Todos los capítulos de 十字架の傷〜愛と傷を重ねて〜: Capítulo 11 - Capítulo 20

30 Capítulos

11話

 ベルメリオの正体を知った翌日、ルベルはメイド長に呼び出された。「ルーさん。あなたは今日から、騎士団の宿舎で働いてもらいます」「騎士団の?」 騎士団と聞いて思い出すのは、ベルメリオのこと。きっと彼が手配してくれたのだろう。「部屋も宿舎になりますので、今すぐ荷物をまとめて宿舎に移動してください」「はい、分かりました」 寄宿舎に住み込むと聞いた瞬間、心が軽くなった。寄宿舎と城は同じ敷地内にあるが、かなり距離がある。 アーロは腐っても王子。公務で忙しくて、わざわざ嫌がらせをするために、寄宿舎に来る暇などないだろう。これはアリアにも言えることで、彼女もまた、寄宿舎に来る暇はないはずだ。何より、男だらけでむさ苦しい場所など、彼女が足を踏み入れるわけがない。(よかった、距離を置けるのね……) ルベルは荷物をまとめに行くために、地下室に向かう。途中、アリアと鉢合うと、彼女はルベルを睨みつけた。「騎士様のところに行って、守ってもらえると思ったら大間違いよ。逃げられただなんて思わないことね」 言葉を返す前に、アリアは行ってしまった。 荷物をまとめて宿舎に向かう途中、今度はベルメリオと会う。「準備は出来ていたか。こっちだ、案内しよう」「はい、ありがとうございます」 ベルメリオはルベルが持っていた荷物を持つと、背を向けて歩き出した。ほどなくして、アーロが向かいから歩いてくるのが見える。ルベルは彼を見るなり息苦しくなったが、ベルメリオがさりげなく手を握ってくれて、少しだけ落ち着けた。 アーロとすれ違うと、舌打ちをされる。「逃さないからな」 すれ違いざまにそう言われた。「何か言われたか?」「え? えっと……」 こんなに厚遇してもらっているのに、これ以上負担になることは避けたくて、言い淀んでしまう。ベルメリオは目線が合うようにかがみ、仮面越しに目を合わせる。「俺に隠し事するな」「その、逃さないと言われました」「ふん、いい気味だ。お
last updateÚltima actualización : 2026-09-18
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12話

「彼女はメイドのルーだ。今日から我が騎士団の世話をしてくれることになった。何度も言っているが、他の使用人に性的奉仕の強要、横暴な態度は固く禁ずる。特にルーは、我々が鍛錬に集中できるように世話をしてくれる貴重な人材だ。彼女に無礼を働くな」 ベルメリオの言葉に、ルベルは胸を震わせた。あの地下室から出してくれただけでも充分嬉しいのに、ここまで気遣ってもらえるとは、思いもしなかった。 騎士達は、「誰がソイツに手を出すか」と言わんばかりの顔でルーを見ていた。笑顔でペンを折り続けた甲斐があったというものだ。「ルー、挨拶を」「はい」 ルベルは1歩前に出ると、ポケットに入っていた万年筆を取り出す。昨晩廊下で拾ったアーロのものだ。今日届けるつもりだったが、宿舎行きが決まったので、別のことに役に立ってもらおうと思った。「ご紹介に預かりました、メイドのルーです。精一杯皆様のサポートをさせていただきますが……」 言葉を切り、万年筆が皆に見えるように掲げると、ルベルのペン折りを何度も見てきた騎士達はどよめく。 騎士団長だけが、疑問符を浮かべていた。 ルベルは万年筆を片手でへし折って見せる。バキッという音が食堂に響き、インクがルベルの手を汚した。 騎士達はテーブルの下で局部を押さえる。「力加減に関してはとても不器用なので、迷惑をかけたらごめんなさい」 そう言ってにっこり笑って見せる。騎士達は引き攣った笑みを返し、頭を下げた。 すかさずボロボロのハンカチをポケットから出し、手のインクを軽く拭いてから、折れた万年筆を包んだ。「話は以上だ。食事に戻ってくれ」 騎士達に言葉をかけるベルメリオの声は、微かに震えていた。「お前の先輩を紹介してやろう。こっちだ」 ベルメリオは厨房にルベルを案内する。厨房は食堂と繋がっており、カウンター越しに見える。隅には通路が出来ており、そこから厨房と食堂が行き来しやすいようになっていた。 厨房に入ると、恰幅の良い中年女性が、ルベルを見てニコニコしていた。「彼女はセキナ。長年騎士団の世話をしてくれている。セキナ、
last updateÚltima actualización : 2026-09-19
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13話

