いつつも彼にお礼を言い、ペットボトルのキャップを開けて口をつけた。今朝は少し冷えるので、温かくて優しい甘みとほろ苦さにホッとする。「今日の莉子、なんか可愛いな。いつも見てる会社員の顔でもなく母親の顔でもなく、何て言うか……ひとりの〝女〟って感じがする」「え……、そう? なんか嬉しいな。ありがとう♡ 今日は初めての二人きりのデートだからね、オシャレ頑張ってみたんだ。瑛司くんに『可愛い』って言ってもらいたくて」 今日一日だけは、あたしのことを「奏の母親」ではなく「恋人」として見てほしい。そんな気持ちだったのだ。「うん。分かるよ。だから俺も今日一日だけは、莉子のこと奏ちゃんのママじゃなくて俺の彼女って思うことにする。いいよな?」「もちろん! じゃあ、今日は一日普通のカップルとして思いっきり楽しもうね。……で、瑛司くんの方では何かプランはあるの?」「一応、色々考えたけど。今日のメインは映画を観ることに決めた。ほら、莉子が観たがってた恋愛映画あったろ?」「あれでしょ? コミックが原作で、アイド
last updateLast Updated : 2026-10-30
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