All Chapters of 金目当てとされた妻、7年遅れで悔やむ夫: Chapter 21 - Chapter 22

22 Chapters

第21話

明紗は、活動休止することになった。スポンサー契約は次々と打ち切られ、すでに決まっていた主演映画も降板させられた。傷害の疑いで事情聴取を受け、さらには巨額の違約金を負うことになった。かつて明紗をちやほやしていた人たちは、潮が引くように姿を消した。明紗は手持ちのジュエリーをいくつか売り払ったが、財産の大半は差し押さえられていることを知る。追い詰められた明紗は、再び朔也のもとへ押しかける。朔也の車が灰原グループ本社の地下駐車場に入ったところで、明紗はサングラスを外し、駆け寄る。「朔也、私を見捨てないで!」ボディガードが明紗を引き離そうとする。そのとき、朔也は車の窓を下ろす。わずか十数日の間に、朔也はひどくやつれていた。目の下にはクマができ、かつての自信に満ちた面影はもうどこにもない。明紗は車にしがみつく。「動画をネットに流したのは私じゃないの!あのときは、ただ頭に血が上って……あいつが先にスタジオへ乗り込んできたのよ。しかも、朔也の妻っていう立場を利用して、私を見下したわ!」朔也は明紗を冷ややかに見つめる。「郁実がお前に何をした?」明紗は一瞬言葉に詰まる。あの日、郁実は「灰原家の奥様」という座を争おうとなんてしなかった。朔也と明紗の関係を問い詰めることもしなかった。それどころか、明紗を一言も責めていなかった。郁実はただ1000万円がほしかっただけだ。「あいつが朔也の妻であること自体が、私への嫌がらせなのよ!」明紗は泣きながら、朔也の手をつかむ。「私たち、長く付き合ってきたじゃない。どんなことがあっても、私を守るって言ったじゃない!あの海辺の別荘もジュエリーも、あんたが勝手にくれたものなのに、どうして今さら返さなきゃいけないの!」朔也の脳裏に、冷たい地面にひざまずく郁実の姿がよぎる。血が出るほど殴られても、郁実は一度も自分が「灰原家の奥様」だと口にしなかった。それなのに明紗は、自分のものではない金を握りしめ、まるで自分が被害者であるかのように、郁実を責め立てている。「……200万」朔也が突然、口を開く。「え?」「お前が郁実に渡した金だ。郁実と海人には、それだけの価値しかないと言ったな」明紗の顔色が変わる。「あれは、ただ怒りに任せて言
Read more

第22話

1年後、灰原グループは匿名で、子どもの心臓病を支援する救済基金を創設した。緊急治療が必要な子どもなら、治療費の支払いを後回しにして、先に手術を受けられる仕組みだ。基金の担当者が朔也に尋ねる。「基金の名前は、どういたしましょうか」朔也はデスクの上に置かれた申請書に目を落とす。長い沈黙のあと、ペンを走らせる。【海守】まだ救える命を守り抜く。そして、彼を待ち続け、最後にはもう待つことをやめた海人を、決して忘れないためだ。朔也は、灰原グループの社長を辞任した。個人資産の大半を売却した。あの海辺の別荘も差し押さえられ、競売にかけられた。別荘は最終的に4億円を超える金額で売れた。それだけあれば、何人もの子どもの手術費を賄える。だが、最も救いたかった、たった一人の命を救うことはできなかった。明紗は傷害事件の責任を問われ、芸能界から完全に追放された。その後も何度か朔也に連絡を取ろうとしたが、朔也は一度も応じなかった。かつて朔也と関係を持っていた女性たちも、次々と高価な贈り物を返してきた。どれだけ金を取り戻しても、灰原家はずっと空っぽのままだ。使用人たちが去ったあと、そこに残っていたのは、1枚の使い古した雑巾だけだ。それは結婚初夜、朔也が郁実に投げつけたものだ。彼は郁実を働かせ続け、毎月わずか10万円の生活費しか渡さなかった。今、その10万円はダイニングテーブルの上に置かれているが、もう取りに来る者はいない。それでも毎月、朔也は秘書に生活費を用意させている。12か月が過ぎても、1円も使われることはなかった。秘書は、なぜこんなことを続けるのかと尋ねた。朔也はただ、こう答えた。「郁実は、毎月待っていた。だから今度は、俺が待つ番だ」だが、朔也はよく分かっている。郁実は、もう二度と帰ってこない。海人も薬を買っていいかと聞きに来ることはない。郁実と海人の命日に、朔也は一人で墓地へ向かう。白いキキョウの花束と、新しい額縁を持っている。額縁の中には、海から引き揚げられた、あの家族の絵が入っている。紙はしわくちゃになり、もうもとには戻らない。太陽の部分はにじんで、大きな染みになっている。海は、淡い水色がわずかに残っているだけだ。3人をつないでいた手も、無残に途切
Read more
PREV
123
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status