その瞬間、3人の胸中には名状しがたい感情が渦巻いていた。これまで見下し、気にも留めていなかった美乃里という存在の輪郭が、ここへきて鮮明に浮かび上がってくる。彼女は自らの役割に徹し、努力を惜しまず、卑屈にも傲慢にもならず、理路整然と筋を通していた。その瞳はいつも澄み切っていて、わきまえるべき境界線を決して踏み越えなかった。そして3人は、今さらながら1つの事実に気づく。美乃里は病院を抜け出してから、一度も連絡をよこしてこない。男たちが眉をひそめたその時、2階の寝室からけたたましい悲鳴が響き渡った。顔を見合わせ、すぐさま階段を駆け上がって扉を開ける。そこには、ベッドの上で飛び跳ねながら金切り声を上げる侑良の姿があった。だが、部屋の隅を見れば、1センチにも満たない小さなゴキブリが1匹はっているだけだった。3人の脳裏に、期せずして同じ思いがよぎる。――美乃里なら、こんな取り乱し方はしない。3人は手分けして動いた。立貴が虫を始末し、邦紀と永翔が侑良をベッドから下ろしてなだめる。妊娠中の体なのだから気をつけるよう念を押し、即座に駆除業者を手配して、どうにかその場を収めた。だがその直後、男たちは使用人と料理人を呼び戻し、家事の一切を手放した。仕事中、侑良がドアを叩いて癇しゃくを起こしても、もはや甘やかすことなく扉を閉ざし続ける。食事の席で、3人がナイフで一口大に切り分けて差し出したステーキを、美乃里は冷たく床へと払い落とした。彼らももはや機嫌を取ろうとはせず、無言のまま席を立った。3人の態度の変化に侑良は焦りを覚えたものの、決して頭を下げようとはせず、冷戦を仕掛けてきた。だが、男たちは取り合うどころか、疲労のにじむ目で一瞥し、「好きにしろ」と言い捨てて仕事へ向かってしまう。遠ざかる3人の背中を見送りながら、侑良は屋敷の調度品を片っ端から叩き壊し、使用人たちに当たり散らして、疲れ果てるまで荒れ狂った。屋敷を出た3人が向かった先は、会社ではなかった。足を向けたのは、かつて美乃里が暮らしていた邸宅だ。屋敷の執事が出迎える。「日野社長、北島社長、渡辺社長、今夜はこちらでお泊まりになりますか」3人は屋敷を見渡した。ここへ足を踏み入れるのは、侑良が酒を飲まされたあの夜以来だった。床に散乱していた
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