「はい、これでよし。アンタ、城では何をしてたんだい?」「主に掃除をしていました」「料理の経験は?」「恥ずかしながら、まったく……」 王女という立場上、厨房に入ったことはなかった。ヘルシャフトのメイドになってからも掃除がメインで、厨房に入るのは掃除の時のみだった。「調理器具の名前すら、知りません」「そうかい! あっはっは、それは教えがいがあるねぇ」 世間知らずだと怒られると思ったが、セキナはお腹を揺らしながら豪快に笑うだけで、ルベルを責める様子はない。「ま、料理はここの生活に慣れてからでいいさ。それまでは、配膳をしておくれ」「は、はい!」「それと、城じゃ誰がどこって決まってただろうけど、ここじゃそれも無し。って、一気にあれこれ言っても、覚えきれないか。まずはアンタの部屋を案内するよ。荷物を置いたら皿洗いだ」「はい」「こっちだ、ついてきな」 セキナは食堂の奥のドアを開ける。長い廊下が続いており、手前には階段があった。「2階から上は、騎士達の寝床さ。毎日掃き掃除をして、一部の部屋の布団を干すんだ。今日が2階だったら、次は3階って具合でね。階段の向かいは、物置になってる。ここに掃除道具が全部入ってる」 セキナはドアを開けながら説明してくれる。小さな物置部屋は思ったより小綺麗で、城の掃除用具置き場より清潔だ。「こっちは副団長の部屋で、こっちが執務室。それで、こっちは私の部屋」 物置部屋の隣が副団長の部屋、その隣が執務室。セキナの部屋は階段の隣だった。「こっちが団長の部屋で、その向かいがアンタの部屋だよ」 団長の、つまりベルメリオの部屋は執務室の隣。ルベルの部屋はベルメリオの向かいで、セキナの隣だった。「さぁ、入んな」「はい」 割り当てられた部屋に入る。日当たりがとても良く、地下室に比べれば広々としていた。 ベッド、クローゼット、テーブルセット、ドレッサーまである。スチェクローの自室に比べれは質素ではあるが、あの地下室の部屋に比べれば天国だった。「こんなにいい部
last updateÚltima actualización : 2026-09-19
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14話

「こんな贅沢品が……」 王女時代には当たり前のものだった品々が、贅沢品に見える。それだけ生活水準が落ちていたと実感し、ため息が出る。アーロ達はそれだけルベルを追い込んでいたということだ。 引き出しを元に戻して厨房に行くと、騎士達は食事を終えたらしく、ひとりもいなかった。「随分早かったね。食器を片付けるのを手伝っておくれ」「はい、分かりました」「まずは油がついたお皿をさげるよ。メインが乗ってたこの皿だ」 セキナは1番大きなお皿を回収していく。ルベルも同じお皿を回収する。「こっちだ、おいで」「はい」 お皿を持って厨房に入ると、ふたつあるシンクのうち、ひとつが石鹸水で満たされていた。セキナは石鹸水の中に回収した食器を入れていく。「油ものはまず、石鹸水につけて油を浮かせる。その間、他の食器を洗っていくよ」「はい、分かりました」「あんたは引き続き、油がついた皿をこっちのシンクに入れていっておくれ」「はい」 ルベルは言われた通り、お皿を回収しては、シンクに入れていく。一段落したところで、あることに気づく。「あの、セキナさん」「なんだい?」 セキナはお皿を洗いながら返事をする。「お皿の数、少ないような気がします。騎士団の方って、数百人規模だったように思いますが……」 ルベルは王女時代にヘルシャフトの行進を見たことがある。その時は数百人もの兵士達が、街を練り歩いていて圧巻されたのを、今も覚えている。 だが、今回収したお皿は60枚前後と、あの行進のことを考えるととても少ない。「あっはっは、騎士と兵士は別だからね」「別、ですか?」「私もそこまで詳しいことは知らないけどね、騎士ってのは、家にいづらくなった貴族の集まりなんだよ。 王族や貴族は、お世継ぎが大事だろ? 長男が事故や病気で死んでも困らないように、何人か子供をこさえるんだってさ。大抵は次男坊までは大事に育てられるけど、それより下の子は厄介者扱いさ。ひどい話だろ? 中に
last updateÚltima actualización : 2026-09-20
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15話

