明紗は、活動休止することになった。スポンサー契約は次々と打ち切られ、すでに決まっていた主演映画も降板させられた。傷害の疑いで事情聴取を受け、さらには巨額の違約金を負うことになった。かつて明紗をちやほやしていた人たちは、潮が引くように姿を消した。明紗は手持ちのジュエリーをいくつか売り払ったが、財産の大半は差し押さえられていることを知る。追い詰められた明紗は、再び朔也のもとへ押しかける。朔也の車が灰原グループ本社の地下駐車場に入ったところで、明紗はサングラスを外し、駆け寄る。「朔也、私を見捨てないで!」ボディガードが明紗を引き離そうとする。そのとき、朔也は車の窓を下ろす。わずか十数日の間に、朔也はひどくやつれていた。目の下にはクマができ、かつての自信に満ちた面影はもうどこにもない。明紗は車にしがみつく。「動画をネットに流したのは私じゃないの!あのときは、ただ頭に血が上って……あいつが先にスタジオへ乗り込んできたのよ。しかも、朔也の妻っていう立場を利用して、私を見下したわ!」朔也は明紗を冷ややかに見つめる。「郁実がお前に何をした?」明紗は一瞬言葉に詰まる。あの日、郁実は「灰原家の奥様」という座を争おうとなんてしなかった。朔也と明紗の関係を問い詰めることもしなかった。それどころか、明紗を一言も責めていなかった。郁実はただ1000万円がほしかっただけだ。「あいつが朔也の妻であること自体が、私への嫌がらせなのよ!」明紗は泣きながら、朔也の手をつかむ。「私たち、長く付き合ってきたじゃない。どんなことがあっても、私を守るって言ったじゃない!あの海辺の別荘もジュエリーも、あんたが勝手にくれたものなのに、どうして今さら返さなきゃいけないの!」朔也の脳裏に、冷たい地面にひざまずく郁実の姿がよぎる。血が出るほど殴られても、郁実は一度も自分が「灰原家の奥様」だと口にしなかった。それなのに明紗は、自分のものではない金を握りしめ、まるで自分が被害者であるかのように、郁実を責め立てている。「……200万」朔也が突然、口を開く。「え?」「お前が郁実に渡した金だ。郁実と海人には、それだけの価値しかないと言ったな」明紗の顔色が変わる。「あれは、ただ怒りに任せて言
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