一人で家まで歩いて帰ったころには、服の中まで雨が染み込み、全身びしょ濡れになっていた。玄関に入ったところで、スマホが震えた。家族のLINEグループに、母から私宛てのメッセージが届いている。『この数日、一人でご飯どうするの?』珍しく、私のことを気にかけてくれた。そう思っただけで、胸の奥がきゅっとして、目の奥まで熱くなった。けれど、返事を打つより先に次のメッセージが届いた。『冷蔵庫の中のものには手をつけないでね』『あれはお兄ちゃんとお姉ちゃんの分だから。二人に同じだけ行き渡るように、ちゃんと分けてあるの』『琴音が食べたら公平じゃなくなるでしょう』胸に浮かんだばかりの温かさが、すっと消えた。じゃあ、私の分は?そう打ちかけた指が止まった。結局、その文は消して、短い返事だけ送った。『わかった』こんなことは、これまで何度もあった。聞いたところで、誰も気に留めてくれない。この家には、最初から私の分なんてない。ずっと、それが当たり前だった。スマホをしまい、何か食べられるものがないか家の中を探した。見つかったのは、隅に置かれた箱の中の、賞味期限が切れて湿気た菓子パンだけだった。寒さと空腹の中、どうにか眠りについた。ところが真夜中、いきなり濡れた上着を頭に投げつけられ、はっと目を覚ました。驚いて目を開けると、廊下には明かりがつき、リビングから騒がしい声が聞こえてきた。父と母は、遠出しようとしたところで大雨になり、道路が通行止めになったと愚痴をこぼしていた。入口には、姉が腕を組んで立っていた。「何ぼーっとしてるの?これ見たら、洗ってってわかるでしょ」上着には泥水が跳ねていた。さっき頭に投げられたせいで、髪まで湿ってべたついていた。眠くて、まぶたもまともに開けていられないまま、力の入らない声で頼んだ。「お姉ちゃん、今日はもう寝かせて。明日の朝、起きたらすぐ洗うから」姉はすぐに声を荒らげた。「やりたくないならそう言えばいいじゃん。言い訳しないでよ!」そこへ兄もやってきて、泥だらけのスニーカーを床に放った。「彩葉のを洗うなら、俺のも洗えよ。さっさとやっとけ」母は洗濯物を抱えたまま、私をちらりと見た。そして眉をひそめる。「うちは三人きょうだいなんだか
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