「では、ここは皆様の心の拠り所になっているのですね」 ルベルの言葉にセキナは一瞬きょとんとして、腹を揺らしながら笑った。「あっはっは、そんないい話でもないよ。食い扶持減らしに、ここに子供を押し付けてるようなモンだからねぇ。けどまぁ、同情する必要もないだろ。皆ここに来る時は死人みたいな顔をしてるけど、1ヶ月もすりゃ、生き生きしてるんだからね」「やっぱり、素敵な場所だと思います」「アンタがそう思うのなら、そうなんだろうね」 セキナは嬉しそうに目を細める。「では、他の兵士さんはどちらに?」「あ? あぁ。あいつらは街の傭兵や警備兵さ。一部は城の敷地内に住んでるけど、上澄みだけだし、別の宿舎に住んでる。大半のやつらは、街にいるよ」「そうだったんですね」「さ、おしゃべりはここまで。とっとと洗って、掃除するよ」「はい!」「ふふ、いい返事だ。頼りにしてるよ」 ふたりで約60人分の食器を洗ったあとは、ふたりで5階に行き、部屋の掃き掃除と布団干しをした。 3階から5階は役職を持たない騎士達の部屋で、一部屋にふたりから4人が生活をしている。 5階の布団干しが終わると、ルベルは4階、セキナは3階の掃除をし、2階はセキナに色々教えてもらいながら掃除をしていく。「2階は各部隊の隊長様の部屋さ。といっても、今は騎士団の規模が小さいから、隊長も3人しかいないんだけどね」「多い時は何人いたんですか?」「100人はいたかねぇ。元は貴族の子だから、長男が死んで、家に戻されるヤツもいるのさ」「複雑ですね……」「ははっ、そうだねぇ。ま、平民の私らには関係のないことさ」 2階には6部屋ある。セキナはどこが空き部屋かをルベルに教えながら掃除していく。隊長の部屋は、他の騎士たちの部屋よりも丁寧に掃除をする。「最後は1階。ついでに私らの部屋も掃除するよ。ま、あんたの部屋は綺麗だから大丈夫だろうけど」「まずは団長の部屋さ。あの人、潔癖症なところがあるから、ここは特に丁寧にね。本棚に触ると怒るから、そっちは放置でいい」
last updateÚltima actualización : 2026-09-20
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16話

「さ、お飲み」「ありがとうございます」 セキナは水を差し出す。ルベルは水を受け取ると、半分ほど飲み干した。本当はひと口だけのつもりだったが、気づかないうちに喉が渇いていたらしく、気づけは半分しか残らなかった。「お茶なんて優雅なことは出来ないけど、1杯の水でもいい休憩になるさ」「あの、セキナさんはずっとひとりでやってきたんですか?」「いいや、2ヶ月前まではルーくらいの子がいたんだけど、母親の看病をするからって、辞めちまったのさ。それから2ヶ月は、城のメイドがお手伝いに来てくれたけど、皆音を上げて1日しか持たなかったよ」「お城のお掃除は、丁寧さが重視で、スピードはそこまで求められませんからね。きっと、合わなかったんだと思います」「あぁ、違いない。さてと、仕事に戻るよ! 次は食事の準備だ」 セキナは水を一気に飲み干すと、気合を入れるために頬を叩いた。 夜、疲れ切ったルベルはベッドに倒れ込む。今日は怒涛の1日だった。 あの後お昼を作り、その後は早朝にセキナが干していた洗濯物を取り込み、それらをたたむと各部屋のかごに投げ込む。一息つく間もなく夕食を作り、食器を洗う……。 といっても、ルベルは料理がまったくできないため、食器を出したり、盛り付けてカウンターに料理を置くくらいだったが。 休憩は仕事の合間に数分あるかどうかだ。それでも、充実感があった。「なんか、まともな生活を久しぶりにしてる気がするわ……」 城では休憩こそあれど、残飯のようなものしか食べれず、風呂もほとんど水に近い上に汚れたものだった。 だがここでは充分な食事もできるし、風呂もセキナと一緒に1番風呂に入れる。 騎士が先なのではないかと聞いたらセキナは、「その騎士様達を支えてる私らが1番えらいんだから、1番風呂に入るべきなんだよ」と笑っていた。 仕事内容は城よりもずっとハードだが、城で働くよりずっといい。アーロとアリアの顔を見ずに済むだけで、ここまで晴れやかな気持ちになるのかと、しみじみ思う。「そろそろ寝なくちゃ&hel
last updateÚltima actualización : 2026-09-20
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17話

「座れ」「はい」 テーブルセットに向かい合って座ると、彼は仮面を外した。あれだけ激しい訓練をしていたというのに、その端正な顔に疲れは少しも滲んでいない。「ここなら聞こえないと思うが、宿舎にいる時はレイと呼んでくれ」 ベルメリオは声を潜めながら言う。彼の心配はもっともだ。自分達は世間では死んだことになっているのだから。もし万が一ふたりが生きてると知られたら、亡きルベル王女やベルメリオ王子を騙る不届き者として処刑されてしまう。「分かりました、レイ様」「それでいい。今日1日、どうだった?」「お仕事は大変でしたけど、ここは充分な食事もとれて、あたたかいお風呂に入れて、天国のような場所です。何より、アーロ達に嫌がらせをされずに済みます。レイ様、私を異動させてくれてありがとうございます」 ルベルは深々と頭を下げる。ベルメリオには、いくら感謝してもしきれない。あのまま城にいたら、きっとルベルは衰弱死していた。「お前が宿舎にいた方が、都合がいいんでな。明日だが、1日休むといい」「え? でも、ここのお仕事大変そうですし……」 ルベルは今日の仕事を振り返る。セキナはベテランではあるが、ひとりであれだけの仕事をこなすのは大変なはずだ。「元々そういうことになってる。明日は別のメイドが入るから気にするな。それと、これ」 ベルメリオは紙袋を差し出す。中を見ると綺麗なワンピースが入っていた。「サイズが合うといいんだが……」「こんな綺麗なもの、受け取れませんよ。私には、もったいないです」「お前のために用意したんだ。明日は買い物をしてこい」「買い物、ですか?」 きょとんとベルメリオを見る。「日用品、ひとつもないのだろう? 何か欲しいものや必要なものがあれば、買ってこい。身なりを整えるのは大事だからな」「そういうことなら……」 ルベルは紙袋を受け取り、大事に抱きしめる。「金はその中にある。少ないが、これまでの賃金と思って受け取ってほしい」
last updateÚltima actualización : 2026-09-20
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18話

 翌朝、紙袋を開けてワンピースを取り出すと、底に財布が入っていた。開けてみると大金が入っている。「こ、こんなに!?」 昨晩ベルメリオは、支払われてこなかった3年分だと思えと言っていた。彼が言っていた通り、3年分と考えるには少ない額ではあるが、それでも目の前にあるのは大金だ。「断ろうかしら……。でも……」 使用人達の世間話などを聞いて、庶民に近い金銭感覚が身についてきたが、自分自身で買い物をしたことがないルベルは、お金の使い方を知らない。 彼の厚意を考えると断るのは失礼だと思い直し、ワンピースに着替えて髪を整えてから部屋を出る。メイドキャップで髪を隠そうと思ったが、あまりにもワンピースと合わないため、おろして行くことにした。 同じタイミングで部屋を出たセキナと鉢合った。セキナはルベルを見るなり目を輝かせ、隠し続けていた赤髪を見る。「おや、可愛いじゃないか! それに、立派な赤髪だねぇ。メイドキャップで隠すのがもったいないよ!せっかく髪留めあるんだから、使えばいいのに」「セキナさん……。おはようございます。でも、この国では赤髪は嫌われてますから……」「あっはっは、実はここでは、そんなことはないのさ」「え?」 ルベルは耳を疑った。ヘルシャフトの城で短期間王女として過ごしていた時期があったが、それでも使用人達はどこか冷たかった。異国の王女にも偏見の目を向ける城で、赤髪を気にしない人などいるのだろうか?「昨日、騎士は王族や貴族の3男坊から下が多いって話したの、覚えてるかい?」「はい。長男は跡取りとして、次男は念の為に、予備のような存在で家に置かれると……」 自然と眉間にシワが寄る。思い返してもひどい話だ。自分達で産んでおきながら、長男が健やかに育てば邪魔扱いなど、あってはならない。「実はね、長男や次男だった子達もここにいるんだ」「え? なんでまた……」 大抵の国や家は、無条件で長男を
last updateÚltima actualización : 2026-09-21
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19話

 セキナは一旦部屋に戻り、薄桃色の可愛いバッグを持ってきた。「これ、前にあんたの部屋にいた子が忘れてったバッグ。この前遊びに来た時に渡したら、使う機会ないからってくれたんだよ。けど、私が使うには可愛すぎるし、ほとんど新品だから、捨てるのももったいないだろ? あんたが使っておくれ。そのまま財布を持ち歩いてたら、盗まれちまうからね」「ありがとうございます」 ルベルは素直にバッグを受け取って、財布をしまう。大金が入った財布をそのまま持ち歩くのは、不安だった。「出かける前に、少し食べていきな。市場は活気があるから、気圧されちまうしね」 セキナと一緒に厨房に行くと、彼女はサンドイッチを作ってくれた。「さ、お食べ」「はい、ありがとうございます」 野菜と分厚いベーコンがはさまったサンドイッチはバランスが取れているが、肉まみれのあのサンドイッチが少し恋しくなった。 食事を終わらせて外に行くと、ベルメリオが待っていた。「すいません、おまたせしてしまって」「大して待ってないから気にするな。そのバッグは?」 ベルメリオはベリルが肩にかけているバッグを、訝しげな目で見る。「前にいたメイドさんの忘れ物だそうです。セキナさんからもらいました。御本人もセキナさんも、もう使わないそうで」「そうか。よく似合っている。行こうか。もう市場が開いてるはずだ」「はい」 城を出て市場に行く。セキナが言ってた通りとてもにぎやかで、見てるだけでもわくわくする。「欲しいものはあるか?」「えっと……、あまり考えてなくて……」「それなら、一通り見て回るか」「はい」 ふたりで市場を見て回る。ルベルは産まれてこの方、店で買い物をしたことがなかった。商人が城に商品を運び、そこから選ぶだけだった。だからこうして店に行くのは新鮮だ。(ベルにあのこと、伝えなくちゃ……) ルベルは立ち止まり、ベルメリオの袖を軽く引く。ベルメリオは不思議そうな顔をして
last updateÚltima actualización : 2026-09-22
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20話

 市場を抜けると服屋が並ぶ通りに出た。市場に比べると人は少ないが、こちらはこちらで活気がある。人々は嬉しそうに紙袋を抱えながら歩いている。 看板なんかも市場よりずっと色鮮やかで、見ているだけでも楽しい。(新しい下着、買いたいな……) 下着も時々配給されることはあるが、サイズが合わない上に、だいぶよれてしまっている。メイド服はなんとか我慢できるが、流石に下着はきれいなものを見に付けておきたい。 だが、男性と一緒にいては買いに行きづらい。「あの、レイ様……」「どうした?」「私、あのお店に入りたいので、待っていただけますか?」 勇気を出して下着専門店を指差す。「あぁ、分かった。ゆっくり選んでくるといい」「ありがとうございます。できるだけすぐ戻ります」 ルベルが下着専門店に入ると、品の良い女性店員がにっこり微笑む。「いらっしゃいませ。本日はどのようなものをお探しですか?」「あ、あの……。久しぶりに購入するので、サイズを測っていただけますか?」「かしこまりました。こちらへどうぞ」 店員と小部屋に入ると、店員はルベルのバストサイズを測り、メモを手渡してくれる。「このサイズの下着がお客様にぴったりかと」「ありがとうございます」 メモを受け取って数着の下着を購入し、店を出た。ベルメリオはルベルを見ると、困ったように笑う。「もっとゆっくりしてくればよかったのに」「長時間待たせるのは、気が引けたので……」「お前はもっとワガママになるべきだ。にしても……」 ルベルを見てベルメリオは小さく笑う。ルベルは無礼があったのかと、そわそわしてしまう。「普通に喋れと言ったのに、敬語が崩れないな」「あ……。すいません……」「簡単に謝るな、王女様」「そう、ですね&he
last updateÚltima actualización : 2026-09-23
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